「哀しい別れというものを味わったことのない人間とは、おつきあいしたくない」
と宮本輝は父親から言われたそうだ。
「別れ」を連発して辟易とされた方もあろうが、人生の滋味が籠った言葉だと思う。
名作揃いの本著の中でも、私は宮本輝の『暑い道』と五木寛之の『夜の角笛』が特に好きだった。
ハーフの飛び抜けて綺麗な女子中学生に心ときめかす男の子4人。
高校生の時、彼女から快楽を教えられる。
それぞれ彼女は自分ひとりだけが好きだと思い込む『暑い道』。
かってのマドンナはどのような人生を辿ったのだろうか?
宮本輝ならではの大阪弁の世界がユーモラスである。
ひどく清潔感のある娼婦と交わった後、強引に彼女の家に押しかける旅のトランペット吹き。
彼はその世界では有名でチヤホヤされたが、全て虚しく、流離う人となる。
彼の消え失せた情熱が、元軍人だった彼女の父と会った事で蘇る。
女は病んだ父を養う為、身体を売る。
どうにもならない身を忘れたかの様に吹く父の喇叭。
輝かしい音色により、男は忘れたものを思い起こした。
五木寛之らしいさすらい人の世界を描く『夜の角笛』
いずれも、私にとって男性の生理の謎を明かしてくれるものだった。
まさに「出会い」と「別れ」は交錯してると感じた。
「会って別れる」という事は決して悲劇ではないと信じる。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
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