土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

河内は深野池へ

2015-09-06 | フォト・エッセイ
<河内は深野池(ふこうのいけ、ふこのいけ)へ>

退屈な初秋の土曜の午後、地図を見ていて、寝屋川の脇に深北緑地と言う大きな非市街地を見つけた。15:30で東生駒から出かけるには遅い時間だが、明日からも防災訓話やCTスキャンなどスケジュールが積んでいるのですぐでかけた。見たことと帰宅後調べたことを記す。

近鉄けいはんな線新石切駅で下車。恩智川(おんちがわ)に沿って北へ歩く。この川は柏原市から発して生駒の断層の西側を山系に平行して北上する。玉串川、久宝寺川よりも生駒山系寄りで、山系を下る谷川の水を一手に集めてしばしば氾濫し、水害を起こした。若いころにそういう水害の記事を何度も眼にした。その後「調節池」という溢れる水を貯めこむ場所がとても多く作られた。消えた大きな遊水地に見合う多くの調節池が必要なのである。調節池といっても多くは地下に作られている。たとえば東大阪市の有名な花園ラグビー場は恩智川のすぐそばにあり、その一部分の地下も調整池となっている。
生駒からの合流

かくして恩智川は南河内から北河内に届くまで河内を貫き、まさに河内の川である。遠くの方に説明しておくと、河内というのは都市を取り巻く広大な半田舎で、東京でいえば狭い武蔵野市ではなく、埼玉県まで拡がる武蔵野のようなものである。

恩智川の夕方に近い川面を眺めているとV字型の波が幾筋も幾筋も遡ってくる。遠くからでも見えるほど大きく、また速い。橋の上で見ると一、二匹の巨大な鯉であった。大きな水音を立てて跳ねたのも鯉であろう。水に浮かんだ鵜がその波筋を覗きに行くが手出しできるはずがない。しかしどちらも汚れた川の強者である。川に沿って歩く間、繰り返しそんな波が見られた。
遡る鯉のたてる波

川は住道(「すみのどう」です)で北から来た寝屋川と合流し、京橋へ流れる。私は深北緑地が目的だから、今度は寝屋川を遡る。どちらの川も高い防潮堤で挟まれ、川面は橋に出ないと見えない。住道付近の「河内街道」沿いの古い住宅には昭和中期の雰囲気が残っている。
防潮堤には蔦が絡ませてある。これは匂いの良いテイカカズラ。

川が西へ湾曲するところで樹木群と水門が見えてくる。目指す深北緑地であることはひと目で分かる。池の名は深野池(ふこのいけ、ふこうのいけ)。この辺りは行政区が接近していて複雑である。緑地は大東市に属するが、四條畷市、寝屋川市、門真市が数百メートル以内の距離にある。ウィキペディアによると、昔はこの池は大阪デルタの形成以前の海の名残で、海は河内湖となり更に縮小して新開池と二つになって残存したものという。江戸時代には上に挙げた行政区や東大阪市までにまたがる大きな池であったらしい。(「深野池 新開池」で図像検索すると、むかしの複雑な水系や大和川付替えの地図が多く出てくる。たとえばこれ。関西の方にはおすすめである。)

なお偶然であろうが、新開池を新田開発したのが「こうのいけ」(鴻池善右衛門)であったのことは、「ふこうのいけ」とならべるとおかしい。新開池は開発されて消滅したようだ。


「野崎参りは 屋形船でまいろ どこを向いても 菜の花ざかり」
という歌が耳の底に残っている。この歌は東海林太郎で流行った野崎小唄と呼ばれるもので、僕の誕生の5年前の1935年に登場したという。しかし野崎駅付近を歩いてもめぼしい水路が見つからず不審に思っていた。今回、この深野池が後に寝屋川にまとめられる川を通じて、天満橋の八軒家浜に水路でつながっていたことを知り、長年の謎が解けた。やはり大阪の中心部から野崎観音に船で参ることができたのである。

公園内には野球、スケボー、マウンテンバイクなどのスペースが取られている。一角には蓮が植えてあった。むかしこの辺りで盛んであったレンコン栽培を忘れないためという。門真や寝屋川では、泥に身体をうずめ、足で探ってレンコンを採っていたという。(いまはこの泥まみれがあちこちで気晴らしとなっているようだ。「レンコン掘り 泥」ぐらいで画像検索して下さい。レンコンのありがたさがわかります。)
バイク・コース

大阪には緑の風景は少ないと感じていただけに、ここは貴重である。スケールは更に大きくなるが、東京の水郷と呼ばれる水元公園を思い出した。これらこそ親水公園である。近い街が飾り気のない四條畷や金町であり、存在が広く知られてはいないというあたりも似ている。海が残っていた大阪を偲ぶ土地としておすすめである。

その後気がついたのであるが、この寝屋川にはとんでもないものが住んでいるようである。ここを見られたし。
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1 コメント

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水元公園 ()
2016-08-15 13:39:03
東京の水郷、水元公園はひどい放射能汚染に曝されているそうです。http://wpb.shueisha.co.jp/2016/03/25/62842/
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