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気ままに生活してるシニアの残日録

月イチ歌舞伎「法界坊」を観る

2023年12月06日 | 歌舞伎

MOVIXで月イチ歌舞伎「隅田川続悌(すみだがわ ごにちのおもかげ)法界坊」を観てきた。初めて見る演目だ。2008(平成20)年11月、浅草の浅草寺境内に出現した仮設の芝居小屋平成中村座で上演され、NYでも拍手喝采とスタンディングオベーションの絶賛を浴びた串田和美演出の「法界坊」の録画。平成中村座は、中村勘三郎と演出家の串田和美が中心となって平成12年11月にスタートした芝居小屋。

今日はムビチケ3枚セット券を使い、1,900円(通常2,200円)で入った。30人くらいは入っていただろうか。シニア層が多かった。

出演
聖天町法界坊:中村 勘三郎
永楽屋手代要助・吉田宿位之助松若:中村 勘九郎
永楽屋権左衛門:坂東 彌十郎
永楽屋娘お組:中村 扇雀
道具屋甚三郎(実は吉田家の忠臣):中村 芝翫
花園息女野分姫:中村 七之助
仲居おかん・淡路七郎女房早枝:中村 歌女之丞
山崎屋勘十郎:笹野 高史
番頭正八:片岡 亀蔵

ストーリーは、お家騒動もの。お家は「𠮷田家」。簡単なあらすじは、

・お家乗っ取り派の悪人の陰謀で家宝「鯉魚の一軸(りぎょのいちじく)」が紛失
・お家断絶
・若君の松若丸は町人になって町中の店に手代要助として奉公しながら家宝を探す
・店の美しい娘お組と恋に落ちたり、悪い番頭(お組が好き)にイヤガラセされたりする
・この番頭は、お家騒動で出てきた悪い家来の仲間
・苦境に陥る若君を、昔の家来(道具屋甚三郎)やその関係者が陰日なたに助ける
・若君の元の許嫁の野分姫がやってきて、お組と険悪になったり若君と痴話喧嘩になったりする
・最後は家宝も見つかって悪い家臣も罰を受けて、お家再興になる

この演目は、奈河七五三助による狂言。お家騒動もので、法界坊という小悪党の坊主がからむ。法界坊は 町の乞食坊主だが、金と女が大好き、お組に惚れていて要助にいろいろイジワルをする。法界坊のインパクトが強いので、この人が実質上の主人公になっている。法界坊はお組の父親を殺し、さらに野分姫にも言い寄って抵抗されたので殺してしまったりするが、最後は道具屋甚三郎に殺されてしまう。法界坊は悪党ながらも愛嬌溢れる人間的な魅力がある人物として描かれている。

お家騒動解決の後は、所作(踊り、大切所作事)になり、本演目の大きな見どころのひとつ。法界坊の亡霊と、殺された野分姫の亡霊とが同じお姫様の扮装で出てきて踊る。この部分だけ独立して出すこともあり、そのときは「双面水照月」というタイトルで呼ばれる。勘三郎演ずる法界坊と野分姫の霊が合体したお組そっくりな葱(しのぶ)売りの女(「双面(ふたおもて)」と言われる)が、徐々に本性を現しながら変化に富んだ舞踊劇を見せる。

鑑賞したコメントを書いてみたい

  • 月イチ歌舞伎は亡き中村勘三郎の作品を多く取り上げているが、本演目も勘三郎が主役で八面六臂の活躍を繰り広げる、歌舞伎にかける情熱の熱さにいつも感動させられる
  • 歌舞伎は通常、終幕後のカーテンコールはないが、本作はカーテンコールがあった。それもその筈だ、最後の所作が終わって幕が閉じても拍手が鳴り止まないのだ。これは良いことだと思う。ニューヨークでこの作品を演じた時、スタンディング・オベーションにより拍手が鳴り止まなかったというのもわかるような気がする
  • 勘三郎の法界坊と橋之助(芝翫の甚三郎のかけ合いが面白かった。両者は10才違いだが、当時でも押しも押されぬ看板役者、自分たちが歌舞伎界を背負って立つ気概があったのだろう、アドリブをかなり入れたであろうセリフのかけ合いが素晴らしいと感じた
  • 15年前の上演だが、この当時から既に野分姫を演じていた女方の七之助の妖艶さが光った。最後の所作で勘三郎が野分姫と法界坊の合体した葱売りの女を演じていたとき、台詞は後ろで七之助が黒子になって話していた
  • 串田和美の演出だろうが、開演直後に主要な登場人物の紹介があったのはユニークであった。役者が一人ずつ順番に出てきて、その役をアナウンスで説明するのだ、これは良いことだと思う
  • 最後の場面、「双面水照月」の所作(踊り、大切所作事)が大仕掛けで楽しめた。所作と言えば、踊りだからおとなしい感じのものが多いと思うが、本作は派手な動きが多く、観客を十分楽しませる工夫がなされていた、これもあって閉幕後も拍手が鳴り止まなかったのだと思う

十分楽しめた演目だった。



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