タイガー立石 賛
方舟は返り見に見えアララット
波動説つぼみふくらむ人しぼむ
しろがねの托卵すませ離陸する
念ずれば機体傾く雲の上
雲海の蹠にそっと触れてみむ (蹠=あうら)
龜泳ぐ萬年の浪引連れて
わらわらと水は踊って床叩く
石くれは水面にあづけ底寝する
円錐に二足歩行が消えている
雲据わり南瓜の色に山壊る (壊=くえ)
オイランがブラキストン越え温暖化
星を捕れ!夜空に竿を振り回し
クラインの壺に寄居虫消えてゆく (寄居虫=やどかり)
蚯蚓食む蟇は片手で口掻きつ
腰のばしひげ扱く蟻に憑依する (扱=こ)
輪切りより縦に割りたる夏野菜
赤色の残夏残像野に揺れる
毛髪の奥にひそめる転轍機
カンダハル漂う雲や腸切れて (腸=わた)
雪の野を独りごちつつ虎歩く
豈51号 (2011) 一部改
若くてまだ飛行機出張が少なかったころ、大阪空港で札幌行に搭乗した。同じ機内に、並んで座っている二人の同業者の友人を発見したので、彼らのところにおもむき挨拶をした。
一人は早朝というのに「お父さんの牛乳」と呼ばれたワンカップの酒を鞄から取り出してあおった。むろん国内航空エコノミーには酒は出ない。
もう一人は殊勝にも家族のために掛け捨ての生命保険をかけていた。
私は後ろの席から、二人を別の種類の畏敬の眼差しで見守っていた。
保険の方が、証書を握りしめて小さな声でなにかつぶやいている:「堕ちろ。堕ちろ。」
それでも、二人はお互いになんの干渉もせず、それぞれの世界に浸っていた。
スチュワーデスに荷の内容を聞かれて「ボムです」とふざけて、飛行機が引き返し、百万円取られることになった男の出現はずっと後のことである。
>
> いい句ですね。「永劫」という言葉が、遠く烟る蒼海の無限の広がりを伴って浮かんできます。
> そして永劫のなかの、ほんの一コマに、ぼくらが見る、さざなみのような夢と幻。
> 『雨月物語』の「夢応の鯉魚」を憶い出しました。
>俚諺から哲学的思索に満ちたポエジーを紡がれた力量に、脱帽です。
「雨月物語」:雨月妖魅堂 http://mouryou.ifdef.jp/
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%AC%E3%83%BC%E7%AB%8B%E7%9F%B3&num=100&rlz=1C1CHXU_jaJP567JP567&espv=210&es_sm=122&tbm=isch&imgil=hWxSvKiy8AKOYM%253A%253Bhttps%253A%252F%252Fencrypted-tbn2.gstatic.com%252Fimages%253Fq%253Dtbn%253AANd9GcSg4iVaPaj0ehjLccaI8rgPgWGIzMj6caAoij5urc_4liR9VY1f%253B609%253B372%253B2FXiSZpvFfi0iM%253Bhttp%25253A%25252F%25252Fblog.otooto22.com%25252F%25253Fmonth%2525253D200901&source=iu&usg=__WKTI5L0rEuHe78zbdqOOfzBtFJM%3D&sa=X&ei=00M-U5OXE8ekkwXnqIDoAQ&ved=0CLsFEP4dMGg#imgdii=_