土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

マルセイユ近郊の山

2015-03-28 | 随想
<マルセイユ近郊の山・ギャリグの景観>

雪崩れてる石灰礫より立ち上がるローズマリーは原産だろか

写真の山はピュジェ山(Mont Puget)と呼ばれ、海抜560mあまりある。プロヴァンスあたりの山はすべて石灰岩でできているようだ。セザンヌが描き続けたことで名高いサント・ヴィクトワール山は遙かに高いが同様の山である。私の友人数学者がイギリスから来てこの山の近くに居を構えている。この友人が大昔、埼玉で酒を飲みながら「自分の家からサント・ヴィクトワールが見える。一日のうちにいろいろ色を変えるので見ていると飽きない」と言った。石灰の灰白色は光線の加減と空気の介在でいろいろなニュアンスをおびるのであろう。

その言葉に惹かれて病み上がりの3年ほど前に、エクサンプロヴァンスにやってきた。むろん今回と同じマルセイユ近郊リュミニーで研究集会が行われたからである。家族連れだったから山に入ってはいない。もとよりこの頃も今頃も、1000mを超える山の頂上まで登る気はさらさら無い。

だがピュジェにしても登るには裂け目の多い大断崖が2段あるので、岩登りをしないルートを探さなければならない。(しないというよりはできない。)

一昨日少し登ってみた。しかし選んだ上っていくはずの路は次第にそれて、小さい丘に登ることになった。頂上近くにイノシシの新鮮そうな糞があった。気のせいか、詰まっている鼻にも獣臭い匂いが漂っていた。何を喰っているのだろうか。これだけでは物足りない。それの隣の同様の丘にも登ろうとしたが、路を見失った。ローズマリーやとげの多いアカシアのたぐいの灌木など、ちょっとした藪となっている。その上、雨上がりで木綿のズボンは膝から下はずぶ濡れ。やはりこういうときだけはウールがいいのであろう。そしてやはり石灰の崖に阻まれ頂上すぐ手前で断念。

少し下る広い路に出る。これを時計回りに進むとやがて本来のねらいであるピュジェに向かっていた。しかしコル(峠)のところは風が猛烈で、どんどん冷える。前に来た秋もそうであった。マルセイユの風は猛烈なのである。下の方の登りでは、シャツ1枚にでもなろうかと言う暑さだったのだが。ある程度は予想していたので、ユニクロのベストとド・クラッセの薄いブルゾンで首元まで閉めた。それでも手が冷たい。路の縁に出ると崖から吹き飛ばされそうである。帽子もとばされそうだからつばを握って歩く。頂上があと高低差100mぐらいかと思ったが、峨々たる岩で、文化人の私が路を離れて岩を登るわけには行かないのである。路は頂上方向からそれて山を周回するだけ。

そこで途中まで戻り、広い路の逆の反時計回りに巡ることにした。一段目の峨々たる断崖のテラスの上の路で、車が悠々と走ることができる。でもいくら歩いてもまた迂回するだけで、上がる路はなく、無理をするなと家族に言われているし、夕食の時間もあるので研究所に戻った。

負け惜しみではないが、岩を見て初めから頂上に行けるとは思ってなかったし、2度と来ることのできない土地を見るのが目的だったのでこれでいいのだ。


ネットで暇をかけて見ると、山のまわりの私がうろうろしていた路は山を取り巻いており、見落とした急登する道と、歩き残した1/4ぐらいのところの頂上への尾根道の二つの頂上への道があるようだ。そして私が到達した高さ、実は400mも行ってなかった。


写真は順に
一段目のテラス状の平坦地から二段目頂上を望む。転がっている岩も大きいのですよ。
蔓になりたがっている植物。
簡単には倒れない石灰岩の柱。
イノシシの落とし物。
ローズマリー、これが実に多い。プロヴァンスの料理はハーブをきかすようだ。
とげの怖そうなアカシアのような花。
ミツバチの巣。マルセイユの街ではアカシアの蜜などを売っている。
雲のように見える海上の島。

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