「アカシア~の。雨に。うたれて~この。まま~死んで。しまいたい~」
と、歌った関口宏夫人の西田佐知子は最初は浪花けい子という芸名でした、
この時はいまいち売れなかった、売れなくてよかったよ、浪花けい子は
なんば花月風だし、この歌詞のアカシアは針槐(ハリエンジュ・ニセアカシア)
のことです、槐(エンジュ)に似て5~6月に藤に似た白い房状の花が咲き
とてもいい香りがします、若い幹にはとげがあり、ハリエンジュの針の由来
はこれです、剛健で強い木です、成長も早く乾燥にも強く、荒地、開墾地で
も耐えます、花はてんぷらにして食べ、蜂蜜もとれます、若葉は山羊が好み
ます。但し花のてんぷらを食べ過ぎると鼻血が出るのでご用心。

「公園のある2本の木の話」
その老木は、坂を流れる川と神社と半導体工場のすぐそばの公園の中央に、若いハリエンジュの木と並んで植えられていた。
「わたしの知っている南の国にあるヤシという木はねえ、トラを使っておいしいバターを作るんだよ」と老木はいつものようにハリエンジュの若木に話しかけた。
ハリエンジュの木は「ああ!それなら僕も知っていますよ、ブラックマンボだか、ジャンボだかの息子がジャングルで散歩中に、次から次にトラに出会って、赤い上着や青いズボンやみどりの傘やら、底と内側がまっかなむらさきの靴やらを、命の変わりに差し出して、トラたちがそれぞれ、それを身につけて俺様が一番このジャングルで、かっこいいと自慢し合って、けんかになって、ヤシの木の周りをぐるぐるぐるぐる、追っかけあって、そのうちにトラたちはなんだか皆、解けてしまって、バターになるんですよね、それからマンボとジャンボと・・・・そうそう、ちびくろさんぼの親子3人で、ホットケーキという美味しいものを作って、それで、さんぼは169枚も食べちゃうんです。」とハリエンジュ。

「君は・・きみは詳しすぎるよ、だがそのとうりだ。」と老木はちょっと寂しそうに言いました。

「だって毎日のように、僕の足元にシートを広げる母子がいて、そのバター作りの本を広げては、母親に、読んで読んで~というんですよ、その子がね、何回聞いたっけ、5回いや7回だったかなあ、いやでも覚えてしまいますよ。」とハリエンジュ。
「あなたの足元はとてもいい日陰で、風も空気もおいしいですからねえ、私の足元には最近行儀の悪い犬が、おしっこを引っ掛けにくるぐらいで、誰も寄り付きやしません。」と老木はにがにがしく答えた。

「いやだなあ、そんなことはないですよ、それに僕がまだ小さかったころは、とても見事な、薄ピンクのきれいな花をその枝いっぱいに咲かせて、花びらが散ると、僕の枝や葉にその花びらが積もって、ぼくまでうきうきして、あなたの足元は飲めや歌えの大賑わいだったから、ぼくなんかその百分の1くらいの賑わいしかありませんよ。」とハリエンジュは、老木の機嫌をそこねたのかと思い、ちょっと持ち上げるように返事をした。
「いや、そりゃあ私にだって若いころはありましたがねえ、毎年、花の頃はなかなかの美しい枝ぶりに加えて、満開の花はこの辺じゃちょっと有名でしたよ。」とうれしそうに老木。

「しかしね最近は野良猫や散歩イヌや野良犬たちの休憩所に成り下がっていましてね、そこで、わたしゃ考えましてね、もしかして、わたしと犬さんか猫さんたちの組み合わせで、ほらそのマンボだかサンボの本のようにですよ、なにか作れるといいなと考えましてね、きっと評判になって、また皆が私の周りに集まるんじゃないでしょうか。」と老木。
「それはどうでしょうかねえ、それで何が出来るといいんでしょうかねえ」とちょっと意外そうにハリエンジュは言いました。

「そりゃあトラがヤシでバターなら、私は犬猫だからちょっと庶民的に、ラ、ラードなんかどうでしょうねえ」と老木。
「ラード・・・ですか?ふーむ、それならきっとこの町のラーメン屋組合があなたを重宝がって、もしこの公園から古い木を排除しようとする動きがあっても、反対運動の先頭に
たってくれると思いますねえ、わたしは。」とハリエンジュはちょっとその老木の考えにうたれて答えました。

「でもなんか、野良猫や犬たちではちょっと役不足じゃないですかねえ。」と老木が不安げに言うと「そりゃここはジャングルじゃないんですし、シマウマもぶち牛もアフリカゾウもいないんですから、でも大丈夫ですよ、私達樹木には特別な力が具わっているって、やっぱり僕の足元で、誰かが読んでる本に書いてありましたよ。」と、ハリエンジュは自信をもって言いました。

「特別な力ですか・・・どうもありがとう、あなたがいて私はとてもたすかっていますよ、もう花も咲かなくなって、栄養分も水分も地面から吸収できなくなってくると、毎日来年の春はここにはもういなくなっているんじゃないか、なんてついつい考えてね、でもあなたが隣にいてくれて、ここ何年も楽しく日々をすごさせてもらってますよ。」と老木は瘤だらけの幹と、乾いた枝をゆらし、そして続けて言いました。
「私はね、若く青々として、新緑も他のどの木にもまけない程、力強くて美しいあなたを見ていて、うらやみもしますが、それ以上に尊いとおもっているんです、そして、いとしいと思ってしまう、それでね、あなたの傍がね、とてもいい気分でいられるんですよ。」
「ああ、もう12時のサイレンが・・・工場の人たちがお弁当をもってやってきますよ」と照れくさそうにハリエンジュは言って、青々とした葉全体に気持ちをこめて大きな日陰を作ります、集まってくるお弁当族のために。
ハリエンジュは少し老木に対して後ろめたい気持ちになって、しばらく無口になりました。
夕暮れになって、人々のいなくなった公園の中央に、夕日に照らされた、大きな瘤だらけの桜の老木と、若葉を茂らせたハリエンジュの木がだまって立っています。
夜、星の出る頃になって、ぽつんと老木がつぶやきました。
「立っているのがあきあきしたよ、もう横になって、君の根元にころがって、若葉やふさふさとした白い花をとうして、あの輝く星達を眺めて見たいもんだ・・・それも、とても幸せな気分だろうて。」
星の輝く夜の公園は青くどこまでも深い青に沈んでゆきます。
(「ちびくろさんぼ」に捧げる 即興童話 るる作)
(西田佐知子ではなく、BEN E KINGの「STAND BY ME」を聞きながら
作ってみました、でも彼女のCDめっちゃ欲しいなあ。)
と、歌った関口宏夫人の西田佐知子は最初は浪花けい子という芸名でした、
この時はいまいち売れなかった、売れなくてよかったよ、浪花けい子は
なんば花月風だし、この歌詞のアカシアは針槐(ハリエンジュ・ニセアカシア)
のことです、槐(エンジュ)に似て5~6月に藤に似た白い房状の花が咲き
とてもいい香りがします、若い幹にはとげがあり、ハリエンジュの針の由来
はこれです、剛健で強い木です、成長も早く乾燥にも強く、荒地、開墾地で
も耐えます、花はてんぷらにして食べ、蜂蜜もとれます、若葉は山羊が好み
ます。但し花のてんぷらを食べ過ぎると鼻血が出るのでご用心。

「公園のある2本の木の話」

その老木は、坂を流れる川と神社と半導体工場のすぐそばの公園の中央に、若いハリエンジュの木と並んで植えられていた。

「わたしの知っている南の国にあるヤシという木はねえ、トラを使っておいしいバターを作るんだよ」と老木はいつものようにハリエンジュの若木に話しかけた。
ハリエンジュの木は「ああ!それなら僕も知っていますよ、ブラックマンボだか、ジャンボだかの息子がジャングルで散歩中に、次から次にトラに出会って、赤い上着や青いズボンやみどりの傘やら、底と内側がまっかなむらさきの靴やらを、命の変わりに差し出して、トラたちがそれぞれ、それを身につけて俺様が一番このジャングルで、かっこいいと自慢し合って、けんかになって、ヤシの木の周りをぐるぐるぐるぐる、追っかけあって、そのうちにトラたちはなんだか皆、解けてしまって、バターになるんですよね、それからマンボとジャンボと・・・・そうそう、ちびくろさんぼの親子3人で、ホットケーキという美味しいものを作って、それで、さんぼは169枚も食べちゃうんです。」とハリエンジュ。


「君は・・きみは詳しすぎるよ、だがそのとうりだ。」と老木はちょっと寂しそうに言いました。


「だって毎日のように、僕の足元にシートを広げる母子がいて、そのバター作りの本を広げては、母親に、読んで読んで~というんですよ、その子がね、何回聞いたっけ、5回いや7回だったかなあ、いやでも覚えてしまいますよ。」とハリエンジュ。
「あなたの足元はとてもいい日陰で、風も空気もおいしいですからねえ、私の足元には最近行儀の悪い犬が、おしっこを引っ掛けにくるぐらいで、誰も寄り付きやしません。」と老木はにがにがしく答えた。


「いやだなあ、そんなことはないですよ、それに僕がまだ小さかったころは、とても見事な、薄ピンクのきれいな花をその枝いっぱいに咲かせて、花びらが散ると、僕の枝や葉にその花びらが積もって、ぼくまでうきうきして、あなたの足元は飲めや歌えの大賑わいだったから、ぼくなんかその百分の1くらいの賑わいしかありませんよ。」とハリエンジュは、老木の機嫌をそこねたのかと思い、ちょっと持ち上げるように返事をした。

「いや、そりゃあ私にだって若いころはありましたがねえ、毎年、花の頃はなかなかの美しい枝ぶりに加えて、満開の花はこの辺じゃちょっと有名でしたよ。」とうれしそうに老木。


「しかしね最近は野良猫や散歩イヌや野良犬たちの休憩所に成り下がっていましてね、そこで、わたしゃ考えましてね、もしかして、わたしと犬さんか猫さんたちの組み合わせで、ほらそのマンボだかサンボの本のようにですよ、なにか作れるといいなと考えましてね、きっと評判になって、また皆が私の周りに集まるんじゃないでしょうか。」と老木。
「それはどうでしょうかねえ、それで何が出来るといいんでしょうかねえ」とちょっと意外そうにハリエンジュは言いました。


「そりゃあトラがヤシでバターなら、私は犬猫だからちょっと庶民的に、ラ、ラードなんかどうでしょうねえ」と老木。
「ラード・・・ですか?ふーむ、それならきっとこの町のラーメン屋組合があなたを重宝がって、もしこの公園から古い木を排除しようとする動きがあっても、反対運動の先頭に



「でもなんか、野良猫や犬たちではちょっと役不足じゃないですかねえ。」と老木が不安げに言うと「そりゃここはジャングルじゃないんですし、シマウマもぶち牛もアフリカゾウもいないんですから、でも大丈夫ですよ、私達樹木には特別な力が具わっているって、やっぱり僕の足元で、誰かが読んでる本に書いてありましたよ。」と、ハリエンジュは自信をもって言いました。


「特別な力ですか・・・どうもありがとう、あなたがいて私はとてもたすかっていますよ、もう花も咲かなくなって、栄養分も水分も地面から吸収できなくなってくると、毎日来年の春はここにはもういなくなっているんじゃないか、なんてついつい考えてね、でもあなたが隣にいてくれて、ここ何年も楽しく日々をすごさせてもらってますよ。」と老木は瘤だらけの幹と、乾いた枝をゆらし、そして続けて言いました。
「私はね、若く青々として、新緑も他のどの木にもまけない程、力強くて美しいあなたを見ていて、うらやみもしますが、それ以上に尊いとおもっているんです、そして、いとしいと思ってしまう、それでね、あなたの傍がね、とてもいい気分でいられるんですよ。」
「ああ、もう12時のサイレンが・・・工場の人たちがお弁当をもってやってきますよ」と照れくさそうにハリエンジュは言って、青々とした葉全体に気持ちをこめて大きな日陰を作ります、集まってくるお弁当族のために。
ハリエンジュは少し老木に対して後ろめたい気持ちになって、しばらく無口になりました。
夕暮れになって、人々のいなくなった公園の中央に、夕日に照らされた、大きな瘤だらけの桜の老木と、若葉を茂らせたハリエンジュの木がだまって立っています。
夜、星の出る頃になって、ぽつんと老木がつぶやきました。
「立っているのがあきあきしたよ、もう横になって、君の根元にころがって、若葉やふさふさとした白い花をとうして、あの輝く星達を眺めて見たいもんだ・・・それも、とても幸せな気分だろうて。」
星の輝く夜の公園は青くどこまでも深い青に沈んでゆきます。
(「ちびくろさんぼ」に捧げる 即興童話 るる作)
(西田佐知子ではなく、BEN E KINGの「STAND BY ME」を聞きながら
作ってみました、でも彼女のCDめっちゃ欲しいなあ。)