宮本輝は私にとって非常に身近に思える作家である。
年代が同じというだけでない。
『泥の川』、『蛍川』、『道頓堀川』、『錦繍』全て得難い作者との出会いだった。
「好きだなあ、どこか既視感がある世界だ」と感じた。
所こそ違え、幼い頃の経験に重ねられるものがあった。
その宮本輝が心を込めて編者となったの
この『わかれの船』である。
1998年に編まれたこの作品集は「人との別れ」の味わいがしみじみ伝わるものばかりである。
本日、いささかの郷愁を込め、
「別れ」について宮本先生を追って考えたい。
「心を静かにさせて、これまで自分の身に起こった別れというものを思い浮かべてみるがいい」と宮本輝は言う。
「別離のなかった人間など、ひとりとしていないのだ」
作家とは別れを味わう名人だと思う。
別れの文学がいかに多い事か。
「別れも人間という謎めいた船が暗い水面に残す波に似ていることに気づく」と宮本輝は比喩する。
つまり、何故別れたのかはその人しかわからない。
いや、その人自身もわからないのかも知れない。
謎めいた人間ドラマが別れだと思う。
思うに「出会い」があるから「別れ」がある。
別れがあるからこそ、その出会いが大切なものなのだと。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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