バイロイト音楽祭2024/楽劇「トリスタンとイゾルデ」をテレビで鑑賞した
ワーグナー 作曲
演出:ソルレイフル・オーン・アルナルソン(1987、アイスランド)
管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団
指揮:セミョーン・ビシュコフ (1952、ソ連)
収録:2024年7月25日 バイロイト祝祭劇場(ドイツ)
<出演>
トリスタン:アンドレアス・シャーガー(1971、オーストリア、Andreas Schager)
イゾルデ:カミッラ・ニールント(1968、フィンランド、Camilla Nylund)
国王マルケ:ギュンター・グロイスベック(1976、オーストリア、Günther Groissböck)
クルヴェナール:オウラヴル・シーグルザルソン
ブランゲーネ:クリスタ・マイア
今までワーグナーの作品は長いものが多いので見る気がしなかったが、今年は挑戦してみようと思っている、先ずはテレビで放送していた「トリスタンとイゾルデ」を観ようと思った、この曲のCDは持っているが、音楽が抽象的でメロディーがなくBGMで聴いていても全然覚えないのでオペラも観る気にならなかったが、良いオペラだとの評判が多いので挑戦しようと思った
なお、作曲当時ワーグナーはパトロンであった実業家ヴェーゼンドンクの妻と不倫関係にあった、このオペラは彼の私生活の刻印でもあるようだ
今回の演出だが、NHKの放送時のテロップの説明や他の方のブログを見ると以下の特徴がある
- 演出のソルレイフル・オーン・アルナルソンは今回がバイロイトデビューで、舞台を持参品が山積みされている船に設定した
- 彼は2人が物語が始まる前から愛し合っていたことを強調するとともに「憂鬱な」という名を持つトリスタンを死の世界に取りつかれた男として造形した
(感想)
トリスタンのあらすじを調べると2人はイゾルデがトリスタンに媚薬を飲ませたことから愛し合ったとなっているが、この日のトリスタンはそうではないため媚薬を飲むシーンがなかったのかと合点した
また、通常のあらすじではトリスタンはメロートと争って死に至ると説明されるが、そのシーンがなかったのでおかしいなと思ったが、この演出ではトリスタンは死に取りつかれて第2幕で自ら劇薬を飲んで死ぬが死にきれず、第3幕では目が覚めて、最後に多分薬のせいで死ぬのであった
歌手については
- イゾルデ役のフィンランド人ソプラノ、カミッラ・ニールントは評判は良いようだが、ちょっと太目だと思った、カーテンコールの時にトリスタン役のアンドレアス・シャーガーと二人で出てきて、シャーガーがニールントを抱きしめて上に持ち上げようとしたら重くて持ち上がらなかったため抱きしめてごまかしていたのには笑ってしまった、しかし、これは取りようによってはアイルランド人王妃としての威厳がある姿とも言えるし、ワーグナーを歌うのは大変な声量とスタミナが必要で、若くてほっそりした歌手では無理とも言えよう
- ニールントであるが、一昨年の年末のウィーン国立歌劇場の「こうもり」にロザリンデ役で出演したのをストリーミングで観ていた(その時のブログはこちら)
- トリスタン役のアンドレアス・シャーガーは旬のワーグナー・テナーで、来日したこともあるようだ、クルヴェナール役のオウラヴル・シーグルザルソン、ブランゲーネ役のクリスタ・マイアも知らない歌手だが、それなりの歌唱力があり素晴らしいと思った
- 国王マルケ役のギュンター・グロイスベックはどこかで観たことがあるなと思っていたら、昨年観たMETオペラ「ばらの騎士」でオックス男爵をやっていた彼だった(こちら)、体格が良く、歌うときに上下のあごを逆方向に横にずらして歌う癖があるのですぐに気が付いた、来日したこともあるようで、今回も適役だと思った
さて、今回のトリスタンとイゾルデの音楽であるが、その特徴は「トリスタン和音」をはじめ、半音階進行の音楽を多用することで、西洋音楽の金科玉条であった調性音楽・機能和声を崩壊寸前まで追い込むという音楽史上に残る革命的な作品、 また不安定な和声を駆使することで、従来に比べ人間の内面をより緻密に表現できるようになったのも特徴と説明されている
初めてじっくり聞いたが、初回でもありまだまだ全然理解できなかった、ただ、第3幕は何となく終結に向かって盛り上がり、そして静かに終わるところが良いなと感じた、何回も聴きこまないとその良さはわからないのでしょう
難しいオペラでした