むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター⑱

2019-07-14 09:20:49 | 小説
 昭和一六年六月未明。天津の陸上競技場で、陸上大会の最中に熊が三頭乱入して、長距離ランナーがかまれて、死ぬという事件が起きる。熊は上げ底になっている観客席の、下の空間から次々と乱入して長距離走でトップを走っていたランナーが、ゴールの手前で向かってきた熊に襲われた。公安(中国の警察)は「野生動物のように体力を競い合うことは風紀上好ましくないことだ」と思いながら競技場の関係者に事情を聞く。関係者の話によると三年前から、観客席の、下の空間に、野生の熊が住みついて、近所の住民がえさを与えていると三頭に増えて大きくなったから、柵をつくっていたという。地もとで有名だったが大会の関係者は知らなかったらしい。それとは別に、昨日公安は重厚な思考描写が書かれた文学作品を読んだ。本のタイトルは忘れたが連続して幾層にも重ねて、記憶と思考が描写されていた。くどくどしい物体描写は、なくてもいいと感じたがそこだけ正確だ。つまり記憶と思考は前の文章を思い出したように書かれている。記憶のなかにおける物体描写もあるから読み返しても、手なおしのやりようが、ないのだろう。作者がなにかの痛みや苦痛を不必要な描写にしたためているとしか思えない。文学作品の思考描写は、読者にとってなんの利益を、もたらすというのだろう。父母の、兄弟である伯父のような人物となりうる作者が、読者の、人生の重要局面において「僕のだから」と言って、口をはさんできてもどの文章が、どう関係あるのか思い出しようがない。公安が「新聞の社説にはこういうことが、書かれてる雰囲気があるな」と、考えているとさっきの関係者が、新聞記者の取材を受けていた。記者が、なぜ競技場に熊が乱入したのか聞くと、「観客席が埋まると、外れやすくなる境界の板があったんだ。主催者が悪いよ」と言う。板が外れた観客席は、陸上賭博のブースがあって、丸太を引きずった馬と順位が上位だった選手の、競争のかけで観客が殺到していたようだ。記者がそれを関係者に聞いたら関係者は「知らない」と答えた。真相は「主催者が別な競技場で大きい丸太を使用して、人間ばかりが勝ったので、負荷が小さい丸太を用意して、それを確認した観客が馬に、かけるために殺到」だ。公安は死んだランナーの監督が、馬に勝つサインの、他に走り方で「逃げろ」というサインを使っていて、逃げられなかったと断定して監督に注意して、射殺された熊を毛皮の業者に引き渡した。