天狗岳(2,646m)
「~ 天狗岳は頂上が東と西の二つに分れていて、それぞれ東天狗、西天狗と呼ばれている。土地の者や登山者のなかには、前者を赤天狗、後者を青天狗と呼ぶ者もいるが、これは東天狗の頂上が鉄分を含んだ赤っぽい岩でてきているのに対して、西天狗の頂上が青あおとした偃松に包まれているからである。東のほうは、その東面にガラガラの壁を落した、ごつい岩の頂上。西のほうは、ふっくらと盛りあがった、土と偃松の頂上。
そのあいだを、すっきりと弓型にたわんだ、形のいい鞍部の稜線がつないでいる。八ヶ岳にはめずらしい典型的な双頭の山である。 ~」
(『八ヶ岳挽歌 続・随想八ヶ岳』山口耀久(平凡社ライブラリー))
二つのピークを持つ天狗岳は、「ふっくらと盛りあがった、土と偃松の」西天狗の方が東天狗より高いです。ただし、その差は僅か5,6mほどしかありません。高さはほとんど同じですが、西と東で違う表情の双耳峰です。逆に、鹿島槍ヶ岳のように、まったく双子のような双耳峰もあります。双耳峰にもいろいろな山があります。
「純喫茶」は、お酒がメニューにない「純」粋な喫茶店のことだそうです。八ヶ岳の山はどこも「純山岳」というか、山のことしか感じさせない雰囲気があります。
しかし、西天狗だけは山以外のものを感じさせる個性を持っています。根石岳から天狗岳を見た時の様子は、天狗の顔そのものでした。スフィンクスの石像が山になって、八ヶ岳へやってきたような形をしていました。
天狗岳は、趣味で登山を始めた年に登った山で、もう10年近く経っています。
茅野駅から桜平登山口までタクシーに乗りました。山道に入るとなかなかの悪路で、車の底を擦りそうだと思ってしまいます。そのうえすれ違いも頻繁にありましたが、難なく通過しました。
「当社の運転手は全員この道は運転できます!」とのことでした。
登山口から30分で夏沢鉱泉に到着しました。「マイクロ水力発電システム」の備えられた小屋でした。
沢沿いの道をさらに1時間登って、オーレン小屋です。木板に手書きの求人広告が出ていて、「ネパール研修アリ」と書いてあります。スケールが大きいです。小屋の天井には大きなランプがぶら下がっています。
昼食のカレーはとてもおいしかったです。さらに登って標高は2,400mを超え、夏沢峠に出ました。急坂もなく、すべて楽な道でした。この日は本沢温泉に泊まり、明日の朝またここに戻る予定です。
(登頂:2011年10月上旬) (つづく)