ゆっくり行きましょう

好きなことじっくり楽しむシニア

「MOTアニュアル2024こうふくのしま」を鑑賞(追記あり)

2025年03月04日 | 美術館・博物館

(2025/3/4 追記)

先日、東京現代美術館で現代画の川田知志氏の作品を鑑賞したが、その川田氏が最近、第2回絹谷幸二芸術賞(2024年度)で最高位の大賞となったと発表された(こちら参照)、おめでとうございます

絹谷幸二芸術賞は、若手芸術家を顕彰し芸術文化を発展させてほしいという絹谷氏の思いを込めて創設された賞、 絹谷幸二氏は1943年生れ、文化勲章受章、文化功労者、日本芸術院会員 独立美術協会会員、東京藝術大学名誉教授

(2025/2/10 当初投稿)

東京現代美術館で開催中の「MOTアニュアル2024こうふくのしま」を観に行ってきた、1,300円

この日は平日だったが、あさイチの開館10時過ぎに美術館に到着すると入口に続々と人々が入っていく、小学生などの課外事業かなと思ったら若い大人たちだった、何だろうと思ったら開催中の展覧会「坂本龍一 / 音を視る 時を聴く」展を観る人たちだった、館内に入場待ちをする行列があり、待ち時間40分と書いてある、ざっと見た感じでは200人くらいは行列に並んでいたのではないか

私はその展覧会ではなく「MOTアニュアル」展の方で、直ぐに入れた、展覧会の説明によれば、「MOTアニュアル」展とは現代美術から新たな側面を引き出すグループ展で今年は20回目の開催、副題にある「しま」は、今回出展する4名の作家が拠点を置く「日本」の地理的条件に対する再定義を含んでおり、自身の足元を起点にしながら、より大きな文脈や関係へと開かれており、多様なアプローチを通じて、現実の世界を視覚的に置き換え、描き出すことにより、身のまわりや自己の多義性や重層性と対峙する、彼らの作品は、作者の解釈や意図を超え、見る者がそれぞれの視点や感覚、経験を通して主体的に意味を見出すための装置として働き、それぞれに異なる見かたや感じかたを促す、と説明されている

現代美術はなんでこんな小難しい説明をしないといけないのか

展覧会場に入っていき、順路に従って観ていくと、展覧会場は4人の作家ごとに一部屋が割り当ててあった、各作家ごとの簡単な紹介と自分が鑑賞して一番気に入った作品を紹介したい、なお、すべての会場を観た後にエレベーターで下の階に降りると4人の作家へのインタビュー動画が見れるようになっており、それもじっくりと聞いて参考にした

清水裕貴(しみず ゆき、女性、1984)

写真とテキストで構成されたインスタレーションから、中国の大連と東京湾岸を舞台にした物語「星の回廊」を制作したもの、土地・海・湾の歴史や伝承、現実と幻想が混ざっている、これらの作品で作家が立脚する土地の輪郭をとらえようと試みている

川田知志(かわだ さとし、1987)

戦後の日本社会を特徴づける都市部と郊外の風景を主題として、フレスコ技法を軸とした全長約50メートルの壁画を描いた、四角い展示室のすべての壁面が一つの作品になっている驚きの絵画

臼井良平(1983)

日常の些細なものや状況を再現したインスタレーションを通じて、見る者に新たな視点を提示、特にプラスチック製品の形をガラスで繊細に再現するところに特徴がある

庄司朝美(1983)

描くこと/見ることの身体性を強く意識させる絵画により、作品内外の世界を結びつけようと試みた、アクリル板やカンヴァスに作者自身の内なる場が描かれている、画中には鳥や動物、亡霊などが交錯し、ホラー的な作品に見えた

感想

  • みな若い作家で、ユニークで意欲的な作品だと思った
  • 清水氏の作品「星の回廊」の説明(作品解説の小冊子と会場の音声説明)には、作品に関連する遼東半島の歴史に触れ、「日露戦争で勝利した日本はロシア帝国から大連の租借権を継承し、関東州と称してその地を足がかりに満州全土を軍事支配、傀儡国家の満州国を建国した」とあるが、若者が戦前の日本の行動を悪とする戦勝国史観に感化されているのを見る思いがしていやな気分になった、芸術にこのような偏った史観を持ち込まないでほしいし、むしろ芸術を通じてこういう偏向思想から解放してほしいと思った
  • 運営面では、作品リストがないのが不満である、壁のある個所に作品番号と作品名が書いてあるものもあったが展示作品との結び付けがわかりずらい
  • 室内が暗すぎて文字が見えにくいし、配布される説明書が読みずらかった

約1時間20分くらい鑑賞した、勉強になった

さて、鑑賞後ちょうど昼時となったので、館内のカフェ&ラウンジ「二階のサンドイッチ」で昼食にした、1,370円とちょっと高めのカフェだった

坂本龍一の行列にはまだ100人以上並んでいた


河鍋暁斎記念美術館に行く

2025年03月02日 | 美術館・博物館

先日、澤田瞳子の直木賞受賞作「星落ちて、なお」を読んで河鍋暁斎、暁翠親子の日本画家を知ったのだが、ネットで調べて見ると河鍋作品を展示する美術館「河鍋暁斎記念美術館」があるのを知ったので行ってみたくなった、場所は蕨駅西口からバスに乗って美術館から徒歩10分くらいの停留所で降りて、訪問した

美術館周辺は住宅街で落ち着いた雰囲気がある、蕨は都心に通勤するには便利なところなので、この辺の住宅も買うとなればきっと高いでしょう

この美術館の外観は周辺の住宅街に溶け込むような落ち着いたものとなっており、センスの良さを感じた、入口から中に入るとチケット売場があり600円を払う

展示室は第1展示室、第2展示室と別館の第3展示室の3つがある、写真撮影は禁止、第1展示室から順番に観ていった、展示作品にはそれぞれ題名、解説がついていたが、スマホでQRコードを読み込めばそれらが見れるようになっていた

この日の展示は

  • 企画展「暁斎・暁翠 福寿の魁(さきがけ)」展(第1、第2展示室)
  • 特別展「『暁斎絵日記』に見る年中行事―新年―」展(別館第3展示室)

企画展は、2025年が巳年(みどし)にあたることから、暁斎・暁翠がヘビを描いた作品や、新春にふさわしく七福神や縁起物を描いたおめでたい作品の数々を展示してた

また、特別展では所蔵する『暁斎絵日記』から、明治18年正月の様子を描いた絵日記の部分を中心にパネル展示してあった

順番に観ていったところ、企画展では以下の三つが良いと思った、その他の干支の縁起物の絵はどうもあまり響いてこなかった、鍾馗(しょうき)は澤田瞳子の本にも出てきたので興味深く鑑賞できた

  • 暁翠「梅に雀」 紙本墨画淡彩 絵手本
  • 暁翠「竹に鶯」 紙本墨画淡彩 絵手本
  • 暁雲「鍾馗」 絹本墨画彩色 軸装

館内は光に弱い日本画のため薄暗くなっているが、これは仕方ないことでしょう

そして、特別展に行くと暁斎の明治18年正月の絵日記が展示してあり、一つ一つを見ていくと大変面白く鑑賞できた、特に絵日記に描かれている人物が「星落ちて、なお」を読んでいたせいか「ああ、あの人か」という感じでよくわかったので、面白かった

ゆっくり鑑賞し終わった後、ミュージアム・ショップに立ち寄った、暁斎親子関連の図書などがあったので、「画鬼 暁斎読本」1,100円を買ってみた

勉強になりました、この日に鑑賞できたのは暁斎、暁翠親子のほんのわずかな作品だけなので、今後も河鍋親子の作品は折に触れて鑑賞していきたいと思った


DIC川村記念美術館に行く(2025年)

2025年02月18日 | 美術館・博物館

閉鎖が発表されていた当美術館であるが、最終的には①美術館の規模を縮小して東京都内に移転、②佐倉市の現美術館については2025年3月31日を最終営業日として4月1日から休館することになった、見納めだと思って訪問した

この日は祭日、車で行ってみると開館時間の10時ちょうどに到着したが入口前の駐車場は満車、ちょっと離れたところにある第4駐車場に入れた、みんな出足が速いようだ

事前にオンラインチケットを購入したがチケット売場に長い行列ができるほどではなかった、入口からしばらく森の中を歩いていくと大きな池と広大な敷地、美術館の建物が見えてくる、この景色が素晴らしい

美術館の中に入ると館内マップが置いてあり、それを持って1階の展示室から順次鑑賞していった、館内は撮影禁止なのが残念だ

この日は「DIC川村記念美術館 1990–2025作品、建築、自然」と題し、庭園と館内全ての展示室を用いて、約180点のコレクション作品が展示されていた、「作品、建築、自然」の三要素はこの美術館の理想の姿として定義されたもの、コレクション展示はこの三要素の融合が最も純粋な形で現れる場として開館以来何よりも大切にしてきたとある

展示室の概要と、今回鑑賞して特によかったなと感じた作品

101室  印象派からエコール・ド・パリへ

  • 「姉妹」モイーズ・キスリング
  • 「薔薇と藤のある家」アンノール・シダネル
  • 「麦わらを積んだ荷馬車」ピサロ

102室  レンブラント・ファン・レイン
103室  抽象美術の誕生と展開
110室  版画、写真、ドローイング

  • 「青い床の室内が描かれた壁紙」ロイ・リキテンスタイン

104室  ダダ、シュルレアリスムとその展開
105室  ジョゼフ・コーネル
106室  ロスコ・ルーム〈シーグラム壁画〉

201室  フランク・ステラ
202室  抽象表現主義、カラーフィールド
203室  ネオダダからミニマリズム、日本の現代へ

エントランスホール  アリスティード・マイヨール
ホワイエ  エンツォ・クッキ、野口里佳

  • 「無題(黄色い壁)」エンツォ・クッキ

庭園  野外彫刻

ご覧の通り、展示作品で特に気に入ったもの、自分の感性に響いてきたものはわずかしかなかった、ただ、101室の展示作品は印象派とエコール・ド・パリの作品が中心なので全部好きだとも言える、当館が誇るレンブラント、マーク・ロスコ、フランク・ステラなどの作品、その他の抽象絵画はどうも苦手だ

順路の一番最後にあいさつ文が掲示してあり読んでみると、この美術館は作品説明を掲示してない(実は館内マップに作品解説のQRコードがついているが)、それは美術館側が一つの説明をしてしまうと観る人の作品解釈を制約してしまうからであり、「作品をして語らしめ、観る人がそれぞれ自由に感じてもらいたい」という趣旨の説明が書いてあった

さて、館内の鑑賞を終わってから庭園を歩いてみた、真冬なので花や緑がきれいというわけにはいかないが、天気が良かったのでゆっくり散策できてよかった

そして最後にギャラリーの建物があり、中を覗くと、過去に開催された展覧会のポスターが展示してあった

ゆっくり鑑賞できた、この素晴らしい美術館が縮小して東京に移転するのは残念だ、東京に移った後は「作品、建築、自然」という3要素はどうなるのだろうか

35年にわたり素晴らしい環境でいろんな作品を展示してきた努力を多としたい、有難うございました


「MOTコレクション展」を鑑賞

2025年02月11日 | 美術館・博物館

東京現代美術館のMOTコレクション展「竹林之七妍、小さな光、イケムラレイコ、マーク・マンダース Rising Light/Frozen Moment」も鑑賞した、料金は「MOTアニュアル2024こうふくのしま」展の料金に含まれている

場所は現代美術館の一番奥の展示室、1階と3階がコレクション展になっている、チケットを提示して内部に入ると直ぐにホールがあり、壁の高い位置に白の50㎝四方くらいのカンヴァスに英単語が書いてあるだけの8つの作品があるのに気づいた、これはオノヨーコの「インストラクション ペインティング」という作品(1952-2015)であり写真撮影禁止作品だった、書いてある文字は、FLY, IMAGINE, TOUCH, WATER, Forget, Reach, Yes, Rememberだった

なぜ、今回目についたのか、それはこの作品がミュンヘンに行ったときに知った河原温氏の作品とよく似ているからだ、河原氏の作品は日付だけが書いてあった(こちらの11室展示参照)

いくつかの展示室に分かれて展示してあるので順番に観ていった、特に印象に残った作品を紹介したい

「竹林之七妍」展

新収蔵作品を中心にこれまで紹介する機会の少なかった女性作家7人に焦点を当てた展示、「竹林之七妍」とは、当館所蔵の河野通勢の作品名に由来し、俗世を離れて竹林に集い清談を交わす古代中国の7人の賢者が7人の女性に変えて描かれており、その7人の女性を今回展示する7人に重ねたものと思われる

高木敏子(1924-1987)
生誕100年、糸で織った作品を平面から立体へと展開してきた作家、京都西陣の機屋の生れ

間所(芥川)紗織(1924-1966)
生誕100年、作曲家芥川也寸志の妻、結婚を機に絵画を制作、染色の技法を用いる、彼女の絵は昨年行った東京国立近代美術館の常設展でも観た(こちらの8室展示参照)

福島秀子(1927-1997)
絵画を中心に制作した作家、映像作品「水泡(みなわ)」が印象的だった、それ以外では下の2点の作品だけが他と違った作風だったが印象に残った

漆原英子(1929-2002)
ドローイングやコラージュを制作

小林ドンゲ(1926-2022)
堀口大学と終生子弟関係、上田秋月「雨月物語」、エドガー・ア・ランポーの小説、オスカーワイルド「サロメ」等に着想した作品に特色

描かれている女性がなぜか神秘的で影がある、妖気を宿している、ただ、ワイルドのサロメの挿絵を描いたオーブリー・ビアズリーの絵よりは美女でセクシーだと思った

朝倉摂(1922-2014)
彫刻家朝倉文夫の娘、舞台美術家として知られるが初期には日本画も描いた

前本彰子(1957-)
巨大なドレスの作品が印象的、作品は女子供の手なぐさみだが、誰か人のために、心を込めて作ること、を重視した作品にしてる

「ちいさな光」展

オラファー・エリアソン、山本高之らの作品を紹介

山本高之の「Dark Energy:Tottori」が面白かった、40人の中学生を40個の段ボール箱にそれぞれ入れて行動させる、初めは自由に、その後2個、4個とテープでつないて行った時の動きが映像で流れている、それを観るとまるでカフカの「変身」に出てくる一匹の巨大な虫が頭に浮かんだ

展示作品が多く、じっくり見ていると時間が全然足りない、この日は1時間半くらい鑑賞したが疲れた


アーディゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」展を観た

2024年12月17日 | 美術館・博物館

アーディゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」展を観に行ってきた、チケット事前購入で1,200円、これで同時開催中の他の2つの展覧会も入れる

アーティゾン美術館は、2020年の開館以来、石橋財団コレクションとアーティストとの共演、「ジャム・セッション」展を毎年開催しており今回は第5回目、国際的なアートシーンで注目を集めるアーティスト毛利悠子とのジャムセッション、昨年の山口晃氏とのジャムセッションも観に来て面白かった(こちら)


(美術館HPより拝借)

主催者の説明によれば、「ピュシス」は、通例「自然」あるいは「本性」と訳される古代ギリシア語、今日の哲学にまで至る初期ギリシア哲学では、「ピュシス」が中心的考察対象となっていたそうだ、知らなかったけど

毛利悠子さん(1980年生れ)は、主にインスタレーションや彫刻を通じて、磁力や電流、空気や埃、水や温度といった、ある特定の空間が潜在的に有する流れや変化する事象に形を与え、立ち会った人々の新たな知覚の回路を開く試みを行っている、絶えず変化するみずみずしい動静として世界を捉える哲学者の姿勢は毛利さんのそれと重ねてみることができる、ということらしい、よくわからないけど

展示場所は6階のフロアー全体を使っていた、展覧会の入口の前に既に毛利さんの作品が2つ置いてある

入口を入ると登り坂の道になっており、インスタレーションと絵画が展示してある

そこを通り抜けると区切りのない広々としたスペースになり、いろんなオブジェというか作品が展示してある、光を発するものもあるので室内はけっこう薄暗い

毛利さんの作品は何かを暗示している抽象的なものが多く作者がそこで何を主張しているのかが全く分からない、作品番号だけが床や壁に書いてあるが、それを探すのが一苦労な作品もあった

作品名などの情報と簡単な作品解説が書いてある方がわかりやすいが、それをすると鑑賞者の自由な発想を邪魔すると作者は考えているのかもしれない、けっこう奇抜なものと感じた作品も多かった

絵画の方は藤島武二やパウル・クレー、マティス、モネなどが展示されていた、これが毛利さんの作品とどう結びつくのか、これもイメージできなかったのは私の想像力の貧弱さか、先日の古典音楽と現代音楽との時間を超えた共演(ランタンポレル)と同じような発想なのか、違うのか、芸術家というのは物事をちょっと難しく考えすぎなのではないかな

帰宅してからwebサイトを見て毛利さんの展覧会の説明動画があったのに気づき見てみると、次のように述べていて、やはりそうか、と思った部分も少なくなかった

  • 展示室にはなるべく壁を作りたくない、自分の作品は音、光、動きがあるので、すべての作品か共存する大きな景色を作りたい
  • 海の近くに住んでいたので、海岸でボーっとするような展示を作りたい
  • 会場全体を見渡せて、それぞれの動きが波のような感じるようにした(そういわれればそうかな)
  • 今年、モネが実際に海を見ていたところに行って、そこで撮影したビデオをインスタレーションの中に組み込んだ(それで海のビデオと波の音、その横にモネの絵画「雨のベリール」があったのか)

  • サウンドインスタレーションを作ってきたが、これは音を介して自然について考えたということかもしれない
  • サウンドインスタレーションとしてピアノやオルガン、雨の音が鳴ってたりして、この空間全体が一つの作品のように考えた(そう言われてみればそうかもしれない)、また、どこから音が聞こえてくるのか探しながら作品を体験してほしい
  • あまり説明を残していないし、順路もないので、自由に鑑賞して何か感じてほしい(やっぱりそうか)

同じく、帰宅後、彼女のホームページを見たら、過去の業績は素晴らしいものがあるすごい芸術家だということがわかった、彼女の業績を見ていくと「2016年、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館およびカムデン・アーツ・センターにてアーティスト・イン・レジデンス」、「作品はアシュモレアン美術館(オックスフォード)などに収蔵されている」とあるのを見てびっくりした

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館はサウスケンジントンにあり、私が訪問したロンドン自然史博物館と並んである博物館であり、アシュモレアン美術館は私が訪問した美術館だ(こちら)。アシュモレアンにある彼女の作品に気付かなかったのは恥ずかしい限りだ(多分、訪問時は展示してなかったと思う)、もっとよく事前調査して臨むべきだった

なかなか1回観ただけで理解できるような簡単なものではないということがわかった


英国ナショナル・ギャラリー常設展を観る

2024年12月03日 | 美術館・博物館

ロンドン旅行中にナショナル・ギャラリーに行った、何度か訪問したことがある美術館、入場料は無料、旅行準備中にwebサイトを見ると時間予約制になっていたが、旅行直前に予約なしで行けるように変更されたようだ、ただ、入口には行列が並び、セキュリティーチェックを受けないと入れない

ナショナル・ギャラリーに関し失敗したのは、訪問時にゴッホ展を開催していたことを訪問直前まで知らなかったことだ、こちらの方は有料の予約制で、渡英の少し前に予約サイトを確認すると1か月先まで「売り切れ」であった

今回は効率的に見るため、事前に観たい絵をリストアップした、ギャラリーのコレクション検索機能を使い、観たい画家を特定して作品名、展示室番号を書きだした、今回リスアップした作家は、ゴヤ、フェルメール、モネ、マネ、ルノワール、マティス、スーラ、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ピサロなどだ

さらにwebサイトでMust see paintingsとなっている作品を加えた、ダ・ビンチ、ルーベンス、ラファエル、レンブラント、ベラスケスなどの作品だ

展示室内はそれほど混んではいなかった、また、ところどこに椅子がある部屋があり助かった

今回驚いたのは写真撮影がOKであったことだ、ChatGPTで調べたら「2014年から美術館がより多くの人々にアクセスしやすい空間を提供し、文化的な体験を共有することを促進するための取り組みの一環」としてOKになったとのこと、これはもう世界的な潮流でしょう、日本の展覧会でもナショナル・ギャラリーの例などを出して出品者と交渉してもらいたい

今回改めて鑑賞した絵から素晴らしいと感じたものを少し紹介したい


(ルノワール、The Skiff)


(ピサロ、Portrait of Felix Pissarro、ピサロの三男の7才の時の肖像画)


(ゴッホ、Snowy Landscpe with Arles in the Barkground)


(モネ、Bathers at La Grenouillere)


(ピサロ、The Boulevard Montmartre at Night)


(フェルメール、A Young Woman standing at a Virginal)


(Peiter de Hooch、The Courtyard of a House in Delft)

絵画ファンなら是非訪問したい美術館の一つでしょう、出張で行く人も隙間時間に観に行ってほしい、金曜日は夜9時までやっている、Room 41から44までが印象派などの絵が集中しているので、時間がない人はそこだけでも見る価値は大きいと思う

良い絵が観れました


川越「山崎美術館」に行く

2024年10月24日 | 美術館・博物館

川越に行った際、嫁さんが前から訪問したいと言っていた山崎美術館に初めて行ってみた、場所は蔵造りの町並みの入口・仲町交差点にある、私はどんな美術館か何も知らずに入った

前回川越を訪問したときに昼食をとった鰻の小川藤の方から歩いていくとメインストリートに差しかかるところに山崎美術館の看板が見えてきたので、そこから中に入ると、受付があり、入場料500円を払う、館内は撮影禁止

蔵造りの建物があり、一番手前に和菓子作りの木型が飾ってある建物となっている、先ずはそこを見学、お茶席などで出される色彩豊かで複雑な造形の和菓子の木型がいろいろ飾ってあり、興味深く鑑賞した

そこを出て奥に行くと直ぐに美術館の本館とでも言うべき建物があり、靴を脱いで中に入ると、そこには橋本雅邦画伯らの日本画が展示してあった

美術館の説明では、「橋本雅邦画伯は、川越藩のお抱え絵師橋本晴園養師の子息にて、明治時代における我が国画壇の最長老。郷土川越の有志が集まり、明治32年に画宝会を結成し、雅邦の力作の頒布を受ける。山崎家4代目故山崎豊は、同会の幹事として画伯から受けた作品をすべて大切に保管し、これを子孫に伝承させたが、その後社会公益の為、雅邦画伯の誕生150年を記念し、昭和57年文化の日に山崎美術館を発足した」とある、美術館は公益財団法人となっている

雅邦は、

  • 狩野派絵師として腕を磨き、その腕前は狩野芳崖とともに、門下の二神足と讃えられた。
  • その後、フェノロサと岡倉天心との出会いが大きな転機なり、日本画に西洋の空間表現、光の効果、構図の要素を取り入れ、狩野芳崖と共に画壇の中心となる。
  • 明治22年に東京美術学校が開校したとき、日本画の主任教授となる。生徒の個性を尊重したとされ、横山大観、下村観山、菱田春草などが雅邦のもとから巣立っていった。また、若かりし川合玉堂も、雅邦の門下となり指導を受けている。

先日読んだ「日本の近代美術」(土方定一著)でも橋本雅邦のことが多く取り上げられていた、ただ、土方氏は雅邦の日本画を必ずしも評価してないようだが。

展示室は一部屋だけであり、展示作品もそれほど多くないが、これだけの作品をきちんと保存して公共の用に供しているとはすごいものだと感心した。

展示室を出ると座るところがあり、お茶と最中のサービスがあった、嫁さんと座っておいしく頂いているとき、係りの人と雑談になり、壁に山崎家の歴代の当主の名前などが書いてあったので、「山崎家というのは今は何をやっているのか」と聞いてみると、何と川越の有名な和菓子屋の「龜屋」の当主であるというから驚いた、知らなかった、出された最中も龜屋の亀の形をした最中だった

龜屋は天明三年(1783)の創業より 代々川越藩御用達の和菓子屋であり、最中やこがね芋が有名である。私も何回か買って帰ったことがある。係りの人に、龜屋に寄るならその狭い通路を行くと店に出ます、と言われ行ってみると、何とそこは仲町交差点にある龜屋本店の店舗であった、聞いてみると店舗奥の美術館は昔は菓子工場であったとのこと、それで和菓子の木型が展示してあったのかと合点した

明日から川越祭りなので紅白の幕が町全体の商店街にかかっていた、せっかく店舗にでたので、亀の形をしたどら焼きとこがね芋、豆大福を買って帰った

お疲れ様でした、勉強になりました


中井精也写真展「ゆる鉄絶景100」を鑑賞する

2024年10月07日 | 美術館・博物館

この日はゴルフに行った帰りに筑西市のしもだて美術館に寄って開催中の、中井精也写真展「ゆる鉄絶景100」中井精也が捉えた100の鉄道名景、を観ることにした、入場料はJAF会員証を見せて100円割引で500円、ゴルフの帰りに何回か立ち寄ったことがある美術館だ

この展覧会は、筑西市誕生と中井精也氏の人気ブログ「1日1鉄!」がともに20周年を迎えることを記念するために企画されたもの

中井精也氏は1967年、東京生まれ。12歳の時に鉄道写真に目覚め、大学卒業後は写真専門学校に通う。2000年に山崎友也氏とともに有限会社レイルマンフォトオフィスを設立。JR時刻表の表紙や西武鉄道のカレンダーなどを手掛ける。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。テレビにもよく出演しているし本も出している人気カメラマンだ

展覧会では、中井氏のライフワークであり、鉄道が持つ旅情やローカル線で感じるゆるい空気感をテーマとした「ゆる鉄」作品から誰もが息を飲むような鉄道絶景まで、宝物のような100の名景が展示されている

中井氏の写真をゆっくり鑑賞すると、

  • 日本のほのぼのとした田舎の風景の中に走る小さなローカル線の電車の組み合わせの写真が多く、観たあとほっこりした気分になった
  • 四季それぞれ、天気それぞれ、時間もそれぞれの組み合わせがあり、観ていて飽きない
  • 鉄道が中心になっている写真と、電車が景色の中にひっそりと埋もれるように映っている写真の両方があった
  • 大自然の中だけでなく、都会の路面電車など人間も多く映っている写真があった
  • 写真マニアではないので、どんな写真が良い写真なのかわからないが、被写体の鉄道自体をぼやかしてとっている写真もあって面白かった
  • この写真を撮るのはさぞかし大変だったろうな、と思う写真も多かった

展覧会は写真撮影OKだったので、いくつか良いなと思った写真の中から少し紹介したい


めがね橋に花開く銀河鉄道の夜(根室本線)


世界を魅了する第一只見川橋梁(只見線)


別寒辺牛湿原に伸びる一直線の鉄路(根室本線)


下町風情を残す三ノ輪橋停車場(都電荒川線)


青もみじのトンネルをゆく(叡山電鉄)


瀬戸内海を望む絶景駅(予讃線、下灘駅)

楽しめました


国立西洋美術館常設展にまた行く

2024年09月20日 | 美術館・博物館

都心に出かけて、細切れ時間ができたので、西洋美術館の常設展を観ようと思って、行ってみた、入場料は65才以上で無料、企画展は開催していない期間だからか、結構混んでいた

時間が限られていたので、順路の前半の宗教絵画的なものはパスして、印象派以降の絵画を中心に鑑賞した、ここは一部を除き写真撮影OKである

今日観た中で良いなと思った絵からいくつか紹介したい


ジャン=ジャック・エンネル、ノエツラン婦人の肖像、制作年不詳、背景の色彩のコントラストが素晴らしい


ベルト・モリゾ、黒いドレスの女性(観劇前)、1875年、モリゾは印象派の女性画家、マネの絵のモデルになっている、オペラ鑑賞に行く前の華やかに着飾る女性


カミーユ・ピサロ、立ち話、1881年頃、明るい色調と斜めの垣根が特徴、新しい農村のイメージを出している


モネ、しゃくやくの花園、1887年、木々の緑と赤い花のコントラストが素晴らしい


ブールデル、瀕死のケンタウロス、1911-14、画家であった清水多嘉示に衝撃を与えたブールデルの作品


ルノワール、木かげ、1880年頃、人物画がが多いと思っていたルノアールの風景画、まだ印象派に別れを告げる前の作品


モネ、波立つプールヴィルの海、1897年


マックス・エルンスト、石化した森、1927年、コラージュ作品が有名な作家、福沢一郎に影響を与えたと「日本の近代美術」(岩波文庫)に出ていた、先日訪問した国立近代美術館ではエルンストの新収蔵作品を紹介していた


ポール・セリュジエ、森の中の4人のブルターニュの少女(写真左)、1892年、色彩がすぐ横に展示したあったゴーガンの絵(海辺に立つブルターニュの少女たち、1889年、写真右)と同じだと思った


ボナール、働く人々、1916-20年頃、名高い画家の邸宅の玄関を飾る絵画、上空の雲が雷雲みたいだ、ベニスのような景色でもある


アンリ・ルバスク、窓、1923年、マチスの絵かと思った、色彩のコントラストのすばらしさ、Wikipediaによれば彼はポスト印象派でナビ派の影響も受けたという、ボナールとも親しかった

楽しめました、また来ます


東京国立近代美術館常設展を観る

2024年09月10日 | 美術館・博物館

竹橋にある国立近代美術館の常設展を観ようと思って行ってみた、入場料を払おうと500円を用意すると、チケット売場の窓口に「65歳以上無料」と出ていた、美術館に入ったところにある館内検札の係りの人に運転免許証を出して無料で入場したが、ホントこんな老人優遇はやめるべきだ、そんな金があったら現役世代の減税に回せと言いたい

常設展のある美術館は好きだ、一番よく行くのは国立西洋美術館だが、ここ国立近代美術館も常設展があったのを忘れていた、企画展に来るときに一緒に常設展も観るが、とても観きれない、時間があるときにゆっくり、何度でも観るべきだろう

常設展を説明するwebページには、「1952年の開館以来の活動を通じて収集してきた13,000点超の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展」と宣伝している

今期のみどころは、「4階5室では「シュルレアリスム100年」と題し、20世紀芸術における最重要動向の一つであるシュルレアリスムをご紹介しつつ、マックス・エルンストの新収蔵作品を初公開します。3階8室では、1950年代に脚光を浴びた芥川紗織の生誕100周年企画をご覧いただけます。2階ギャラリー4の「フェミニズムと映像表現」では、1970年前後を起点に、ヴィデオなどを用いた映像表現の重要な担い手となった女性アーティストをご紹介します」とある

順路は4階から始まって、3階、2階と降りてくるルートだが、とても全部は観れない、何回も来るべきと言ったのは、そのためもある、では観た順に、それぞれの部屋で良かったと感じた絵の一部を紹介したい

4階(1-5室 1880s-1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで)

1室 モデルたちの生誕・没後数十年


オスカー・ココシュカ、アルマ・マーラーの肖像、1912年

アルマはグスタフ・マーラーの妻、グスタフの没後、7歳年下の画家ココシュカと恋愛関係になるが、そのあとバウハウスの創設者になる建築家ヴァルター・グロビウスと再婚、ココシュカはショックを受ける、美しいとも怖ろしいとも見えるこのアルマの姿


ピエール・ボナール、プロヴァンス風景、1932年

9月20日から仏映画「画家ボナール ピエールとマルト」が公開されるそうだ、そんなこともあってボナールの絵をよく観ておこうと思った

2室 明治時代の美術


青木繁、運命、1904年

最近読んだ森村泰昌氏の「生き延びるために芸術は必要か」の中で、「海の幸」で画壇に大きな衝撃を与え、短時間で走り抜け、29歳で亡くなった青木を、年齢も故郷など似たものどうしの坂本繁二郎と対比して紹介していたので興味を持った(その時のブログはこちら)

3室 開発される土地


坂本繁二郎、三月頃の牧場、1915年

森村泰昌氏の本では坂本繫二郎の「牛(うすれ日)」を紹介していたが、この絵も同じ牛を描いたもので、本で紹介された「牛」とよく似ている描き方だと思った


木村荘八、新宿駅、1935年

4室 夢想と自由と―谷中安規の世界


谷中安規、夢の国の駅、1935年

彼の版画はどの作品も独特の雰囲気を持っている、素晴らしいと思った、光と影のコントラストのなかで、夢とも現実ともつかない幻想的な世界が広がる谷中作品、と紹介されていた

5室 シュルレアリスム100年


福沢一郎、四月馬鹿、1930年

3階(6-8室 1940s-1960s 昭和のはじめから中ごろまで、

6室 「相手」がいる


藤田嗣治、ソロモン海域に於ける米兵の末路、1943年

私は戦時中に戦意高揚のための絵を描いた藤田を責めない、国家の危機にあっては国家に貢献したいと考えるのは当たり前だからだ

また、美術館の説明の中には、「日本軍の残虐行為や迫害、捕虜に対する非人道的な扱いは、のちに東京裁判やBC級戦犯裁判などで戦争犯罪として裁かれました」とあるが、関心しない、戦時中の残虐行為はすべての戦争当事国であった、原爆投下や東京大空襲は明白な戦争犯罪である

8室 生誕100年 芥川(間所)紗織


芥川(間所)紗織、女(Ⅰ)、1955年


桂ゆき、ゴンベとカラス、1966年


川原温、孕んだ女、1954年

川原氏については後出参照

10室 アール・デコの精華/歴史の描き方


安田靫彦、保食神(うけもちのかみ)、1944年

2階(11–12室 1970s-2010s 昭和の終わりから今日まで)

11室 Lines and Grid


河原温、JUL 15 1970 Todayシリーズ、1970

昨年旅行したミュンヘンのモダン・ピナコーク美術館で観た唯一の日本人展示作品が河原温氏の同じような作品であった(こちら参照)、それが今回の常設展で、この作品だけでなく、他にも多く展示されていたのを見つけてうれしくなった(上の8室参照)、この日付だけの作品は奇異な感じを受けるが、「TODAY」という作品で1966年1月4日から始められた、その日の0時から書き始めその日のうちに完成させる、その日に河原が生きていたことを表す、その真正さは作品を表す箱の中に当日の新聞などが入れられていることで証明される

美術館で鑑賞しているとなぜか1時間くらいで非常に疲れてくる、集中して観れるのは1時間半くらいだ、この日は1時間15分くらいいて限界に達した、しかし、勉強になった、また来たい