むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㉜

2019-07-28 10:00:09 | 小説
 殺菌処理が不十分な食品は食べられない。タイトルはトランポリン。

 昭和一七年九月未明。香港で空き地に直径一五㎝ほどの、木の杭を高さ一mぐらいに、円形に約一m間隔で、一八本打ち込んだ空間の中央で男が、全身を強打して死んでいる事件が起きた。死んだ男は空き地を管理している会社の社員らしくて、杭の先端には金具が、ついた太いゴムがついていて、一か所だけトランポリンと思われる布がついている。公安(中国の警察)は死体のそばに、直径一〇㎝ほどの穴が三つあることに気づく。次の瞬間、穴から竹の棒が六mほど突き出してすぐ引っ込んだ。棒の先端はひっかかるように、ぎざぎざになっている。公安が近くに落ちている不審な鉄板をめくると、地下道の入り口になっていた。板張りの地下通路を進んで、杭の真下にたどり着くと、コンクリートでかこまれた空間に照明があって、一〇分おきに竹の棒を圧縮空気で押し出す装置がある。公安は電源を切って、「一〇分おき」と書いてある張り紙を押収した。公安は捜査本部を立ち上げて、犯行声明を待つ。公安は待っている間に、ピアノに似た古代ゲームを思いついた。まず金属製レールの上に溝が四〇個あって、レールの横に、木製の鍵盤が四〇個ある。鍵盤が動くと、溝にはまった木の玉がレールから落ちて、もうひとつの下りレールを転がって皿に集まる構造だ。鍵盤の長さが一五㎝ぐらいで、上に二㎝くらい残して軸がある。鍵盤の根もとにひもがそれぞれついていて一mほど距離を置いて、同じ構造の物。つまり鍵盤の根もとを引くと、相手側にある鍵盤の、前の溝にある玉が落ちる。二人で対戦して一回ずつ鍵盤を動かして、相手の玉を全部レールから落とす。玉は四〇個で溝以外の場所に置いてもいい。玉の直径が一.五㎝ぐらいで、鍵盤の幅が約二㎝。鍵盤のふちに当たると、溝にはまるから八〇回以内で全部落とせる計算だ。事件から二日後に、捜査本部に「世界革命集団」から犯行声明が届く。犯行声明は張り紙の文字と同じ筆跡で、次回の犯行予告も書いてあった。公安は予告があった空き地を張り込む。穴を掘る重機がやってきて、土を掘り返し始めた。公安が「世界革命集団か」と聞いたら、「そうだ。うちの偽装トランポリンがなにか」と言う。公安が「こんどは、なにをつくるんだ」と聞いたら、男は「高さ六mの塔に螺旋階段をつけて、最上段が地面まで落ちる『天国への階段』の基礎工事をやってる」と答えた。公安は男を逮捕する。男は「人が死んだことは知らなかった」と言う。