心が満ちる山歩き

美しい自然と、健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山と、時にはクラシック音楽や旅行のことも。

北アルプス・白馬岳(6) 頂上には現われない県境線

2021年01月27日 | 北アルプス


白馬岳(2,932m) ((5)のつづき)


 杓子岳からいったん下り、来た道を白馬山荘まで戻ります。
 富山県と長野県の県境線が、白馬岳頂上宿舎の近くでぷっつりなくなります。

 登山では、県境線をそのままなぞるように歩くことが多いので、自然に県境・市境に興味を持つようになりました。
 途切れている部分は、地図に物差しをあてて測ると直線距離で1km少しでした。白馬岳の頂上は、富山県と長野県のどちらなのか、まだ決まっていないことになります。もし確定すれば、ちょうど山頂を県境が横切るかもしれないし、すべてがどちらかの県に属するかもしれません。
 県境の途切れた部分から北西へ伸びている、富山県黒部市と下新川郡朝日町の境界線もやはり消えます。こちらはかなり長い区間途切れており、軽く10kmはありそうです。
 日本百名山で、頂上が県境の未確定部分にかかっているのは、白馬岳のほかには富士山だけです。日本でもっとも標高の高い場所が、何県なのか(山梨か静岡のどちらか)決まっていないというのは意外なことだと思います。
 富士山頂には二等三角点があります。2011年に観測された点の記を見ると、所在地の欄は「静岡県」と「山梨県」が両方書かれ、あとは空欄でした。一方、山頂のすぐ近くに建つ「富士山頂郵便局」(日本最高所の郵便局)の住所は、静岡県富士宮市となっていました。


 「~ 橇のスピードが速いのと向かい風とで、顔を横にそむけながら海氷上を橇を走らせていたところ、突然、左手の平坦なツンドラに一メートルほどの塔を発見。橇をとめ、そばへ行ってみると、それがカナダとアメリカの国境を示す塔であった。四角錘の青銅の塔と片側に「CANADA」、反対側には「UNITED STATES OF AMERICA」の文字が刻み込まれている。午後六時きっかりであった。 ~」
 「~ 国境をまたぐようにしてテントを張った。半分はカナダ領に半分はアメリカ領に入っている。一列につないだ十頭の犬も、五頭がすでにアメリカに入国し、残り五頭はカナダでこれからの入国を待っている。 ~」
 (『北極圏一万二〇〇〇キロ』植村直己(山と渓谷社))

 植村直己は、1974年12月から2年後の’76年5月にかけ、グリーンランドからカナダを経て、アラスカのコツビューまでを犬ぞりで走りました。ちょうど西経141度線上にあるカナダとアメリカの国境に達したのは、1976年3月21日のことでした。
 気持ちの昂ぶりがもの凄く伝わってくる一節です。これほど壮大な探検・冒険の中でも、境目というのはそれ自体が心躍らせるものに違いないと思いました。



 (登頂:2013年9月下旬) (つづく) 



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。