唐松岳(2,696m)・五竜岳(2,814m) (つづき)
夕食の後、毛勝三山の右にどっぷり落ちる夕陽を見ました。眼下には分厚い雲海が広がって、微動だにしません。太陽以外すべてのものがピタッと止まって、太陽だけが動いているという、印象的な夕陽でした。もし地球上の時間が止まったら、空はこのように見えるのでしょう。
いつもは、山小屋では陽が落ちてしまうと、お酒を飲むくらいしかすることがなくなります。しかし、この日は楽しみなイベントがありました。山荘の入り口に面白い掲示が出ていました。
「消灯頃の21:01~21:03に五竜山荘から国際宇宙ステーション(ISS)を観ることが出来ます。ISSでは現在、日本人宇宙飛行士 大西 卓也さんがISSでの長期滞在生活を送っています。
ISSは、地球を1周90分で回っており、太陽の光がISSの機体に反射することで光って見えます。ISSは太陽光が機体に反射する日没後2時間まで、または、日出前2時間しか観れませんが、今回は観測できる時間が短いもののISSを見つけるチャンスです。」
星空解説担当の方が来られているということですから、これはチャンスです。
五竜岳へ登ることがなければ、ISSが90分で地球を1周すること、また、大西さんという方がISSで活躍されていることも、きっと知らないままだったでしょう。9時前に山荘前の広場へ出ました。
9時1分にISSの光が北の夜空に現れました。9時3分には、光っていたISSの軌跡は、何の前触れもなく消えてしまいました。9時1分に現れること・3分に消えることの両方に理屈はちゃんとあるのでしょうが、何もわからないままの方が神秘的な感じがすると思うことにしました。ちなみに、ISSの軌跡はゆらゆら動いているように見えましたが、実際には一直線で、ゆらゆらするのは「気のせいでしょう」とのこと。
ISSが去った後も星空の美しさは続きました。冬の寒い日ならともかく、夏に星座を意識することなどまったくありません。しかし、五竜山荘の星空は美しく、星屑を散りばめたとはこういうことかと思いました。例え話ではなく、本当に空に星屑が散りばめられていました。
北斗七星のひしゃくの長さを5倍に伸ばすと北極星にぶつかり、さらに反対側に5倍伸ばすとカシオペア座が見つかりました。また、”冬の大三角”は覚えていても、”夏の大三角”が何の星座かはすっかり忘れていました。冬の大三角はほぼ正三角形ですが、夏の方は寝かせた二等辺三角形に見えました。
火星と土星が並んで、ギラギラ光っていたのも忘れられません。
この日は「ペルセウス座流星群」が活発に見られるとのことで、ずっと空を見上げていると1回だけですが、確かに流れ星を見つけることができました。時間は短く、1秒はなかったと思います。”流れ星に願い事を3回すると叶う”らしいですが、ペルセウス座流星群は見えてから消えるまでが早く、願い事には「冬の流星の方が向いている」とのこと。
それにしても寒いです。今日の昼間、暑くてバテそうになったのが嘘のようです。
「星空観察は寒さとの闘いですね。」
30分ほどで部屋に戻りました。とても想い出に残る山小屋の一夜になりました。
(登頂:2016年8月中旬) (つづく)