むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター⑫

2019-07-08 10:19:15 | 小説
 人工知能について考察してみた。まず素因数分解で3×素数という大きな数字が出てくることがある。これは因数3を別処理しないと同じ素数をまた計算することになってしまう。人工知能として質がいいのは新しい素数を計算しているときだ。タイトルは測候所。

 昭和九年九月未明。広州の測候所で、気温観測箱に所員が頭を突っ込んで、死んでいる事件が起きた。公安(中国の警察)は雨のなかで死体を調べる。公安は以前空気が薄い高度で繁殖して空中を、浮遊する「雨ふらし」という微生物を考えた。ひものような形状で水素を捕食して、酸素を排出する生物だ。雄と雌があって、どれかが交尾し始めると一斉に交尾を始めて、雨がふり出す。ふだんは丸まっていてひもみたいになって動き始めると交尾が近い。死体の状況は、木製のふたが、上下のスライド式で半ぶん開いた状態。だらりと下に伸びた両手が、地球を侵略しにきた異星人の触手みたいに見える。公安は小学生の、息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)の他に、時空をさまよう霊魂のような物が、関係している可能性を注意深く検証したが他の所員が、机の引き出しに入れてある手変わりがある金貨から発せられる微熱しか感じとれなかった。公安はその、三〇歳前後の所員から事情を聞く。死んだ男は気温を計測して記録する係だという。公安は小学生時代の、夏休みの研究課題を思い出しながら「他になにをやってる」と聞いた。その所員は「図書館の司書と提携して、天気に関する記述がある文学作品のデータベースをつくっています。電話代はかかりますが正しい気象観測のためです」と言う。公安がデータベースを見せてもらうと、最初に「明日天気になれよ」という映画のタイトルがあって、天気に関係があると思われる登場人物の、せりふが記録されている。文学作品の場合は文章を抜粋して、矢印を引いて考察がていねいに書かれていた。公安がさっきの所員に「動物や生物は天気と関係がないのか」と聞いたら、所員は高齢者が憑依した若者のように古風な雰囲気をかもし出してから「天気は人間の思いや考えで決まるんだ」と言う。公安が観測業務の方で、死んだ男が記入した記録を見ると、今日の気温が記入されていた。電話応対係の目が大きい女性所員に聞くと、好奇心に満ちあふれた表情で「あの人は杉花粉アレルギーでいつもマスクをしています」と言う。「私があの人を殺したんだけど」と言っているようにも聞こえたが、公安と関係のないことだ。公安は死んだ所員が前日に今日の気温を記入したため、気温を上げるために、温度計に息を吹きかけて、箱のなかに沈着していた杉花粉を吸引してショック死したと断定した。確かに天気は人間の考えで決まっているようだ。小学生の息子が「あの、女の人に殺された」と言っている。