宮崎駿の思想集(2)

2011-07-31 16:30:31 | 大きなこと
・「この頃、ちょっとまずいんじゃないかと、職場の中にいても感じるんですよ。体験が、総合されていないんですよ。これは恐ろしい体験なんですけどね。

どういうことかというと、自分の絵なら描ける、それも結構上手に描く。だから試験に受かって、ここに入ります。だけど仕事は自分の絵を描くことじゃない。人の絵をとりあえず動かしたり、間に絵を入れたりしてやるわけです。そうすると、これまでなら、その絵の経験がちょっとそっちに生かされたりしながら、少しずつ経験が膨らんでくる。けど、全然それが総合されない人間が出てきちゃったんです。(中略)神経索がつながっていないんですよ。

(中略)

人間が日々経験していくことを総合していくことを総合して自分の中で膨らませていく能力というのは、もっと幼いときに、やるべきことをやりながら身につけるものなんですね。

木にぶら下がったとたん、「あっ、これ折れそうだからヤバイ」と思うことは、どこで覚えたんだろうって記憶にないですよね。「ここを踏んだら沈むぞ」とか、「ここはぬかっているから踏まないほうがいいな」というのは、いつの間にか覚えることですよね。それは幼児期に、たくさんの実際の現実と触れながら、失敗もしながら覚えたことなんです。それを近頃はやっていないんじゃないか。」(p23~24)





・「幼稚園で時を教えるなんて、もってのほかですね。これは亡国の徒ですね。自分の子供が字を覚えないで焦っているお母さんがいっぱいいると思うんですけど、字を覚えない、抽象的にものを考えない時代の方が、ものをじかに見ますから。ものの持っている性質や不思議さやら、いろんなことを発見するはずなんですね。

子供は向こうから来る自動車には気がつかないけれども、道の向こうに落っこっている輪ゴムには気がつくんですよ。それは子供の才能なんですね。それを輪ゴムを見ないで自動車ばっかり気をつけろというふうな教育をしていると思うんです。」(p24)






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