和の茶菓子は奥深い...2

2005-11-04 09:35:00 | 美味しんぼ話

懐石(会席)料理の献立メニューの最後には
口結び、水菓子などといって
軽めのデザート類が出される。
シャーベット、ジェラート、季節の果物(メロン・スイカ・葡萄ほか)など

日本料理には西洋料理ほどデザート類に趣向を凝らすものは少ないのだが
この料亭で出された最後の水菓子(茶菓子とするのが適切)には
単なるコース料理のしめくくりとしてともされる以上の
グレードの高さを感じた(感動した)ので
書き留めておきたい。

茶菓子全体のイメージは柿の羊羹に近い。
(ただ、パッと見では羊羹の類とはわからない)
主材料:干し柿(甘味の強いもの)、寒天、ゆず、ケシの実
(羊羹生地には甘味料が加えられているかわからない:砂糖・水飴・蜂蜜・和三盆・グラニュー糖などは殆ど添加不要なほど干し柿の強い上品な甘味が引き立っていた)

*以下のレシピは私の推測 <私は調理師免許を所持>
甘味の強い干し柿を裏ごししアンだねをつくり、戻した寒天とともに羊羹のベースをつくる。
流し缶に流し込み、あら熱がとれたら
①刻んだ干し柿の厚皮(果肉付きで蜜煮にしたもの)と②蜜に漬け込んで小さく切った(2mm×5mm )ゆず皮(煮込んでいないもの・フレッシュさがあったため)をムラなく散らし混ぜ込む。
固まった羊羹を流し缶から取り出し、ローストしたケシの実を上面のみに貼り付ける。
食すときに、拍子木サイズ(厚みは2cm以内)・長方形の1口サイズに切り分ける。
小皿にそれを2本、ずらし並べて出す。

目の前に出されたときは何モノかわからない。それも楽しみの一つだが...
一般的な羊羹より生地は硬めの仕上がり(濃度がある)
食して初めていろいろな風味や食感が味わい楽しめる。

まず1口食すと、上品で甘味な柿の風味が来る
「おっ、これは柿だ!」
次に生地のねっちりとした濃度と表面に付いたケシの実を噛みつぶすと こうばしい香りが口の中に広がる。
続けて噛んでいくうちに生地に入こんであった
刻み干し柿蜜煮のヌガーのような濃蜜な味覚と、フレッシュで
すがすがしい柚子のよい香りが相まって
「うッ、これはいい! 自然な甘味、そして... いい香りだ!」
なんとも至福の時を感じさせる。(あっぱれ!

熟成された干し柿のもつ甘味を使った(余計な甘味を加えない)茶菓子と
最後に出される高級緑茶をいただき
日本人に生れて本当によかったとつくづく思うのだった。

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追記:茶菓子の原点は干し柿にある。利休の時代、菓子には現在のような精製された砂糖はないので、干し柿の甘味こそが珍重された(茶の風味を殺さない控えめな甘味が茶人たちに受けていたようだ=わびの世界)。
画像:へ屋傳六さんの熟成干柿「川底柿」

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