読書の森

自由への遁走 その4



仮面夫婦の砂を噛む様な日々が続いた。
「この頃ちっとも愛してくれない!」
加奈子は能天気な愚痴をこぼしている。

無邪気な顔をしながら、朝田の日常をチェックして浮気封じに勤める。
遅く帰宅しても必ず出てくるご馳走を朝田はひっくり返しやりたい衝動にかられた。
即席ラーメンでも茶漬けでも、素顔の妻がさっさと作ってくれるものが食べてみたかった。

彼がそれとなく離婚を切り出すと、発作の様に起きる妻の攻撃は、ノイローゼになる程強烈だった。

こっそりと『完全犯罪』に関する本を読んではみたが、どう考えても夫が容疑者になる確立は高いのだった。



自殺を装うにしても、加奈子の性格からして自身を害するなんて真似が出来る筈はない。
動機のない自殺は疑わしいに決まってる。
事故死にすると言うのはどうか?
海外旅行に連れて行き、海水浴の間に溺れたと見せかける。

これも昔保険金殺人の犯人がやった手口と同じだと、気持ちが鈍った。

朝田は出張先の工場跡地を長い事見つめていた。
この側溝に妻が落ちたらとボンヤリ夢想してしまっていた。

不審の目で見られて、どうにか誤魔化したが、もう限界と思った。
仕事のモチベーションも低下し、毎日がまるで悪夢のようであった。

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