テレビで放送された映画「かがみの孤城」を観た。2022年制作、監督原憲一、原作辻村深月。
直木賞受賞作家の辻村深月の同名の小説を劇場アニメ化したものである。日頃アニメはあまり見ないが、何かで読んでこの映画の評価の高いことを知り、観てみようとなった。
この映画の主人公は中学生の女生徒、こころ。学校で同じ女子生徒からいじめられ登校がいやになり自宅で過ごす日々が続いていた。
ある日、部屋にある鏡が突然光を放ち始め、その鏡に吸い込まれるように入っていくと、そこは別世界、湖の中にそびえたつ城の中であった。そこには同年代の男女6人がいた。小さい少女でオオカミの仮面をかぶった「オオカミ様」が出てきて7名の中学生に対して「この城の中に一つのカギが隠されている、それを一定の期限まで探し出した人は願いがかなえられる」と言う。
7名の中学生たちは戸惑う、願いなんかないよ、などと言ってカギを探そうとしないが、一緒に過ごす間にお互いのおかれた境遇がだんだんとわかってきて、みんな同じような悩みを抱えていることがわかってくると、仲良くなっていき、最後には・・・・
見終わってみるとなかなかよくできたストーリーだと感心した。いま、学校のいじめというのは一つの切実な問題で、子供や生徒がいじめで苦しんでいるとき、先生や親たちがどう対応すべきか、それを真剣に考えてないからこそ、最後に子供が自殺してしまうなどの悲劇が繰り返されるのだろう。そういった現状に対する取り組み方について一つの問題提起をしているのが原作であり、この映画なんでしょう。
自分の子供はそういうことはなかったので良かったものの、もし子供が登校拒否をしたらどう対応しただろうか考えさせられる。仕事で忙しくとても構っていられないから子供のことは妻に押し付ける、学校に文句を言えなどと言ったかもしれないし、自分だったら子供と向き合って状況をわかってあげようとしただろうか、などと考えてしまう。
学校に限らず、日本社会の中ではいまだにイジメ的なハラスメントが横行している。今朝も宝塚の問題がニュースに出てる。どうしてそうなるのかといえばいろいろ原因はあるだろうが、一つはこのアニメの中でも触れられているように、学校や会社や組織から抜け出すのが必ずしも容易ではないということだろう。軍隊などもそうだ。そういう状況では陰湿なことが起こりやすい。いやなら逃げる、それができるようになればいいのだが。それ以外にも、被害者が声を上げやすい雰囲気、周りが見て見ぬふりをしないことも大事かもしれない。
いずれにしても親や組織の上に立つ者がいかに感度をあげて気づいて、子供に寄り添ってあげるかが大事そうだが、これが簡単そうで難しいかもしれない。普段、普通にコミュニケーションが取れてる先生と生徒、親子ならそれもできようが、そうでないと急に寄り添えと言っても・・・。子供がいじめられた経験を持つ人が現在悩む親や指導者に助言したり、いじめを克服した人が自ら指導的立場になりアドバイスすることも効果的かもしれない。この物語の最後の方ではそういったことも大変うまいストーリーで描き出しているのが素晴らしいと感じた。
さて、この映画について、アニメの絵の制作者は特定の作家ではないようだが、街の景色や家の中などテレビを見ているのとほとんど変わらないほどのリアル感があった。素晴らしい技術だ。ただ、個人的な好みとしては主人公のこころの顔がどうもありきたり過ぎてどうかな、と思った。アニメで女子中学生と言ったら大体どのアニメでも同じような顔になっているような気がするのだがどうだろうか。
良い映画でした。