昭和48年、中東戦争が勃発、日本にもアラブ諸国からの石油の輸出は禁じられた。
日本での原油価格は三倍となり、折からのインフレも重なり物資不足の不安が襲った。
国民はパニック状態になってトイレットペーパーの買いだめに走った。
スーパーは凄まじい状況に陥った。
これが石油ショックである。
政府が行政指導を行った結果、パニックは沈静化したが、日本経済に遺した爪痕は大きかった。
この年に出版されたのが、五島勉著『ノストラダムスの大予言』だった。
中世の医者にして予言者、ノストラダムスの書き残した難解な書物を、五島勉が噛み砕いて説明したものである。
予言が現実化した事を述べた上で、人類の滅亡について警告している。
「1999年7の月、恐怖の大王が降臨する」
これが滅亡のサインだと言うのだ。
石油ショックの起こった年である。
いつ何が起きるか分からないという気分が満ちていた時、この本は大反響を呼んだ。
翌年にかけてベストセラーになった上に、映画にもなった。
人類の終末について、はっきりと時間を区切られて宣言されたのだ。
お咎めや注意は無かったのかと思うが、圧倒的な「それも有りか」という風潮に抑えられた様である。
私は疑いながらも、頭の隅に何時迄もこの予言が残っていた。
本当に人類滅亡なら一大事である。
しかし、1999年まで未だ26年の時がある。
未だ大丈夫という気分だった。
これが翌年という話であれば、発禁本にされたかも知れない。
其れ程危険性を秘めた予言なのだ。
トイレットペーパーの買いだめ騒ぎもそうだが、一旦極端な情報が流れると人々はパニックに陥り易い。
現実の1999年7月には滅亡の印も何も無かった。
ただ、世界が平穏だったとは言えない。
1990年代に日本でもバブルは崩壊、中東戦争が勃発、阪神淡路大震災が起きて、成長神話は一段と翳りを見せた。
そこにオウム真理教という危険なカルト集団が、一般市民の大量殺戮を企てたのである。
1995年の地下鉄サリン事件は未だ人々の記憶に残っているだろう。
このオウム真理教の終末思想が、実はノストラダムスの大予言に影響を受けていたのだ。
オウム真理教はポアと死を軽く捉えている。
終末思想も当たり前の様に受け入れられたら、かなり怖い結果になるのではないか。
人の命に限りがある。
しかし、個々のその時期がいつであるかは容易に分からない。
それと同じ様に、人類の終末の時期を今計る事は不可能だと思う。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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