Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

CERIATONE CENTURA

2019-07-18 13:55:22 | PEDALS

 80年代中盤からのブルースブームの再燃から当時、巨匠たちが使用していたチューブアンプにも再注目されたのが80年代も終わる頃、小さな工房からや大手メーカーがこぞってチューブアンプのリイッシュに着手した同時期にオリジナルのケンタウルスは開発されました。当時、歪系ペダルは大手メーカーなどのハイゲインペダルが主流で今でこそ一つのジャンルになったブースター的ローゲインペダルは少数しか存在しません。また、チューブアンプ自体も大型化しプリがチューブ、パワーはトランジスタというハイブリット型が主流になっておりそのどことなく冷たい割れるようなクランチに満足しないギタリストは多かった状況です。開発者のビル・フェネガンも手持ちのフェンダーアンプをホットにするためにケンタウルスを作ったらしく当時の機材環境の影響が大いに関与していたようです。90年前後の大手メーカーからのビンテージリイッシュアンプも50~60年代当時のモノとはかけ離れたソリッドステートの歪でしたのでツイードやブラックフェイスフェンダーのシンプルなチューブディストーションを手軽に再現できるペダルを求める声は確実にありました。

さて、伝説的になってしまったケンタウルスですが万能な歪ではなく実際は意外と難しいオーバードライブ。キレイな倍音は少なく一台で完結できるペダルではありません。チューブアンプの飽和状態はキャビネットやスピーカーユニットやパーツのコンディション等で様々なので実は雑味や奇数倍音が豊富なのです。故に太くドライブしてくるのです。そのあたりもケンタウルスはアンプ的な肌触りを感じることが出来ます。

ケンタウルスはアンプの前段に配置しコンプレッションを適度に加えトーンを滑らかに修正するのに最適。しかし、あくまでもブースターではないミッドレンジにボリュームを持たせたオーバードライブです。最近のハイエンドローゲインペダルやブースターのみずみずしいコード感は素晴らしいのですがシングルノートは平たんになってしまう傾向にありますがケンタウルスの力強いミッドレンジのシングルノートはギタリストを虜にしてしまう魔法があります。しかし、ミッドブーストの歪を目的とした当時のオーバードライブとは明らかに別物でそのシングルノートはディストーションだけでなくクリーンを太く肉付けするところはケンタウルスしかありません。クリーンブーストといっても音量だけを上げるのではなくピッキングのアタックにまとわりつく小型チューブアンプの飽和寸前の太い倍音が完全にオリジナルなのです。チューブアンプのみならずJC等のスリッドステートアンプもチューブライクな質感に変えてしまう技も持ち合わせています。それは特殊なバッファーや内部で18Vに昇圧しているなどマニアックな仕様がそのトーンに関与しているのかは専門家にお任せしましょう。

オリジナルケンタウルスの実際の製造は1994年から2009年で終了し後継機種のKTRに移行しましたが現在もオリジナルケースで開発者が生産しているようです。価格は現在の中古相場と同額。それによってケンタウルスクローンなるもう一つのジャンルが登場し大手から個人製作家まで多様なモデルが存在するようになりましたがどれもオリジナルよりモダンで高品質、実用的で使いやすくわざわざ高額になったオリジナルケンタウルスを入手する必要ない程。

既にここまでくるとビンテージギター並な価格帯になった本家本元に拘るのがその外見だけになったような気がしますがそんな矢先に同じルックスの新商品がリリースされていました。マレーシアのクローンアンプ製造に特化したセリアトーンというメーカーからでた「センチュラ」。どうせクローンをつくるなら外見から手を付けないとと聞こえてきそうなルックス。このためにつくられたアルミダイキャストケースはかなり本物に迫っています。こだわりは裏蓋シールデザインや取説など細部にわたって作られています。表面塗装の質感は違いますがギターを持ってしまったイラストやネーミングロゴに笑いがこぼれます。基板も忠実に再現されていてパーツ違いがあっても線材の色まで同じ、違いは樹脂で基板をマスクしていないくらいです。このふざけた感が今までのクローンモデルには無かったわけでシャレで購入してみようとするオジサンも多いでしょう。サウンドはシャレではなくオリジナルとほとんど同じというのがこれまた驚き。なんのヒネリも加えないそのまんまのクローン。ケンタウルスと比べると重箱の隅的な違いでオリジナルのほうが若干ザラつきと高い周波数のトレブルが混ざりローゲインでもザックリ感を感じますがアンプや別のペダルが混入すると判別不能なレベル。ノブの位置とエフェクトのかかるポイントまで同じようになっています。定番のクリーンブーストは滑らかで健在です。

同じモデルの自作バージョンもあるのでケースはケンタウルスで中身はファズフェイスなんていう冒険もできますね。


Sweet Honey Overdrive HW

2019-06-30 20:46:18 | PEDALS

名機の再確認です。クローンは使用していましたが本物は忘れたころにやってきます。フィンランド製マッドプロフェッサーのスウィートハニーオーバードライブのハンドワイヤードモデル。ギタリストのマニアックな部分のピンポイントに絞ったようなオーバードライブ。あくまでも個性を主張せずギターやアンプのキャラクターのオイシイところを肉付けするようなペダルで最もローゲインな部類に入るかもしれません。名前を聞いてもパッと歪の質感が出てこない代物。しかし、歪はブースター的ではなくしっかりオーバードライブでバッファを取っ払ったOD-1のようです。ミッドが落ちているホットケーキや盛上がったTSでもなくキッチリとフラットなのが抜群のチューニング。ダンブル系等との表現もありますがコンプレッションが少なくピッキングやボリュームのタッチに素早く反応するからなのでそう言われてかもしれませんがモチーフになっているのは小型ビンテージスプロアンプをドライブしたトーンという話もあり。どちらにしてもザラつかないクリーミーなトーンでコンプ感やサスティーンを付けるには下地のアンプのクランチ度合を上げる自然な方法がおすすめ。

キャビネットはズッシリと重い亜鉛ダイキャストで塗装はハンドメイド感がある粗い感じ。時期によってキャビネットのフォルムに丸みがあったり印刷が変更あったりと様々。次第に絶滅危惧種的なニュアンスも感じ取れるハンドワイヤードは絶縁目的のセロテープがワイルドです。プリント基板仕様の低価格バージョンもありますがゼンドライブ同様ハイエンド価格。

トーンノブ位置のフォーカスも高音調整ではなくハイミッドの調整がポイントで歪やトーンノブは全体の微調整の可変幅ですが他のアンプやペダルとのバランス調整にはかなりの大きいパフォーマンスを発揮します。ナチュラルでいながらシッカリとシングルノートのオーバードライブは太いというのも珍しいペダルかもしれません。ここにきてBOSS OD-1をリファインしたトーンに出会えるというのは既にネタは70年代から変化無いということです。

マッドプロフェッサーの他のペダルにも共通するのは、派手さは無いがそれぞれテーマがハッキリしているという音作りに頑固さを感じますね。


NEWキャビ

2019-06-24 15:49:13 | AMPLIFIERS

DVマーク用スピーカーキャビネットをいろいろと物色しています。王道のマーシャル1922はライブでは安定した出力が保てますが何せ重量がお手軽ではありません。セレッション12×2の宿命ですがこの容量があっていかに軽量化するかが今回のテーマ。フェンダーアンプに長年慣れてしまっているのでタイトな密閉キャビよりエアー感満載の後面開放キャビを見つけてチューンナップしていきます。珍しい後面バックパネルの上部が最初から無いタイプで様々なスピーカーユニットを取り付けやすくなっているようなキャビですが開放過ぎるので上部パネルを増設。イメージする雰囲気はブルースブレーカーのようなスタイルです。

キャビ重量を決定するものが搭載するスピーカーユニットです。最近はエミネンスのトンカーがお気に入りなのですが巨大なマグネットが軽く6.5kgオーバーなので今回はご遠慮してもらって4kg前後のセレッションやジャンセンも考えましたがエミネンスのネオジウムマグネットを使用した極軽量のLil' Texasを載せることに。ユニット総重量1.8kgの最軽量で余裕の出力100w。ハイスペックなビンテージをイメージしたトンカーよりモダンなディストーションの重心の低いトーンがいい感じです。1発で十分な音量と軽量化を実現した素晴らしいユニットにやっと出会えた感じです。

さてこのエミネンス「Lil' Texas」パトリオットシリーズは付け加えたようなトレブルが無くビンテージを全く意識していないところが潔くて太いトーン。下地になるクランチがドッシリしてペダルでブーストしてもミッドレンジが暴れません。ローミッドのエアー感はこのくらいの容量のキャビになれば1発でも十分に出力されます。マーシャル2061Xでもトレブルが刺さらない理想なマッチングはこれから出番が多くなりそうな予感。ソリッドステート、チューブどちらにもうまく混ざり合うスピーカーです。

キャビ内のスピーカーケーブルはお気に入りのLAVAケーブルのTEPHRA。合計8本の線材の加工で手間がかかりますが原音のダイレクトさは癖になるほどです。マーシャル伝統の大型コンボアンプスタイルのキャビネットですがロゴのサイズが合っていないところが若干カスタム風。キャビネット総重量12kg弱の軽量化に成功です。

アンプを探求していくとやはりスタジオでバンドアンサンブル上でのパフォーマンスが重要になります。しかし、歴代のビンテージアンプはその物量とトーンが比例した結果出来上がった音なのでスタジオで普段使いが難しくなっていくのが現実です。車両があっても普段からストレスなくスタジオに持込可能なアンプ重量は13kgというのが現実的なボーダーラインでしょう。コンボアンプの基準、ツインリバーブの重さは今になっては時代遅れですね。メーカー的にはあまりお勧めしないと思いますが一瞬で4kgの軽量化を図れるネオジウムマグネットのスピーカーユニットを使用する方法もアンプチューンナップの一つです。


Zendrive 再検証

2019-05-29 10:45:06 | PEDALS

約9年前にも書きましたがゼンドライブを再度検証してみます。2000年代初頭から海外サイトや個人輸入等の不安定な流通でしか入手出来なかった代物ですが2010年以降製造を「lovepedal」に委託し楽器店で容易に入手が可能となりました。現行品はプリント基板を用いてますが販売価格はハイエンドのまま。この個体はHermida Audio Technologyで生産していた2006年製。ハンドワイヤリングで基板にモールドをかける当時の個人製作のお約束が施されている初期のバージョン。現行品とはパーツの違いがあるので若干の音の違いはあるでしょうが基本的にはスタンダードモデルは同じ音がします。トーンの立ち位置も濃厚なミッドレンジのTS系とチューブアンプを飽和させたブースター系ペダルの丁度中間。あるようでなかなかないトーンがスタンダードとなっている由縁でしょう。ロベンフォードが長年使っているためダンブル系なんて言われていますがコンプレッションが緩くギターのボリュームの反応が早く、クランチ設定のアンプのトーンに影響を与えないでブーストできることが特徴です。

ゼンドライブが持っている絶対的な基本トーンがあるので幅広い音作りは出来ませんがギターとアンプに合わせるための微妙なトーン設定がこのToneとVoiceで行います。ミッドハイのキャラクターをハッキリさせるVoiceでシングルコイルとハムバッカーの倍音の設定をすればどちらのギターも同じ質感の歪が得られます。ジャンルや楽器、機材をある程度限定してしまいますがその使えるおいしいトーンに確実にヒットするみずみずしい倍音が手放せなくなる理由です。ブースター的に作動もしますがあくまで歪の質感はシングルノートに勢いをつけるオーバードライブです。そこのミッドレンジに巻き付くザラツキは音は違いますがホットケーキやケンタウルス等に通じる癖が感じ取れます。そこの独特の癖が無いのがJanrayやBBpreampでコードのグラッシー感は最高なのですがシングルノートの太さが足りません。微妙なところでコンプ感も欲しいしダイナミクスも付けたい、ギターのボリュームでクランチ、クリーンまで再現したいとオイシイところばかり欲しいというときに抜群で強くピッキングしたときの倍音の纏わり方が実にアンプライクで安心感に包まれるのです。全体的に味付けや個性は薄いですがアンプやギターのキャラクターを生かし手元のタッチで音質を変えられる優れものって意外と無いんですよね。

10年たって弾いてみてもやはり傑作ペダルでした。


アコースティックペダルボード

2019-04-02 11:57:26 | PEDALS

アコースティックギター側の段取りが整ったところでエフェクトボードの制作。アコースティックトーンをそのまま増幅したいのでシンプルにBOSSのアコースティックシュミレーターAD2が今回の主役。オカズにフィッシュマンのディレイ。最後にBOSSのヴォリュームペダルで調整といったところです。電源は昔からの定番、グヤトーンのAC102パワーサプライ。今回、ちょっとばかりヒネリを加えたのがARTのチューブマイクプリアンプ。ローコストで昔からのベストセラーですがコンデンサーマイクとPUの2系統で使用するときのファンタム電源供給を兼ねて仕込みました。しかし、ギターから直接インプットするとEMGのマグネットとピエゾマイクからの音をアコースティックなトーンに落ち着かせることが出来るのを発見。レコーディングでチューブプリアンプが重宝されるのがわかります。エレクトリックギターでチューブというと真っ先に歪ですがローパワーでのピエゾ特有のギラつくミッドからハイをナチュラルにマスキングする技もあるとは。チューブの許容範囲の広いところが再確認されます。問題はこのARTチューブマイクプリはパワーサプライからの電源では作動しません。専用のアダプターが必要なのですが真空管を作動させるので当然と言えば当然なのですが。ギターからのインプットをBOSS・AD2にしてアンプに送りコンデンサーマイクをチューブプリ経由で別にPAに送ることも可能です。

フィッシュマンのAFXディレイもアコースティックギターに特化したものなのでエレクトリックギターで使用されるディレイとは質感がかなり違います。クリアというかラックタイプのディレイに近い感じ。残響が分離され過ぎてシングルノートのリードディレイに引っ掛かりがあります。フィードバックを下げ気味に使うのがいいかもしれませんね。

パッチケーブルはジョージエルス、プラグはモントルーブランドのソルダーレスブラスプラグですが日の出光機製作所のHKMプラグでしょう。このプラグが一番スペースを取らないのでコンパクトなペダルボードには最高です。作りやすさもソルダーレスプラグの中ではダントツですね。ブラスにコーティングを施しているようで扱いは良いようです。ブラスプラグは酸化してくると接触不良を起こす厄介なモノですが音が太く感じるんですね。たまに磨くという一手間がそのような気にさせますが、ブライトなストレート感はニッケルメッキにはかないません。

ディストーションやモジュレーション系がないので頻繁にコントロールする部分はボリュームペダルくらいなのですがボードで配置することによって接触不良やトラブルの軽減になります。バンドやスタジオでのプレイにはアコギといえども安心できる環境で弾くに越したことはありません。