近年、食品添加物や環境性化学物質による発ガンが、研究者により報告されています。人々の間では、膀胱ガンの発生は、いろんな化学物質の摂取・吸引により内因性に形成された発ガン物質が尿中に存在する結果である、と考えられるようになりました。
4アミノビフェニール、ベンチジン、2ナフチルアミンなどの製造に従事した人達での膀胱ガンの多発は、吸引した芳香族アミン類から内因性に形成されたオルトハイパロキシイ誘導体やハイドロキシルアミン誘導体が尿中に遊離した時、発ガン物質として働きます。このような、体内で他の物質から形成された誘導体は、実験的にも膀胱ガンを生じるので、このような理由から、栄養成分アミノ酸の一種のL-トリプトファンから体内で生じる、オルトアミノフェノール代謝産物の発がん性の可能性について、研究者等は関心を示しました。これらトリプトファン代謝産物の内、5つはヒト尿中に見出され、そのうち4つは、マウスの膀胱に移植されたとき、発がん性を示しました。その4つの代謝産物は、それぞれ、3-ハイドロキシアントラニール酸(3-HOA)、3-ハイドロキシイキヌレニン(3-HOK)、2-アミノ-3-ハイドロキシイアセトフェノン、キサンッレン酸の8-メチルエーテルです。また、おそらく、ガン患者は、これらの代謝産物の濃度が通常より高く、このような高い尿中濃度は、膀胱粘膜への発ガン性を有していると考えられます。
ボイラント博士とウイリアム博士は、10名のガン患者で、正常な被験者が尿中に排泄するより、高濃度の3-HOAと3-HOKを排泄することを発見しました。また、プライス博士らは、ガン患者の50%が、高濃度の3-HOK有有することを発見しました。なお、3-HOAは、尿中の酸化還元環境の変動により、その安定性が変化し、鉄イオンや銅イオンの含有量が尿中で変化することにより、安定性に変化が見られます。そこで、尿中にビタミンCを入れてやると、3-HOAが安定すると考えられます。
また、尿中の化学ルミネッセンス(発光現象)は著しく変化するが、正常な人々に比べて、喫煙者や膀胱ガン患者の尿中ではもっと高い値です。なお、マウス膀胱に3-HOAを入れたその結晶は、尿中ビタミンC値が高値であれば、その結果として、発がん性を示すかどうか調べることは興味を引きます。研究では、マウス膀胱に入れられた3-HOAの結晶は、その尿中ビタミンC値が高値の時、発がん性を示さないことが分りました。ビタミンCのような抗酸化栄養素が尿中に存在することは、少なくとも、3-HoAによる発ガン性に関しては、防止効果があると考えられます。そして、更なる研究が期待されます。
References
J.V.Schlegel, et al. The role of ascorbic acid in the prevention of bladder tumor formation. Journal of Urology. Vol,103, 1970
I.V. Schlegel. Proposed uses of ascorbic acid in prevention of bladder carcinoma.Ann. N.Y. Acad. Sci. 258:432-438