最近・・・私の周りでは、震災復興に何が必要か?という議論が毎日のようになされている。
そのなかで昨日話題に上ったのが、阪神大震災のとき英断をくだされた日銀支店長の話である。
危機管理専門の佐々淳行氏が渡部昇一氏との対談で語られた月刊致知の6月号から抜粋する。
佐々・・・ 阪神・淡路大震災のとき、日銀の神戸支店長に遠藤勝裕という傑物がいたんです。ジェット機が落ちたかと思うくらいの轟音と激震に遭遇した直後、自分がこの災害に際して何をすべきかを考え、「そうだ・・・俺の役割は町に紙幣を出すことだ」と気づくんですね。
日銀の支店は設備の損傷はあったが、幸いにも金庫は無事だった。遠藤さんはそれを開けちゃうんですよ。緊急時に普通は閉める金庫を、逆に開けてしまう。
そしてそこにあった札束を全部取り出し、紙幣の流通を止めなかったんです。本人は「兵庫県一日分の金額が入っていた」と言ってます。だから何十億でしょう。
渡部・・・随分と大胆な行動ですね。
佐々・・・そして次に被災地の民間銀行が壊れてないかを点検するんです。そしたら日銀のほかに一つだけ壊れていない銀行があった。すると三日後には、そこと日銀神戸支店内に、被災して休業中だった各銀行の支店の臨時窓口を開設するんです。
さらに兵庫県警本部に連絡を入れて警備を要請した。普通なら各支店に配置しなくてはいけない100~200人の警察官が2ヶ所で済むわけだから、本部長も随分助かったと話してました。
もっと凄いのは、震災当日のうちに金融特例処置という五箇条の布告を独自の判断で出したんです。例えば通帳や印鑑がなくても身分証や免許証を提示したらお金が借りられる、半焼けの紙幣は普通の紙幣と交換する、といったもので、もちろんそんなことを日銀本店や大蔵省がすぐに承認するわけでありません。
ところが、大蔵省の神戸財務事務所長というのがまた傑物でね。これを決裁するというんです。そしてこのルールでどんどんお金を出す。
渡部・・・ほう。
佐々・・・こんな話もあります。遠藤さんが震災後、市内を視察すると、コインを持たない被災者が自動販売機を蹴っている様子を目にするんです。「そうか、物があってお金がないと暴動が起こるな」と。
そこで銀行協会に申し入れて、100円玉9枚と10円玉10枚を入れた1000円の袋を4000袋つくり、避難所に行って「銀行協からの義援金でございます」と渡して歩くんです。
渡部・・・いや~凄い話だ。はじめて聞きました。その遠藤という方はその後どうなりましたか。
佐々・・・本当はクビだったんです。なんせ日銀のあらゆる掟を破ったわけだから。
ぼくは遠藤さんとは一面識もなかったんですが、解任だと聞いたときはカッときて日銀の役員さんに談判しました。「遠藤さんを辞めさせると聞いたけど、本当か」 「いや、いま内部でそれが問題になっているところです」聞いてみると、災害に遭った地域を救済するために過去に何度かこのような超法規行為をやっていた 札付きの支店長だったらしい。
日銀内部は「とんでもない日銀マンだ」 「これこそ日銀の鑑」という二つの意見に分かれていて、ぼくはその日銀役員に「彼のような功労者をクビにするなんてとんでもない」と強く言いました。それが聞き入れられたのか、遠藤さんはクビにならず調査役になりましたよ。
日本には様々な規則や法律が存在し、行く手を阻むこともある。
しかしお国の一大事のとき、規則や法律は関係ない。
困窮している民衆を落ち着かすことが第一。
そのためには、一に行動二に行動である。
この対談では・・・もし菅さんに、この様な側近がいれば・・・・と語られている。
実は菅さん・・・そのような人の意見を聞き捨てたのだ。
みなさん報道でご承知だろうが、テレビにも出演していた現職の経済産業省大臣官房付である古賀茂明氏が退職勧奨された。