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「君はいつか鍵を探してたら、隣室の女性が届けてくれたと言ってたな?
その鍵は替えてないね」
「そう、私が出かける時落としたのを大森さんが拾ってくれたの。
鍵はそのままよ」
隣の大森よしこは、佳世より年上のキャリアウーマンである。
ペットは飼っていない。
スリムな美人だが、愛嬌に乏しい人だ。
「俺な、彼女が怪しいと思う」
聖の言葉に佳代は目を見張った。
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大森よしこが自白に至る迄時間がかかった。
しかし、佳世のダイニングに落ちていた一本の髪の毛のDNAが決定的証拠になったのである。
その髪の毛は栗色で、佳世のものと全く違っていた。
それを聖が見つけたのである。
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よしこは好きな男と別れたばかりであった。
桃子と戯れる佳世の声は許せるが、男と戯れる佳世の声は絶対許せない。
偶然、鍵を拾った時合鍵を作ったの時は殺そうと迄思わなかった。
イタズラをしてやろうと思っていた。
早く別れて欲しいと心から思っていた。
それなのにあの晩、佳世にプロポーズする聖の声をはっきり聞いてしまった。
それから繰り広げた睦まじい様子にかっとなった。
毒薬は恋人と別れた時に入手した。
「その時死ねばよかった」と調書をとる刑事の前で泣き崩れたのである。