ビタミンB12欠乏ゾンビが少し遠くへ行った。すこぶる体調がいい朝だ。また少しきた。タイトルは郵便局。
昭和一〇年四月未明。瀋陽の郵便局で、局員が強盗に刃物で胸を刺されて、死ぬという事件が起きる。事件当時は客がひとりと、三人の局員がカウンター業務をしていて、郵便局長は奥の方にいた。公安(中国の警察)が近くにいた局員から事情を聞くと、「強盗は刃物を持って脅してただけで、十円札の束を受けとってすぐ走って逃げたよ」と言う。客は「読み書きがままならない人間と間違われることは不愉快だ」と発言して新聞に載ったことがある政治家だったけど、奥でもうひとりの局員とやりとりをしていて局長はすぐ公安に通報したため、誰も刃物が胸に刺さる状況を見てないようだ。政治家という物は読み書きがままならない人間に夢や希望の、幻を見せることが仕ごとの主体になる。読み書きが、ままならない人間がなにをおもしろいと感じるか考える役だ。下々の役人に指示や指令を発することもあるが、問題の人物とは必ず直接対話する。居合わせた政治家もそんなひとりであったけど撮影中の映画俳優みたいな雰囲気とは裏腹になにも見てなかった。ちなみに問題の人物は、なにかの作業をやっているふりや、別ななにかを考えているように見せて、一日をすごしている場合が多い。そんな彼のふるまいが、借り入れ超過の商店主が本代を、手変わりがある金貨と交換する動機になるのだろう。銀貨や銅貨でこと足りる手変わりを金貨にほどこした工芸品は、未来の世界で嫌われ者に、なるに違いない。読み書きがままならない彼らの霊魂は、金貨の手変わりとともに物価が上昇した未来で交流先を探して、未来の若者たちに踏みつけられる。女医に教えられた痰つばを、吐くときに彼ら自身も未来をかいま見ているのかも知れない。公安は古銭商の、棚の奥で、金貨のとり扱い方法を、学習している刷り立ての、珍番号紙幣のような気ぶんになって、政治家のスケジュールと、彼らとの対話方法を考えながら、たばこを吸った。三時間後に近くの飲食店で「十円札の束から抜いて支払いをしてる男がいる」と言う通報があって、駆けつけた公安が直径七㎝ほどの、アメジストの球体を、いじくっている男を逮捕する。公安が手帳をめくって三時間前の、事件の概要を確認して「刃物は」と聞いたら、男は「カウンターに捨てたよ」と答えた。公安は走り去る強盗がカウンターをすべらせるように、刃物を捨てて捨てた場面だけ見た局員が追いかけようとして、絶妙のタイミングでカウンターを越えた刃物が突き刺さったと断定する。
昭和一〇年四月未明。瀋陽の郵便局で、局員が強盗に刃物で胸を刺されて、死ぬという事件が起きる。事件当時は客がひとりと、三人の局員がカウンター業務をしていて、郵便局長は奥の方にいた。公安(中国の警察)が近くにいた局員から事情を聞くと、「強盗は刃物を持って脅してただけで、十円札の束を受けとってすぐ走って逃げたよ」と言う。客は「読み書きがままならない人間と間違われることは不愉快だ」と発言して新聞に載ったことがある政治家だったけど、奥でもうひとりの局員とやりとりをしていて局長はすぐ公安に通報したため、誰も刃物が胸に刺さる状況を見てないようだ。政治家という物は読み書きがままならない人間に夢や希望の、幻を見せることが仕ごとの主体になる。読み書きが、ままならない人間がなにをおもしろいと感じるか考える役だ。下々の役人に指示や指令を発することもあるが、問題の人物とは必ず直接対話する。居合わせた政治家もそんなひとりであったけど撮影中の映画俳優みたいな雰囲気とは裏腹になにも見てなかった。ちなみに問題の人物は、なにかの作業をやっているふりや、別ななにかを考えているように見せて、一日をすごしている場合が多い。そんな彼のふるまいが、借り入れ超過の商店主が本代を、手変わりがある金貨と交換する動機になるのだろう。銀貨や銅貨でこと足りる手変わりを金貨にほどこした工芸品は、未来の世界で嫌われ者に、なるに違いない。読み書きがままならない彼らの霊魂は、金貨の手変わりとともに物価が上昇した未来で交流先を探して、未来の若者たちに踏みつけられる。女医に教えられた痰つばを、吐くときに彼ら自身も未来をかいま見ているのかも知れない。公安は古銭商の、棚の奥で、金貨のとり扱い方法を、学習している刷り立ての、珍番号紙幣のような気ぶんになって、政治家のスケジュールと、彼らとの対話方法を考えながら、たばこを吸った。三時間後に近くの飲食店で「十円札の束から抜いて支払いをしてる男がいる」と言う通報があって、駆けつけた公安が直径七㎝ほどの、アメジストの球体を、いじくっている男を逮捕する。公安が手帳をめくって三時間前の、事件の概要を確認して「刃物は」と聞いたら、男は「カウンターに捨てたよ」と答えた。公安は走り去る強盗がカウンターをすべらせるように、刃物を捨てて捨てた場面だけ見た局員が追いかけようとして、絶妙のタイミングでカウンターを越えた刃物が突き刺さったと断定する。