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日本歴史紀行

歴史紀行 80 ‐ 3 腰越状 満福寺 3


満福寺
神奈川県鎌倉市腰越


満福寺は正式名称を〜龍護山 医王院 満福寺といい、真言宗大覚寺派の寺院です。

創建は奈良時代の774年、天平16年、時の帝〜聖武天皇の勅命で行基菩薩が建立したと伝わります。

鎌倉、西の出入り口として栄える腰越の門前として崇敬を受けました。





源義経が鎌倉入りを兄、頼朝から拒絶され、思いの丈を吐露した腰越状。

義経にとっては、一の谷以来の平家を滅ぼした
戦いは、一の谷は断崖絶壁から背後を衝いての奇襲。屋島の戦いは民家を焼き払い大軍に見せかけての襲撃で平家を海へ追い遣り。そして壇ノ浦の戦いは、海戦において、水夫、漕ぎ手といった戦いに直接関わらない者を弓で射るという禁じ手を使い形勢を逆転し、ついに平家を滅ぼしました。


父は同じとも、朝廷の表裏一体の権謀術数の恐ろしさ、人と世間の醜さ、浅ましさを伊豆の地にて身に染み込ませて生きてきた頼朝と、黄金の王国、奥州 平泉で太守、藤原秀衡という平清盛も一目置いてきた圧倒的な庇護者の元で育てられた義経には、決定的な違いがありました。


義経を戦場に放った後、梶原景時らから もたらされる報告に、戦場指揮官として、勝利のみを至上命題に突き進む義経への危うさを感じ取った頼朝は、ついに破局を迎えることになります。

頼朝の胸の内を理解できない義経が渾身の思いを込めて記させた腰越状を現代語訳にまとめました。





腰越状 現代語訳





源義経
おそれながら申し上げます。
気持ちは鎌倉殿のお代官の一人に選ばれ、天皇の命令のお使いとなって、父の恥をすすぎました。

そこできっとご褒美いただけると思ってい
ましたのに、はからずも、あらゆる告げ口によって大きな手柄も誉めてもいただけなくなりました。

私、義経は、手柄こそはたてましたが、ほかに何も悪いことを少しもしてはいませんのに、
おしかりを受け、残念で血が滲むほど、惜しさに泣いています。

あらぬ告げ口に対し、私の言い分すらもお聞き下さらないで、鎌倉にも入いれず。従って日頃の私の気持ちもお伝えできず、数日をこの腰越の地でむだに過ごしております。


あれ以来、ながく頼朝公の慈しみ深いお顔にもお会いできず、兄弟としての意味もなのと同じようです。

なぜ、かような不幸せなめぐりあいとなったのでしょう。

亡くなられた父の御魂が、再びこの世に出て来て下さらないかぎり、どなたにも私の胸の内の悲しみを申しあげることもできず。また憐れんでもいただけないでしょう。

あの川(木瀬川〜富士川の戦い)の宿で申し上げました通り、私は、生みおとされると間もなく父は亡くなり、母に抱かれて、大和国(現在の奈良県) 宇田(宇陀)の郡龍門というところにつれてゆかれ、一日片時も安全な楽しい日はなかったのです。

その当時、京都がつづき、身の危険もあったので、いろいろな所へ隠れたり、遠い国へも行ったり、そして卑しい人たちにも仕えて何んとかこれまで生きのびてきました。

忽ち(たちまち)頼朝公の旗揚げという目出度いおうわさ(噂)に、とび立つ思いで急いでかけつけましたところ、宿敵平家を征伐せよとのご命令をいただき、まずその手初めに義仲を倒し、次に平家を攻めました。

ありとあらゆる困難に堪えて、平家を亡ぼし、亡き父の御霊をおやすめする以外に何一つ野望をもったことはありませんでした。

その上 軍人として最上の高官である五位ノ尉
(検非違使〜けびいし、現在の警察庁長官の地位)に任命されましたのは、自分だけではなく、源家の名誉でもありましょう。

義経は野心など少しもございません。

それにもかかわらず、このようにきついお怒り
うけては、この義経の気持ちを、どのようにおつたえしたなら、わかっていただけるので
しょうか、神仏の加護におすがりするほかはないように思いましたので、たびたび神仏に誓って偽りを申しませんと、文書をさしあげましたがお許しがありません。

せめて、あなたの情けによって義経の心のうち、頼朝殿にとらせていただきたいと思います。

疑いがはれて許されるならば、ご恩は一生忘れません。

元暦二年五月
源義経    進上 因幡前司殿(大江広元殿)










義経 懇親の想いを記した腰越状ですが、大江広元により黙殺され、頼朝の手に渡ることはありませんでした。







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