日韓、半導体供給網は維持 フッ化水素も輸出許可
- 2019/8/30 23:00
- 日本経済新聞 電子版
日本政府が韓国向けの高純度フッ化水素の輸出を許可した。日本が韓国向けの輸出管理を厳格化した7月以降、日韓の半導体供給網への影響が懸念されていたが、許可されたのは2品目となる。輸出許可で韓国の工場稼働停止など最悪の事態は回避でき、産業界には安堵感が広がる。ただ、韓国側は日本が軍事転用の恐れが低いとされる製品を自由に輸出できる「グループA(旧ホワイト国)」の対象国から韓国を除外したことへの警戒は緩めていない。
「息苦しさから解放された気持ちだ」。日本政府がフッ化水素の輸出を許可したことに韓国の半導体産業関係者は胸をなで下ろす。韓国のフッ化水素の対日依存度は4割強で、中国などからも輸入している。だが半導体ウエハーの洗浄などで使われる高純度品はほぼ9割を日本からの輸入に頼っていたからだ。
韓国の業界関係者によると、半導体メモリー世界最大手の韓国・サムスン電子は日本の輸出管理が厳格化された7月時点でほぼ3カ月分のフッ化水素を確保していた。輸入が滞る事態が長引くことを視野に「生産量は維持しながら、製造工程の見直しなどでフッ化水素を節約しながら使ってしのいできた」(関係者)という。日本製以外が使えるかの試験も繰り返してきた。
7月以降、韓国企業は日本以外の代替調達ルートの確保などに追われた。日本の部材メーカーは供給責任の観点から韓国企業を支援し、「日韓企業の協力はかえって深まった」という声もある。
日本の貿易統計によると、7月のフッ化水素の韓国向け輸出量は6月から8割強減った。平均価格は1キロあたり840円程度と4.1倍。高額の高純度品の比率が多くなった影響とみられる。
30日の閣議後に記者会見した世耕弘成経済産業相はフッ化水素の輸出許可について「初のケースはあえて発表したが、個別許可についてはあくまで企業が関連する情報でもあるのでコメントは控える」と述べるにとどめた。輸出急減に関しては「一時的な減少は当然で想定の範囲内だ」と指摘。「今回の運用見直しは禁輸ではなく、民間取引と確認されれば許可を出す。許可を取得した企業が輸出しだせば輸出量は回復する」と強調した。
韓国向けフッ化水素の輸出許可について報道陣の質問に答える世耕経産相(30日、首相官邸)
厳格化の対象3品目ではレジストが先に許可された。レジストはJSRのほか信越化学工業の製品も許可されたとみられる。韓国産業通商資源省によると、残るフッ化ポリイミドは「申請はしているが、輸出許可が下りていない状態」という。
ただ、韓国は日本による「グループA」対象国から韓国を除外する措置への警戒は緩めていない。産業通商資源省は「今のところ具体的な影響は出ていない」と語るが、産業界からは「日本に依存している品目はたくさんある。3品目で対策を終えても、新たに品目が追加されれば対応しなければならない」(業界関係者)との声が聞かれる。
自社品の輸出許可が出ていない日本のメーカーの中にも「手続きが煩雑なうえ経産省からの細かな確認も多い。いつ認められるのかめどがたたない」という指摘はある。
日本の輸出管理の厳格化は韓国企業に日本依存のリスクを強く意識づけた。韓国の電機メーカー幹部は「中国メーカーからのオファーが増えている。日韓関係の悪化が長期化すれば、日本からしか買えないものを除けば、中国とのサプライチェーンが強くなるかもしれない」と語る。
(ソウル=鈴木壮太郎、杉原淳一)