ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタルを聴く

2024年12月21日 | クラシック音楽

彩の国さいたま芸術劇場開館30周年記念、アンドラーシュ・シフ/ピアノ・リサイタルを聴きに行ってきた、1階席10,000円、15時開演、17時40終演、ほぼ満席に見えた、日曜日だからか幅広い年齢層が来ていた、604席ある音楽ホールは改装したばかりのためか非常にきれいなホールだった、シフはここで2017年にも演奏会を開催したことがある

今回の公演は、シフの意向で曲目を事前に知らせず、本人が当日ステージ上でトークの中で日本語を交えながら発表するスタイルとの事前説明、めずらしいものだと思った、このようなスタイルはポリーニやツィメルマンがそうだったとプログラムノートの解説で長木誠司氏は言い、シフはなんでもすべて、いつでも完成しており、演奏会はそのなかでその日の即興気分に見合ったもの演奏するだけと説明している

アンドラーシュ・シフは1953年、ブタペスト生れ、両親ともホロコーストからの生き残り、2023年8月にザルツブルク音楽祭への66回目の出演で「音楽祭の歴史を語るうえでなくてはならないアーティスト」として表彰されるほどのピアニスト、レパートリーはバッハ、ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、バルトーク、ヤナーチェクなどが中心となっている、また、夫人は日本人のヴァイオリニスト塩川悠子さん(1946)とは知らなかった、CDには夫人との共演もあるようだ

曲目

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 から「アリア」
ハイドン : ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:52
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第15(18)番 ヘ長調 K.533
ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2「テンペスト」
シューベルト: ピアノ・ソナタ第18番 ト長調 D 894 「幻想」

(アンコール)
シューベルト: 即興曲 変ト長調 D 899-3
シューベルト: 楽興の時 D780から 第3番 ヘ短調
シューベルト:ハンガリー風のメロディ D817
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971から 第1楽章
ショパン: マズルカ ハ長調 op.24-2
メンデルスゾーン : 無言歌集第6巻op.67から 「紡ぎ歌」

シフ自身による曲目の紹介は日本語ではっきりわかるように発音してくれた、奥さんの特訓を受けたのでしょう、他国に行ったときはこういう姿勢は大事だと思う、野球の大谷もゴルフの松山もアメリカでのインタビューでは通訳同伴でもいいから先ず英語で話してもらいたい

この日の演目は私にもなじみの多い曲だったのはうれしかった、最近もNHKのクラシック倶楽部でザルツブルク音楽祭でのシフのピアノ演奏の模様を放送していたが、シューベルトやヤナーチェクを演奏していた、そのシフのピアノ演奏をまじかで見れて良かった

この日の演奏は最初はどちらかというと静かな曲だったがテンペストあたりから少し激しい曲になり最後のシューベルトでは40分ほどの大作を一気に演奏してくれた

シフの演奏会は初めてなので普段はどういう感じか知らないが、アンコールに6曲も弾いてくれたのには驚いた、自身今日の演奏はうまく弾けたと思っていなければこんな多くの曲をアンコールで弾かないでしょう、それぞれの曲を弾き終わった後のシフの顔は満足しているように見えた

ピアノ・リサイタルは休憩も入れて2時間程度で終わる場合が多いが、この日は2時間半以上弾いてくれたのはうれしかった、シフ自身もうれしそうな顔をしていたのでこちらもうれしくなった

この日の観客はシフがそれぞれの曲の演奏が終わって、立ち上がって観客に向きあうところで拍手を始めたのには感心した、ピアノ演奏の余韻を十分楽しむマナーがある観客だと思った

シフの音楽をじっくり聴けて良かった


英国ロイヤル・フェスティバル・ホールでオラフソンのピアノ協奏曲

2024年12月13日 | クラシック音楽

ロンドンから帰国してもう1か月近く経過してしまったが、現地滞在中に聴きに行った音楽公演があと3つあるので、忘れないうちに順次投稿したい

ロンドン旅行時にサウスバンクのロイヤル・フェスティバル・ホール(RFH)で開催されたクラシック音楽公演を聴きに行った

2024年11月6日水曜日午後7時30分開演、時間約2時間10分、「ヴィキンガー・オラフソンがブラームスを演奏」と題した公演

ロンドンに来た時、是非訪問してみたいと思っていたホールがいくつかあった、RFHもそのうちの一つだ、RFHはテムズ川の南側にあるサウスバンク地区にある、サウスバンクにはそれ以外も国立劇場などの文化施設がある、劇場はウォータールー駅から歩いて10分弱のところにある

チケットを出してホールの中に入り、4階に上がり、そこにカフェとソファーがあり開場を待つ、入場時にプログラム・ノートがもらえた

ホールの中に入ると我々の座席はホールのちょうど真ん中、ステージが良く見えるところだった、内部のイメージは日本のホールと変わらなかった

今回の公演の目玉はブラームスピアノ協奏曲のピアノを弾くオラフソンだ、名前は知っていた、調べて見ると彼は1984年、アイスランド生れ、ジュリアード音楽院で学び2008年卒業、ジュリアード・オーケストラ、アイスランド交響楽団などと共演し経験を積み、2016年にはドイツグラモフォンと専属契約、以降、ほぼ毎年アルバムをリリースしてる

世界各地で演奏活動も活発に行なっており、日本にも4回来日、NHKのクラシック倶楽部で2020年12月の庄司紗矢香との共演を観たことがある

ピアノコンクールで優勝したわけでもないのにこれだけの実績を出せるというのがすごいと思う、コンクール入賞が手っ取り早いスターへの近道だろうが、そうでもない例が欧州にはいっぱいあるように思え、日本の関係者も大いに参考にすべきでしょう、もちろん、日本と欧州のクラシック音楽に対する理解や支援などの環境は異なるでしょうが

今日のオラフソンのブラームスのピアノ協奏曲は昨年も弾いて絶賛されたもののようだ、私はピアノを弾けないので、彼の演奏のうまい下手はわからないが、大きな拍手を浴びていた、ロンドンでは人気ピアニストのようだ

さて、RFHのオーケストラ公演を聴いて気付いた点を一つ、演奏開始時間近くになるとロンドンフィルのメンバーがステージに三々五々上がってくるが日本のように拍手はおこらない、これは翌日のバービカン・ホールでも同じだった、また、帰国してからテレビで観たベルリンフィル1997年の定期演奏会(バレンボイム指揮)の開始前の様子も同様だった

楽しめました

出演者

ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
エドワード・ガードナー/指揮者
ヴィキングル・オラフソン/ピアノ

曲目

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
(休憩)
フレイヤ・ウェイリー=コーエン:母国語(世界初演)
バルトーク:『奇跡のマンダリン組曲』


フェスティヴァル・ランタンポレル/シューベルト&ラッヘンマンを聴く

2024年12月08日 | クラシック音楽

[フェスティヴァル・ランタンポレル]レ・ヴォルク弦楽三重奏団&東京文化会館チェンバーオーケストラ・メンバー~シューベルト&ラッヘンマン~を聴きに行ってきた、場所は東京文化会館小ホール、3,300円、15時開演、17時40分終演、7割がた席は埋まっていた

この日は公演30分前から音楽学者の沼野雄司氏によるプレトークがあった、これをすっかり忘れて5分ほど経過してから席について氏によるラッヘンマンや本日の曲目の説明を聞いた、説明は大変丁寧でわかりやすかった、このような取り組みを高く評価したい

出演

レ・ヴォルク弦楽三重奏団

  • ヴァイオリン:オード・ペラン=デュロー
  • ヴィオラ:キャロル・ロト=ドファン
  • チェロ:ロビン・マイケル

東京文化会館チェンバーオーケストラ・メンバー

  • ピアノ:大崎由貴
  • ヴァイオリン:依田真宣
  • チェロ:上村文乃
  • コントラバス:白井菜々子
  • クラリネット:アレッサンドロ・ベヴェラリ
  • ファゴット:鈴木一成
  • ホルン:濵地宗

レ・ヴォルク弦楽三重奏団は南仏のニームで毎年行われているレ・ヴォルク音楽祭の核となっているメンバーで構成されている三重奏団、初来日、この音楽祭は一人の現代作曲家に焦点を合わせ、その作曲家が影響を受けた過去の著名な作曲家と組み合わせて、その2人の作品のみでプログラムを構成する音楽祭、音楽監督は今回来日した三重奏団のヴィオラ奏者のキャロル・ロト=ドファン

曲目

  1. ヘルムート・ラッヘンマン作曲(1986-88)/アレグロ・ソステヌート クラリネット、チェロとピアノのための(大崎由貴、上村文乃、アレッサンドロ・ベヴェラリ)
  2. ヘルムート・ラッヘンマン作曲(2021/22)/弦楽三重奏曲第2番「我が告別」(レ・ヴォルク弦楽三重奏団)
  3. シューベルト作曲/八重奏曲 ヘ長調 D803(レ・ヴォルク弦楽三重奏団、依田真宣、白井菜々子、アレッサンドロ・ベヴェラリ、鈴木一成、濵地宗)

鑑賞した感想を書いてみたい

  • 先日の阪田知樹によるマヌリの現代音楽に続き、この日はラッヘンマンの現代音楽を聴いたが、やはり私には理解不能であった、特に今日の2つの現代音楽は「音楽」というより単なる「音」であり、「楽」の要素がほどんど感じられなかった、演奏者も眉間にしわを寄せて演奏しているように見えた
  • ヨーロッパでも現代音楽中心の演目では客があまり入らないという、やはりみんなベートーヴェンやモーツアルトを聴きたいのだ、現代音楽を演奏するにしてもなじみのある作曲家の作品とセットにしないと客が入らないのが現実なのだろう
  • このような現代音楽だけやっていてもヴァイオリンなどの楽器の弾き方をマスターするのは無理なのではないか、先ず古典音楽をやって基礎を学び、次に現代音楽に挑戦するということになるのであろうか、奏者に聞いてみたいところだ
  • 今回のフェスティヴァル・ランタンポレルは「時代を超える音楽」と題し、古典音楽と現代音楽を同じ奏者が同じ公演で演奏することにより、新旧で何らかの歩み寄りとか相互理解とかの化学反応とでも言うようなものを奏者と聴き手にもたらそうという試みだと思うが、果たしてそれは成し得たのであろうか
  • 最後の演目であるシューベルトの八重奏曲は初めて聴く曲だがたいへん楽しい曲だと思った、シューベルトらしくない曲ともいえる、長調の曲ということもあり、テンポのよいリズムを刻み、演奏しているメンバーの姿や表情を見ていると実に楽しそうに見えた、特にクラリネットのアレッサンドロ・ベヴェラリ君はメロディーに合わせて体を前後左右に揺らせて実に気持ちよさそうに演奏していたのが印象的である、まさに音楽の「楽」を体現しているなと思った

良い試みだと思うが、なかなか難しい内容だった


阪田知樹ピアノ・リサイタルを聴きに行く

2024年12月04日 | クラシック音楽

フェスティヴァル・ランタンポレル、シャイニング・シリーズVol.16 阪田知樹ピアノ・リサイタル~ベートーヴェン&マヌリ~を聴きに行った、3,300円、場所は東京文化会館 小ホール、開演19時、終演20時30分

7割か8割がた座席は埋まっていた、例によって舞台に向かって右側は空席が目立った、また、女性客が圧倒的に多かった、阪田人気か

ランタンポレル L’intemporel とは、「時を超えた、非時間的な」という意味を持つフランス語、フェスティヴァル・ランタンポレルは、東京文化会館主催の現代と古典の音楽がクロスオーバーする新しい音楽祭、今年が第1回、11月27日~12月1日にかけて開催された

現代音楽の音楽祭は専門化して一般的聴衆には近寄り難くなっている一方で、古典音楽のそれは限定された名曲を繰り返し演奏しているだけで、2つにはまったく交わる点がないという問題意識があるようだ

今年はベートーヴェン&フィリップ・マヌリ、シューベルト&ヘルムート・ラッヘンマンという組み合わせで、現代と古典の4名の作曲家にフォーカスし、ピアノのリサイタルについては、1人が古典作品でのフォルテピアノと現代作品における現代ピアノを使い分けて演奏する

出演

ピアノ/フォルテピアノ:阪田知樹

阪田知樹は、1993年生れの30才、フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位、6つの特別賞、日本人男性初優勝など数々の受賞歴を持つ

曲目

  • フィリップ・マヌリ:第2ソナタ「変奏曲」(2008年)
  • ベートーヴェン:ディアベリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調「ディアベリ変奏曲」 Op.120(1823年)

フィリップ・マヌリ(Philippe Manoury、1952年生れの72才 )は、フランスの現代音楽の作曲家、日本との縁が深く、しばしば来日して講演を行うほか作曲マスタークラスによく招聘されている

マヌリは次のように述べている、

ベートーヴェンの思想で私をとらえて離さないものがいくつかある、先ず第一に、音楽は絶えず進化し、刷新するものだと考えていることだ、他でもないベートーヴェン本人が「大フーガ」のはしがきに 「時には自由に、時には厳密に」と書いている

さて、今日の公演の感想などを少し述べたい

  • この日の舞台には2台のピアノが置かれていた、奥に普通のピアノと手前にフォルテピアノ、めずらしい光景に開演前には多数の人が写真を撮っていた

  • 最初の曲はマヌリ作曲の現代音楽で、かなり抽象的であった、旋律とかメロディはなく、何か特別な音が鳴っているとしか聞こえなかった
  • プログラムノートによれば、近年、現代音楽がコンセプチュアルになりすぎているように感じているとの野平音楽監督の言葉があり、まさにそんな感じがした、しかし、野平氏はマヌリはある意味ではより伝統的と言ってよいとも述べているので他の現代音楽家の曲はもっと抽象的なものかもしれない
  • 阪田知樹のピアノで聴くマヌリの音楽で一番印象に残ったのは、ピアノの大きな音の残響が続いていた時、ぴたっと途切れて次の音に入る演奏手法であった

  • マヌリの第2ソナタ演奏終了後、阪田から呼ばれて客席後方に座っていたマヌリが舞台に上がって大きな拍手を浴びていた

  • プログラムノートによれば、ベートーヴェンのディアベリ変奏曲は、実は正式名称は「変奏曲」ではなく、「変容」という言葉が使われている、これは元の主題に加えていく変奏の程度が、もはや主題の原理が判別不能とするところまで進むことを示唆しいる、とのこと
  • そして、マヌリの変奏曲も実はこのベートーヴェンのディアベリ変奏曲へのオマージュとして書かれたものである
  • ディアベリ変奏曲は長い曲だった、普段あまり聞かない曲なので集中力を保つのが大変だったが、途中の第22変奏でモーツアルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」のレポレロのアリアの意味ありげな引用があった所だけはわかった

  • フェスティヴァル・ランタンポレルの狙いが過去の大作曲家と現代の作曲家の組み合わせにより、時代を超越した普遍性を追求していくことにあると理解したが、今夜の公演を聴いて、それがどう表現されているのかわからなかった

  • おそらく、現代音楽の行き過ぎた抽象性の修正と偉大な過去の作品の現代的な解釈ということではないかと思うが、その点を阪田知樹から説明してもらいたかった

楽しめました


佐藤卓史シューベルトツィクルスを聴きに行く

2024年12月01日 | クラシック音楽

佐藤卓史シューベルトツィクルス~ピアノ曲全曲演奏会~ 第21回「ピアノ・トリオI」を聴きに行った、場所は東京文化会館小ホール、開演7時、終演8時50分、全席自由席で5,000円、8割くらい席が埋まっていた、こんな素晴らしいメンバーの演奏が5,000円で聞けるなんて驚きだ

出演

ピアノ:佐藤卓史
ヴァイオリン:白井圭(当初の林悠介から変更)
チェロ:辻󠄀本玲

曲目

シューベルト:

ピアノ三重奏曲 変ロ長調 D28
ロンド ロ短調「華麗なロンド」Op.70 D895
ピアノ三重奏曲 変ホ長調「ノットゥルノ」Op.148 D897
ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 Op.99 D898

(アンコール)
歌い手の持ち物D832

第11回シューベルト国際ピアノコンクールの覇者佐藤卓史が2014年にスタートしたフランツ・シューベルトのピアノ関連器楽曲(独奏曲、連弾曲、室内楽曲)のすべてを網羅的に演奏するプロジェクトの第21回、今回は「ピアノ・トリオI」。ゲストにヴァイオリニストの白井圭、チェリストの辻󠄀本玲を招いた公演

この日の4曲の中で自分が日ごろ聞いているのは最後のD898だけで、後は初めて聴く曲で1楽章のみの曲であった、一方、D898は4楽章の曲だった

今夜の公演を聴いて感じたことなどを書いてみたい

  • 世の中のピアニストにショパン弾きは多いと思うががシューベルト好きそれよりかなり少ないのではないか、映画や小説にもなるショパンの波乱万丈の人生に比べシューベルトの人生は地味で、恋愛や結婚にも無縁で、彼の作曲する音楽も華やかさはない、そんなシューベルトのピアノ曲が大好きで全曲演奏公演を企画して実行している佐藤卓史氏にはシューベルトファンとして感謝したい
  • この日は全席自由席であり、前から6列目くらいに座って三人の演奏を目の前でじっくりと見れたが、演奏中の三人の表情を見ていると佐藤氏が一番曲に対する思い入れが多い情緒豊かな表情をして演奏していた、本当にシューベルトを愛しているんだな、というところが表情に出ていた
  • この日、開場後ホールに入ると、舞台上で調律師がピアノの調律をやっていた、演奏10分前くらいまでやっていた。今年、ピアノの調律師をモデルにした宮下奈都著「羊と鋼の森」(ブログはこちら)を読んで調律のことを多少は知ったが、公演直前まで調律しているということはピアニストはその調律後の音を確認せずに本番を迎えるということで普通は有り得ないと思うが、どういう事情があったのだろうか
  • この日、私は舞台に向かって中央やや右側の座席に座った、私が座った所からさらに右側は空席が目立った一方、左側はほぼ満員であった、これはピアニストのピアノを弾いている指や鍵盤が見えるほうが勉強になると感がている人が多いからだろう、実際、来ていた人はピアノを弾く人が多いのではないかと感じた、ただ、上の宮下氏の本にもあったが音をしっかりと聞きたい人はむしろ右側に座るべきだとの考えももっともな気がして、ピアノを弾けない私は右側に座った、隣に人も座ってなくゆったりと聞けたのは良かった
  • この日の公演では開演10分前から5分間、佐藤氏によるプレトークがあった、公演の概要や共演者とのつながりの説明などをしてくれてよかった、また、曲と曲の合間にも白井氏や辻󠄀本氏に話を振ってくれて彼らの話も聞けて良かった、更に全曲演奏後、佐藤氏が一人で舞台に現れ、感謝の言葉と次回公演の案内、これから弾くアンコール曲の説明などをしてくれて、これもまた良かった
  • 主演後、出口の近くに今夜のアンコール曲の掲示が出ていたのは良かった、ただ、もっと目立つところに掲示してほしい、私は掲示がないかなと意識して探したので気付いたが、気付かない人も多いのではないな

楽しめました

さて、今夜の公演前の夕食は銀座線稲荷町近くの「らーめん稲荷屋」に初めて入ってみた、注文したのは醤油ラーメン(太麺)、900円だったか、先客1名、その後、けっこう入ってきた

一見、量がちょっと少ないかなと感じたが、シニアにはこれで十分、大きなチャーシューが2枚も入っていた、おいしかった

その後、稲荷町から銀座線に乗って上野まで移動し、上野でホームに降りると、先日、日比谷線の上野ホームのデザインが随分洒落ていたことを思い出した(こちらの一番下)、銀座線ホームもリニューアルし「歴史にフォーカスした重厚な美術館空間をイメージ」にしたと東京メトロが説明していたので確認してみらこんな感じだった

ただ、こういうのは如何なものか、日比谷線では見られなかった


上野 de クラシック Vol.99 黒田祐貴(バリトン)を聴きに行く

2024年10月26日 | クラシック音楽

東京文化会館小ホールに上野 de クラシック Vol.99 黒田祐貴(バリトン)を聴きに行った、11時開演、12時終演、座席は7割くらい埋まっていたか、女性が多かった

出演

バリトン:黒田祐貴
ピアノ:木邨清華(きむら さやか)

黒田祐貴は、1992年生れ、東京藝術大学卒業、同大学院修了、イタリアやドイツで研鑽を積み第87回日本音楽コンクール第2位、第20回東京音楽コンクール第3位。オペラ歌手として活躍するのみならず、ドイツリートの研究にも取り組んでおり、木邨清華氏とのリートデュオでセイジ・オザワ松本フェスティバル、東京やベルリンでのリサイタルなどに出演している、この二人は大学の同窓生

彼の父親は名バリトン歌手・黒田博、親子でバリトン歌手だ、黒田博は一時期NHKのクラシック音楽番組の案内役を務めていたので知っていた、あとを継ぐ立派な息子さんがいたとは知らなかった

ピアノの木邨清華は、東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業、第15回大阪国際音楽コンクールAge-G第2位、第4回せんがわピアノオーディション優良賞及び坂井千春賞、第5回Euregio piano award国際コンクール(ドイツ)カテゴリーC第1位、第9回岐阜国際音楽祭コンクール第1位、及び審査員特別賞などの受賞歴がある

曲目

山田耕筰:

  • かやの木山の
  • 鐘が鳴ります

ヴォーン・ウィリアムズ:『旅の歌』より

  • 第1曲 「さすらい人」
  • 第7曲 「私はどこへさすらうか」

コルンゴルト:6つの簡素な歌 Op.9より

  • 第2曲 「夜のさすらい人」
  • 第3曲 「セレナーデ」

:オペラ『死の都』より

  • 「我が憧れ、我が幻想」(ピエロの歌)

マーラー:『さすらう若人の歌』

第1曲 「最愛の人が結婚式を挙げるとき」
第2曲 「野原を今朝通ったら」
第3曲 「私は燃え盛る短剣を持っている」
第4曲 「最愛の人の二つの青い目」

(アンコール)
R.シュトラウス作曲「万霊節 Op.10-8」

最近鑑賞した東京文化会館での公演では、公演終了後にアンコール曲の紹介が無いことを指摘したが、今回の公演終了後には「Xで紹介する」と掲示が出ていた、改善されていたのは評価できる

鑑賞した感想を述べたい

  • 今日の公演ではそれぞれの曲の終了後に黒田氏のトークがあり、選曲の理由や曲の内容、曲に対する想いなどを話してくれて非常に良かった
  • 最近NHKのクラシック音楽番組で、このブログでも紹介したロシアの若手ピアニスト、ダニール・トリフォノフのドキュメンタリーをやっていたが、その中で、トリフォノフは「自分の公演ではピアノを弾く前にはトークはやらない、それは曲に集中できなくなるからだ」と述べていた、それはそれで良いと思う、演奏家それぞれで構わないと思うが、その場合でも演奏終了後、アンコールの前にでも一言語ってもらいたいというのが私の音楽ファンとしての希望である
  • 黒田氏は今日初めて見たが、背が高く、スリムな体形で、素晴らしい音声であった、そしてトークの際はユーモアも交えて話ができ、話し慣れているなと感じた、それは良いことだと思う、これからの時代は話もできてSNSなどで発信もできなければ、良い才能を持っているが一生埋もれることにもなりかねないと思う、若手はあらゆるチャンスを利用すべきでしょう

  • この日の公演のプログラム・ノートを見ると、「演奏中はお静かにお願いします、咳やくしゃみをする場合、エチケットとしてハンカチなどで口元をおおうことで音量が軽減されます」と出ていた、このような注意書きを見たのは初めてだが、大変いいことだと思う、口元をおおわずに大きな咳ばらいをしている人が少なくないためだ
  • さらに、「演奏者は、曲の最後の余韻が完全に消えるまで集中しています、また、お客様にも演奏の余韻をお楽しみいただくため、拍手、ブラボーの掛け声は、曲の余韻が消えるまでお控えください」と書いてあった、これも大変よい注意だと思う、この日は皆さんこの注意をしっかりと守って鑑賞していたと思う
  • 上記の2つの注意は演奏前の館内放送でも注意してほしい
  • この日の公演は入場料が1,100円と大変お手頃価格である、これでは満員になっても赤字でしょう、プログラム・ノートには助成として文化庁芸術振興費補助金と独立行政法人日本芸術文化振興会と出ているので、赤字のかなりの部分はこの助成で補填されるのでしょう、このシリーズは若手が多く出演しているようだから、若い芸術家を育成するということでしょうか、いいことだと思う、出演の二人は今後とも努力を重ね、このホールを満員にできるようになってもらいたいし、チケット代ももっと取れるようになってもらいたいと願っている

この日の公演で黒田氏が話してくれたことのうち、記憶に残っているものから少し書いてみたい

  • コルンゴルトはオーストリア出身の作曲家で1897年生まれだが、戦時中にアメリカに亡命した、クラシック音楽から始めて、後に映画音楽でも名声を得る
  • コルンゴルトのセレナーデついて、セレナーデと言えばシューベルトが有名で、恋する女性の住む家の窓の下で愛をささやく歌だ、ところがコルンゴルトのセレナーデは男の思いを激しく吠える歌だ
  • コルンゴルトのオペラ「死の都」の「我が憧れ、我が幻想」は自分が東京音楽コンクールで歌ったアリアだが、来年3月にびわ湖ホールで「死の都」に出演することになった
  • マーラーは大好きなので今日もマーラーの曲を選んだ

木邨清華のピアノ演奏も素晴らしかった

楽しめました

さて、今日の公演の前に東京文化会館の入口を入り、小ホールに向かう上り傾斜の通路のころでふと左側の壁を観ると、前回訪問した時に見た特徴ある外壁と同じような壁があることに気付いて「あっ!」と思った

さらに、右側の大ホールの入口を仕切る大きな壁や小ホールのチケットチェックの場所を通過して右側の女性トイレに降りる階段につながる壁なども同じ壁だった

今まで全然気にしなかったが、新たな発見に驚いた


「びわ湖ホール声楽アンサンブル 東京公演 vol.15」を聴きに行く

2024年10月19日 | クラシック音楽

東京文化会館小ホールで開催された「びわ湖ホール声楽アンサンブル 東京公演 vol.15、4人の作曲家たち ~フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランク~」を聴きに行ってきた、14時開演、終演16時5分、8割以上の座席が埋まっていた

出演

指揮:佐藤正浩
ピアノ:下村景
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル14名

公演案内によれば、クラシックの声楽家には、この3つの世界がある

  • オペラ
  • 歌曲
  • 少人数の合唱団

クラシックの声楽家には、この3つの世界に跨って活動する人もいるが、自分のジャンルを定めて修練を積む人もいる。でも、大抵の歌手ならオペラと歌曲を両方手掛けたいだろうし、コーラスに時々参加する人も少なくはない。いろんな曲やジャンルに取り組むことで表現の幅は広がるからだ

国内でこの3分野に精力的に取り組むグループが「びわ湖ホール声楽アンサンブル」。彼らは、オペラのソリストとしても、歌曲の歌い手としても、合唱団の一員としても日々研鑽を積んでいる

この「びわ湖ホール声楽アンサンブル」は、日本初の公共ホール専属のプロの声楽家集団、オーディションにより全国各地から選ばれたプロの声楽家で構成され、びわ湖ホールで行うオペラ公演はもとより、滋賀県内における芸術文化の普及を目的とした学校公演やアウトリーチなど、様々な活動を行っている、そして、過去在籍したメンバーは総勢70名を超え、活動期間を終了した後は「ソロ登録メンバー」として、数多くのコンサートやオペラに出演するなど幅広く活躍してる

この日の公演は、リヨン国立歌劇場やパリ・シャトレ座などのフランスの歌劇場で研鑽を積み、オペラや合唱の指揮者として活躍しているフランス音楽のエキスパート、佐藤正浩氏を指揮に迎えフランス近代の四大人気者の知られた名曲を選んで、コーラスとソロで歌声を披露するもの

今日の公演は2日前にびわ湖ホールで同じ内容で実施したものを、東京に移動して開催するもの

今回のピアノ伴奏者は下村景氏、クラリネット奏者として、第19回さくらぴあ新人コンクール第2位、広島プロミシングコンサート2019において広島交響楽団と協奏曲を共演。オペラにおいては、堺シティオペラ、ひろしまオペラルネッサンス等で音楽スタッフを務める。

曲目

フォーレ(1845-1924、79才没)

  • ラシーヌの雅歌、月明かり、マンドリン、夢のあと、マドリガル

ドビュッシー(1862-1918、55才没)

  • 星の夜、美しき夕暮れ、マンドリン、
  • 「3つのメロディ」より 海は大伽藍よりも美しい
  • シャルル・ドルレアンの3つの歌

ラヴェル(1875-1937、62才没)

  • 3つの歌(ニコレット、楽園の美しい三羽の鳥、ロンド)
  • ヴォカリーズ、
  • 「5つのギリシャ民謡」より 花嫁の歌
  • 「ドゥルシネアに思いを寄せるドン・キホーテ」より 空想的な歌夢

プーランク(1899-1963、64才没)

  • 「7つの歌」より、 美とそれに似たもの、マリー
  • 「フランスの歌」より、王様の小さなお姫様
  • 「偽りの結婚」より、 ヴァイオリン
  • 「月並み」より、パリへの旅、ホテル
  • 愛の小径
  • 平和への祈り

一般的なイメージとしては、フォーレには清冽さ、ドビュッシーだと幻想性、ラヴェルでは洒脱さ、プーランクなら親近感を覚える人が多いようだ

では今日の公演を聴いた感想などを書いてみたい

  • 「びわ湖ホール声楽アンサンブル」は今年テレビで観た阪哲朗指揮の「ばらの騎士」を観て知った(その時のブログはこちら)、なかなかユニークな存在だと思った
  • 指揮者の佐藤正浩氏が冒頭と、曲の合間にマイクをとり、あいさつと共に曲の解説などをしてくれてよかった、例えば、この日の演目は全部仏語の歌詞だが、アンサンブルのメンバーは仏語で歌う人がいないので苦労したなどのエピソードを紹介してくれた
  • 曲目は多いが、それぞれの曲は短い、それを利用して合唱のみならず、ソロ歌手としてほとんどの歌手がピアノ伴奏の独唱で歌ってくれたのは良かった、それぞれの歌手の印象が強く残った
  • プログラムノートには日仏対比の歌詞対訳があり、有難いと思った
  • 演目の最期はプーランクの「平和への祈り」であった、これについて、指揮者の佐藤は「つい最近、日本の反核組織がノーベル平和賞を受賞して驚いた、世界はまだ捨てたものではないと思った、この曲は1938年の第二次大戦中にプーランクが地下で作曲したものだ、戦争がなくなるように、平和を祈る意味で公演の最期の曲として選曲した」と述べ、短いこの歌の詩を朗読した後、演奏に入った、とても印象的であった
  • この日の演目は知らないものばかりであった、じっくりと聴いて、難しい曲が多いと思ったが、唯一、プーランクの「愛の小径」がシャンソンっぽくて聴きやすかった
  • ピアノ伴奏はまだ若そうな下村景氏で、将来性のあるピアニストであり指揮者の勉強もしていると佐藤が褒めていた、その中で4人の各作曲家の中から一曲ずつ、下村ではなく、佐藤が自らピアノ伴奏をしていた、「手だけ振って仕事をしていないと思われると困るので、そうした」と話していたが、なかなかうまかった

びわ湖ホール声楽アンサンブルの素晴らしい声にすっかり魅了された日になった

さて、この日は開演前の時間に東京文化会館の入口の反対側に行って、文化会館の建物の外壁を見た、コンクリートにげんこつくらいの大きさの大理石がいっぱい埋め込まれている、先日、テレビで紹介されていたのを見て確認してみたくなった

東京文化会館は、コルビュジエの弟子である前川國男(1905-1986)の代表作。1961年、師のコルビュジエが設計した国立西洋美術館から2年遅れて竣工した。外壁への石の埋め込みの理由をテレビでは説明していたが、忘れてしまった、ネットで検索しても出てこないのでChatGPTに質問したら「建物全体に独特な質感を与えており、光の当たり方によって異なる表情を見せるよう工夫されている」と出た

よく行っているところなのに知らないことが多いものだ、勉強になりました


第32回 和波たかよし アフタヌーンコンサート~デュオの喜び

2024年10月10日 | クラシック音楽

東京文化会館小ホールで開催された「第32回 和波たかよし アフタヌーンコンサート」を聴きに行ってきた、B席4,000円、14時開演、16時15分終演、座席は半分以上は埋まっていた

「アフタヌーンコンサート」は、コンサート演奏の合間にトークを交え、リラックスした雰囲気でクラシックの名曲に耳を傾けようとする公演で40年前から続けているもの

出演

ヴァイオリン:和波たかよし
ピアノ:土屋美寧子

曲目

モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 変ロ長調 KV454
ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番イ長調op.100
グリーグ:ソルヴェイグの歌
グリーグ:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第2番ト長調op.13

(アンコール)
ブーランク:間奏曲(インテルメット)第2番(だと思う、曲名をよく聞き取れなかった)
ポルディーニ:踊る人形

鑑賞した感想などを述べたい

先ずは、出演者について

  • 和波(わなみ)たかよし氏は、1945年生まれ、4歳よりヴァイオリンを始め、1962年第31回日本音楽コンクール第1位、パリのロン=ティボーなどの国際コンクールでも入賞。さらに「点字毎日文化賞」「文化庁芸術祭優秀賞」などを受賞し、2005年には紫綬褒章、2015年には旭日小綬章
  • 土屋美寧子氏は、和波たかよしのパートナー、40年余り一緒に演奏してきた、5才よりピアノを始め、東京芸術大学、およびドイツ・フライブルク音楽大学卒業。1976年から国内各地で定期的にソロリサイタルを続けている。国内、国外で数多くの演奏、放送、CD録音を行っている
  • プログラムノートなどで調べてみると、和波氏は生まれつきの全盲という障害をお持ちで、それでもなおプロの演奏家になり80才近い現在までご活躍なのはすごいと思った、パートナーの土屋美寧子氏の協力も大きいだろうが大したものだ
  • 身体的ハンデを負って演奏をしている人としては片手のピアニスト舘野泉氏は知っていたが、他にも調べてみると少なくないのは驚いた、和波氏を含め社会はもっともっと注目して称賛しなければいけないと思った
  • 今日の観客には目に障害のある方が目立った、和波氏はその世界では生涯を乗り越えて活躍する芸術家として希望を与える存在なのでしょう、今日もかくしゃくとして、背筋をピンと伸ばして演奏されていた
  • 今日のコンサートは従来から、演奏するだけではなく、トークを交えることでクラシック音楽に気軽に接することを重視したやり方だそうで、これは時代の先を行っているともいえると思う、トークでは二人とも若々しくお元気なのがよくわかった
  • この日のトークでは、今年も多くの著名人が亡くなったが一番ショックだったのは小沢征爾氏だとして、小沢さんから呼ばれてサイトウキネンオーケストラに参加した思い出などを語ってくれたのは良かった

次に曲目について

  • モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタは、彼の創作意欲が最も高まった時期の作品で、明るく優雅なたたずまいの中に、二つの楽器の生き生きとした対話が新鮮な生命力を感じさせる曲、今日聞いた曲の中では一番親しみが湧いた曲だった
  • ブラームス(1833-1897)のヴァイオリンとピアノのためのソナタは、1886年の夏にスイスのトウーン湖畔の別荘で作曲された、全曲を通じて抒情的な温かさに満ちている曲
  • グリーク(1843-1907)のソルヴェイグの歌は、同郷のイプセンから依頼され、彼の戯曲「ペールギュント」上演のために付随音楽を書いた中の1曲、放蕩者のペールを愛し続けたソルヴェイグが切々と歌う美しいメロディー
  • グリーグのピアノとヴァイオリンのためのソナタは、彼が24才の1867年に作曲された、飾り気のない若々しさと素朴な民族音楽の響きが、新鮮な空気のように心にしみる作品
  • 当初演目にはブーランクのヴァイオリンとピアノのためのソナタ「ガルシア・ロルカの思い出に」が含まれていたが、当日来てみるとブラームスの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ2番」に入れ替わっていた、公演冒頭で和波氏から、最近、ピアノの土屋氏の肩の調子が悪く、この曲を弾くには腕を左右にクロスするなど難しい部分があり、正確に所定の鍵盤にタッチできる自信が持てないので公演5日前に急遽、弾きなれているブラームスの曲に変更したとのことであった
  • ブラームスはグリークより10才年長であったが、今日演奏された彼の曲はグリークの曲より20年近く後の作品であるのが面白い、ブラームスの曲は彼が50代の円熟期の作品である一方、グリーグの曲は若さが目立つ24才の時の作品だと説明してくれた
  • 本日の曲目は初めて聴く曲ばかりであったが、お二人の演奏をじっくりと聴けて良かった

すごい芸術家の演奏を聴けて感動しました、お二人の息はぴったりと合って、素晴らしい演奏でした、いつまでもお元気でご活躍ください


日本モーツァルト協会 第661回例会/郷古廉の深遠なる世界 IIIを聴きに行く

2024年10月05日 | クラシック音楽

東京文化会館小ホールで開催された日本モーツァルト協会 第661回例会/郷古廉の深遠なる世界 III を聴きに行った、18:15開演、終演19時30分、全席自由席の6,000円、満員盛況であった、モーツアルトファンか郷古ファンのせいか

開演時間が19時の公演が多いが今日は15分早い18時45分であった、これはおそらく大ホールで19時開演のクラシック音楽公演があり、同じ開演時間にすると終演時間も重なり混雑するため、少し時間をずらしたのではと思った

出演

ヴァイオリン・指揮:郷古 廉
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

曲目

モーツァルト:

アダージョ ホ長調 K261
ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K216
ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ長調 K211
ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ長調 K218

日本モーツァルト協会とは、ホームページによれば

モーツァルトの音楽を気軽に楽しむ愛好会です。1955年のモーツァルトの誕生日1月27日に設立されました。1995年よりNPO法人として運営されています。現在の会員数は500名を超えております。

主な活動は

月例コンサート(例会)の開催、講演会の開催、サークル活動、会報の発行、欧州旅行の催行・懇親会の開催などの行事、他団体主催の演奏会の後援・会員への割引価格提供など

郷古 廉について

1993年生まれ、宮城県出身、2006年第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位(史上最年少優勝)。2013年ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリン・コンクール優勝などの受賞歴がある、2007年12月のデビュー以来、読売日響、大阪フィルなど内外のオーケストラと共演。2024年4月よりNHK交響楽団第1コンサートマスター

東京フィルについて

1911年創立。日本で最も長い歴史をもつオーケストラ。シンフォニーオーケストラと劇場オーケストラの両機能を併せもつ。新国立劇場でのオペラ・バレエ演奏などで有名。

この日のオーケストラ編成は、曲目で若干変化はあったが、私が座った座席から見える範囲では、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラがそれぞれ4名、チェロ3名、コントラバスとホーボエがそれぞれ2名、フルート、ホルンがそれぞれ1名の編成であったように見えた

演目について

郷古 廉が主役なのでしょうから曲目はすべてバイオリン協奏曲であった、当日もらったプログラムによれば、モーツアルトはヴァイオリンの腕前も相当なものだったとのこと、ヴァイオリン協奏曲は1775年に4曲を作曲して、それが最後になった、しかも半年の間に作曲された、これらの経緯は不明

アダージョK261

ヴァイオリン協奏曲第5番の第2楽章の代用曲とみられる曲、第5番ではオーボエが使われているが、この曲ではフルートが使われている

ヴァイオリン協奏曲3番

第2番から飛躍的進歩がみられる、あとのシンフォニックな協奏曲への第一歩を記した作品、当時のフランス的な趣向が取り入れられている

ヴァイオリン協奏曲2番

一連の協奏曲の基礎が築かれた作品、フランス風の優美な音楽

ヴァイオリン協奏曲4番

ヴァイオリンの輝かしい表現力や技巧が前面に出されている点が特徴で、高音の使用も際立っている

この日の演奏では、郷古が弾き振りによりオーケストラをコントロールしていた、4曲聴いた中ではヴァイオリン協奏曲第3番が一番親しみやすかった、郷古の演奏は素晴らしいと思ったが、まだ若いのだからもっと海外で挑戦してほしいと思った、日本国内ではN響のコンマスは最高峰であろうが、その地位で満足する人ではないと思うがどうだろうか

なお、この日はアンコールで1曲演奏してくれたが、曲目はホームページ、Xには出てなかったのでわからなかった、東京芸術劇場のように公演終了後にホワイエに掲示してもらえると有難い

楽しめました


テレビでヨーロッパの夏のコンサートを観る

2024年10月03日 | クラシック音楽

NHKの番組で例年、ウィーンとベルリンでの夏のクラシック音楽の野外コンサートの模様を放送してくれるので楽しみにしている。今年も9月2日に放送されたので録画して観た

最初は、ウィーン・フィル シェーンブルン夏の夜のコンサート2024、収録は2024年6月7日、場所はシェーンブルン宮殿の庭園

<曲目>

  楽劇「ワルキューレ」から 「ワルキューレの騎行」
  歌劇「タンホイザー」から 「おごそかなこの広間よ」ワーグナー作曲
   「わが祖国」から 交響詩「モルダウ」
  歌劇「二人のやもめ」から ポルカ
  歌劇「売られた花嫁」から 「道化師の踊り」スメタナ作曲
  歌劇「運命の力」序曲、「神よ 平和を与えたまえ」ヴェルディ作曲
   「ルードゥス・プロ・パトリア」から 「夜と愛」オルメス作曲
  バレエ音楽「ガイーヌ」から 「剣の舞」ハチャトゥリヤン作曲
   「舞台管弦楽のための組曲」から ワルツ第2番ショスタコーヴィチ作曲
  喜歌劇「チャールダーシュの女王」から 「私の故郷は山にある」カールマーン作曲
  ワルツ「ウィーンかたぎ」ヨハン・シュトラウス作曲

<出演>

  ソプラノ:リーゼ・ダヴィドセン(1987年、ノルウェー、ソプラノ)
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  指揮:アンドリス・ネルソンス (1978年、ラトビア)

観た感想を述べると

  • 今回の指揮者はネルソンス、Wikipediaを見る限り、特に指揮者コンテストなどの優勝歴はないが、実力と良き指導者に恵まれたのだろう、ここまで有名になるのは大したものだ
  • 歌手のダヴィッドセンはは久しぶりに観たが、今回は大人びた化粧や髪のセットで以前の童顔が残る可愛らしい顔つきとは全く異なった大人の雰囲気を出していた、これはこの日に歌った「運命の力」や「タンホイザー」のためか、歌唱力は素晴らしいと思った
  • 曲を聴いていて、ショスタコーヴィチ作曲の「舞台管弦楽のための組曲」ワルツ第2番が何とも言えず哀愁に満ちたメロディーでまるでメロドラマでかかる音楽のようだった、と言っては失礼か、ショスタコーヴィッチがワルツを作曲していたとは初めて知った、この曲は「山猫」などの映画で使われている

Dmitri Shostakovich - Waltz No. 2

  • 出演者では今年春に東京春音楽祭に来日していたライナー・ホーネックの元気な姿が確認できて良かった(その時のブログ)、また、日本人の奏者として、チェロのベルンハルト・直樹・ヘーデンボルクが頑張っていたのがわかった、彼の兄のヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルクも第1ヴァイオリンとして在籍しているがテレビではわからなかった、彼ら兄弟は日本人のピアニストの母とスウェーデン人のバイオリニストの父を持ち、テレビで紹介されていたのを一度見て知った、ウィーンフィルのホームページ団員紹介ではWilfried Hedenborg、Bernhard Hedenborgとして紹介されている

次は、ベルリン・フィルのワルトビューネ・コンサート2024、収録は2024年6月22日、場所はワルトビューネ野外音楽堂(ベルリン)

<曲目>

  交響詩「はげ山の一夜」、ムソルグスキー作曲/リムスキー・コルサコフ編曲
  ピアノ協奏曲 第1番 変ニ長調 作品10プロコフィエフ作曲
  練習曲 第6番、フィリップ・グラス作曲
     亡き王女のためのパヴァーヌ、ラヴェル作曲
   「ダフニスとクロエ」組曲 第2番、ラヴェル作曲
     ボレロ、ラヴェル 作曲
   組曲「ムツェンスクのマクベス夫人」作品29aアレグレット、ショスタコーヴィチ作曲
  ベルリンの風パウル、リンケ作曲

<出演>

  ピアノ:ユジャ・ワン
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  指揮:キリル・ペトレンコ

感想としては

  • 今年の注目は何といってもピアニストのユジャ・ワン(1987年、中国)だろう、知らなかったが、超ミニスカートなど露出がすごい衣装を着て聴衆の目を驚かせ、華麗なテクニックで演奏する人気ピアニスト、この日は評判通りのコスチュームで出てきた、プロコフィエフのピアノ協奏曲の1番の難しい演奏を華麗なテクニックで演奏してくれた
  • ベルリンフィルの演奏者としては、これも何といっても第1コンサートマスターの樫本大進だろう、元気な姿で演奏している姿は頼もしく、日本人として誇らしい、黒髪のままの姿が好きだ、黒髪は日本人のアイデンティティだ

  • 彼以外では、ヴィオラの清水尚子だと思うが、日本人が出演していたのはうれしい、また、ホルンのサラ・ウィルスが元気な姿で演奏していたのが見れてうれしかった
  • 何年か前にテレビでサラ・ウィルスが中南米のどこかの国に行って、マンボを演奏するなどのいろんな体験をした番組を放送していたの見て偶然知り、ファンになった、彼女がその時、自分はベルリンフィルという大きな組織に所属してホルンを演奏できるということが非常にうれしいと語っていたのを覚えている、ベルリンフィルの団員の紹介では、彼女はアメリカ生まれで東京でも暮らしたことがあるとのこと

さて、2つの夏の屋外コンサートを観て感じたことを若干述べたい

  • クラシック音楽を屋外で演奏するというのは相当無理があるような気がする、今回のシェーンブルン宮殿には従来より観客を増やしたように思う、まして、ワルトビューネは2万人だというから、拡声装置と大きなスクリーンを使っての演奏になり、屋外に適した曲でないと無理があると思った
  • ビジネス的にはより多数を集客できる屋外コンサートは十分ペイするのでしょう、値段も普段より高く設定できてるかもしれない、放映権料収入も大きいのでしょう
  • 欧州は商品でもサービスでも日本とあまり変わりないものでも高級に見せるテクニックに長けている、屋外コンサートの照明や会場の設定など、人を引き付ける魅力あるものにするのがうまいと感心する、逆に日本人は全くこのようなことに疎い、宝の持ち腐れはいっぱいあるでしょう
  • シェーブルん宮殿でもワルトビューネでもとてもトイレに行けないでしょう、そんなことがワルトビューネのレビューに書いてあった、ワルトビューネは階段の段差が不規則で年寄は危ないとも書いてあった、だが、そこまでしても見たいものなのでしょう

楽しめました