〈糸引きマフィン〉店主が謝罪告白「焼いてからの期間が長かったのが問題でした」…「オーガニックへのこだわり」「砂糖半分のワケ」「消費期限偽装の疑い」全部聞いた…店主名義で幼稚園に殺人メールの嫌がらせも
2023/11/16 19:26
〈糸引きマフィン〉店主が謝罪告白「焼いてからの期間が長かったのが問題でした」…「オーガニックへのこだわり」「砂糖半分のワケ」「消費期限偽装の疑い」全部聞いた…店主名義で幼稚園に殺人メールの嫌がらせも
(集英社オンライン)
国際展示場東京ビッグサイトで11月11、12日の両日で開催されたアジア最大級のアートイベント「デザインフェスタ」に出店した焼き菓子店の販売したマフィンを食べて体調不良を訴える人が続出し、厚生労働省がリコール対象事案として公表するなどの事態に発展。ネットやSNSでも“正義の拳”を振りかざす投稿で大炎上が止まらない。また、店には嫌がらせのイタズラ電話や無言電話がひっきりなしにかかり、店主の名前を騙ってまったく無関係の幼稚園に殺害予告のメールが届くなど、悪ノリで済まされない悪質な反応も続いている。集英社オンラインは憔悴しながら対応に追われる店主に複雑な胸中を聞いた。
「納豆みたいな匂いがするというご報告をいただきました」
問題の焼き菓子店は東京都目黒区にある「Honey×Honey xoxo(ハニーハニーキス)」。インスタグラムでは「全て防腐剤、添加物不使用で市販の焼き菓子の半分以下のお砂糖の量で作っており、離乳食完了期のお子様より安心してお召し上がりいただけます」と謳い、同フェスタに出店したことも投稿していた。
ところが同フェスタで販売していたマフィンを購入して食べた客から腹痛など体調不良を訴える声が続出、具材の栗が「納豆のように糸を引いている」と写真付きでSNSに投稿されたことなどから騒動に火が付いた。
問題のマフィンについて書き込んだ店主の山崎さんのインスタ
当初、店主の山崎さん(40)はインスタグラムで「今回、販売致しておりました和栗(4件)とチョコチップ(1件)、スイートポテト(1件)のマフィンから納豆みたいな匂いがするというご報告をいただきました。もし、納豆のような匂いがしたら食べずにすぐにLINEでご連絡をお願い致します。保管場所は18℃以下を保っておりましたが、外気温が高かったため何個か傷んでしまった可能性がございます。検品はしていたのですが、気付かず販売してしまい申し訳ございません」などとコメント。
しかし、体調不良や返金対応を求める声が続出し、店側が14日に保健所に連絡。これを受けた厚労省が15日、販売されたマフィン9種類約3000個について、最も危険度の高い「クラス1」のリコール対象にしたことを公表した。
3000個売られたマフィン(店SNSより)
クラス1は「喫食により重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る可能性が高い場合」とされ、毒キノコやフグ毒、また、腸管出血性大腸菌に汚染された生野菜などが分類されている。
安心を売るはずの店が安心できない結果を招いてしまった…
こうした経緯にホリエモンこと堀江貴文さんが動画配信サイトで「マジで怒りを覚えるね。何のために保存料があるんだ、と。スイーツって砂糖をたくさんいれることで日持ちがしたりとかするんで、それを半分にするってアホか<中略>子どもがこのマフィン買って、食中毒になったらヘタしたら死ぬよ?<中略>マフィン事件はマジで殺人につながっちゃうからね。本当、おまえら反省しろよ、マジで。オーガニック信仰のやつら。保存料使え。砂糖ふつうにいれろ」などと反応。
SNSやニュースサイトでは「『納豆のような匂いがしたら食べずに』なんて、元食品販売業者としては信じられない対応です」「離乳食完了期の幼児も食べられるそうですが、この危険思考でよく死者が出ませんでしたね…」などの批判が殺到し、出店を認めたイベント運営者の責任を追及する声も相次いだ。
一連の騒動が沈静化する気配もない16日、取材班は自由が丘からほど近い住宅街にある、同店を訪ねた。店頭にはうさぎの看板がかけられ、黒板にはイラストとともに「小麦・米粉・国産のものをしようさせていただいております」と書かれている。
記者がインターフォンを押すと、憔悴しきった店主の山崎さんが、携帯電話を手に店から出てきた。
目黒区内の店舗(撮影/集英社オンライン)
「昨日からずっと無言電話や恫喝めいたメールが絶えなくて…。でもお客さまの返金対応もしないといけないし、どうしたらいいか…」という店主から少しだけ時間をもらい、近所のファミレスで話を聞くことができた。
以下は「本当に、お客さまにご迷惑をおかけして申し訳ない思いでいっぱいです。本当にすいません」と何度も頭を下げる山崎さんとの一問一答だ。
――そもそもこちらのお店はどういう経緯で始められたのですか。
このあたりには小さなお子さんが安心して食べられる手作りのお店がなくて、縁あって6年ほど前にオープンしました。乳製品などのアレルギーを持った方でも安心して食べられるよう、リクエストにも応える形で進めてきました。
――安心を売るはずのお店が、まったく安心できない結果を招いてしまった。なぜこうなってしまったのでしょう。
昨日、保健所のかたが立ち入りにいらして話をお聞きしたのですが、焼いてから販売するまでの期間が長かったのが問題でした。マフィンは11月6日から毎日つくっていて、11日と12日に販売したのですが、時間があきすぎてしまいました
――1日に何個くらい焼き上げたのですか。
全部で3000個出したので、1日あたり500個になります。小さいお店で作り手は私だけですから、毎日朝7時から夜22時くらいまでかけて焼き上げました。デザインフェスにはこれまで5回出させてもらっているのですが、毎回このペースでつくっていました。
地元の目黒区内のスーパーでも販売され、人気があった(店SNS)
――1人でこれだけ作るのは、無理があったのではありませんか。
お客さまに「売り切れなの?」と悲しい顔をされるのが辛いので、量を増やしてしまいまいました。
――ふだんから利益はそれなりにあったのですか。
そうでもないんです。材料費が高いこともあり、本当に家族みんながギリギリ食べていけるかどうかの売り上げです。それこそ月によっては赤字のこともあります。純利益でいえば、多くて20万円ある月もあれば、2万円くらいの月もあります。
今後のお店の経営については‥‥
――ネットでは「味がうすい」という書き込みを見かけます。
味は薄いとおもいます。赤ちゃんにも食べてもらいたかったので。お砂糖の味がしないように極力使わないようにしてきたので。ただ、砂糖や塩には防腐効果がありますし、そこはこれまでも悩んできました。結果こうなってしまったのは私の責任です。
――なんで納豆のように糸を引くようなことになってしまったのでしょう。
わからないですが、栗が傷んでしまった可能性があります。栗は傷むとねばつきが出ます。また、他のかたからも指摘を受けましたが、販売当日は外気温が高く、会場内も熱気があったことも原因かもしれませんが、保健所の見立て通り、つくってからの日数が経ちすぎたことが原因だと思います。
取材に応じる山崎さん(撮影/集英社オンライン)
――オーガニックにこだわりすぎたことも要因でしょうか。ご自身の食生活もオーガニック、無添加にされているのですか。
誤解されてる方が多いのですが、たまたま「オーガニックダージリンクッキー」という商品を出しているので、そう感じられたのかもしれませんが、私個人は防腐剤の入ったものでも何でも食べてます。
――過去に消費期限を偽装したことがありますか? 消費期限のシールを黒く塗りつぶして日にちを書き換えていた画像がネットで出回っています。
あれは、私が商品をラッピングする際、古い期限のシールを間違えて印刷してしまい、梱包の際に気づいて慌てて書き足したものです。知り合いの弁護士さんに確認したら「商品そのものを偽装してないなら大丈夫」とおっしゃったのでそのまま販売していました。商品自体は偽装していませんが、誤解をまねいてしまいすいません、梱包も作り直すべきでした。
――今後お店はどうされるおつもりですか。
まだわかりません、まずはご迷惑をかけたお客さまへの対応をしていくつもりです。ただ、どうしても今回の件で厳しい批判の声や無言電話、イタズラ電話も多く、リコールなどのお客さま対応がなかなかできないのが現状です。
昨日は私の名前で面識のない幼稚園などに殺害予告のメールをする人まで出てきて、警察に相談したり、対応に追われました。商品回収も着払いで対応しようとしたのですが、警察から止められており、2転3転して申し訳ないです。私への意見もあると思いますが、購入された方への対応を一番にしていきたいので、ご理解をお願いしたいです。
記者が取材中も彼女の携帯電話への非通知の無言電話はやむことがなかった。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班