徳川家茂が、初めて上洛して二条城に入ったのが文久三年三月四日
(西暦1863年4月21日)、初参内が三月七日
のことであります。参内前の三月五日の午前10時頃、何故か江戸では「異国人戦争触れ有り」(儀三郎日記)、町中大騒ぎとなりました。
材木や紺縞が暴落し、食料の売り手が少なくなりました。三月十六日頃になりますと、女子供を中心に江戸から避難する騒動となりました、武蔵村山の指田日記
には「江戸追々混乱、御大名の奥向きを知行所にり、御旗本の老少女子を夫々に知行の寺院などへ遣わす手配あり、町方も田舎の縁を求め、荷物を運び老人を送り遣わす」同二十日「在々所々へ江戸より雑具を運び老弱を送る事、日々引き続き絶えず」
と伝えています。一方京都では、三月十日「松原通下ニ首なき胴有、昨日迄三条橋下ニあごへかけ切し首有」
三月十八日「三条磧ニ坊主二人殺害シアル」と言った、天誅が大流行。田舎は「村々見張りを置く、人数に応じ竹槍を拵え置き、若し狼藉者手にあまる事ある時は、突き止め切り殺し候とも苦しからざる由を申し渡さる」と言った状況で、社会不安も頂点を極めていました。
折も折「赤い太陽と赤い月」が全国で観測されました。攘夷祈願の賀茂行幸が行われる前日の三月十一日青森県鰺ヶ沢町で「日月色赤く」と太陽と月が赤かったことが記されています、その後全国的に雨天
がちの日が多く、観測の記録が少ないのですが、三月十五日群馬県の玉村町で「今日様、
御輝ハ赤ク地ニうつる」とあり、十六日も玉村町で「御日あかく輝り地ニうつる」とあります。十七日には京都で「月赤色常ならず」沼田市でも「夜御月様赤キ事タトイヨウナシ」玉村町では「御日あかく御輝り地にうつる、月之光モ同断」、十八日に至ると、愛媛県松山市、高知県土佐市、香川県丸亀市、京都市、群馬県玉村町、同沼田市、などで赤日、赤月が観測されています。十九日も玉村町で記録があります。二十一日に至って丸亀の鳥居甲斐日記に「午下、十五日来の蒙気初めて散ず」とあります。
赤い太陽や赤い月は、空気中の黄砂や火山灰などの微細な物質が浮遊している時におこります。赤日の期間中は北風の日が多く、北の方から観測されて来ているところを見ますと、空中の微粒子は北から南下してきたように思われます。その正体は黄砂だったのでしょうか、はたまた火山灰だったのでしょうか。
いずれにしましても、赤い太陽や月は、ただでさえ未曾有の社会不安を一層掻立てるる効果はあったと思います。
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折も折「赤い太陽と赤い月」が全国で観測されました。攘夷祈願の賀茂行幸が行われる前日の三月十一日青森県鰺ヶ沢町で「日月色赤く」と太陽と月が赤かったことが記されています、その後全国的に雨天
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赤い太陽や赤い月は、空気中の黄砂や火山灰などの微細な物質が浮遊している時におこります。赤日の期間中は北風の日が多く、北の方から観測されて来ているところを見ますと、空中の微粒子は北から南下してきたように思われます。その正体は黄砂だったのでしょうか、はたまた火山灰だったのでしょうか。
いずれにしましても、赤い太陽や月は、ただでさえ未曾有の社会不安を一層掻立てるる効果はあったと思います。
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