妊娠してからの英美は、いかにも上品な奥様の雰囲気を漂わせていた。
英美の実家は家柄だったとか言うが、両親を久人が訪ねた時は、かなりみすぼらしい家に住んでいた。
服装だけはおしゃれな、没落した貴族の様な英美の父は尊大に構えていた。
いかにも、大切な長女を下々にくれてやる。
と言った様子を見せている。
そばに案山子の如く、英美の母と弟が控えていた。
しかし、内情は火の車で、結婚費用の殆どを久人が出した。
女に慣れない、騙し易い、一流企業のサラリーマンを英美が狙っていたのは確かである。
だらしない父の為、困窮していく環境で育った英美は何より贅沢が好きだった。
つまり、彼女が苦労して一流企業に入った目的は、贅沢をさせてくれる男を探す為だった。
いわば、久人はカモだった。
身籠った英美は、つわりで苦しむ日々、心配する久人に「刺身を買ってきて。それもXX屋の刺身をね。お願い」
とねだった。
忙しい勤務をぬって、久人は刺身を買い、英美に届けた。
愛しい妻と初めての我が子の為だった。
久人は必死に仕事に励んだ。
残業代を稼ぐ為、自分はインスタントラーメンで我慢した。
うたかたの夢の様なバブル景気の時代である。
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