遊びをせんとや

人生総決算!のつもりで過去・現在のことなどを書きます
といっても肩肘はらずに 楽しく面白く書きたいと思います

永井荷風#34『摘録 断腸亭日乗~荷風と戦争その4』

2024年03月06日 | 日記

 1940年 座銀通り(三越前)~摘録日乗には紀元2600年の記述は無い・・・と思う 

1940/S15年 荷風62歳
 9月に日独伊三国同盟 10/15 時局迎合の記事論説読むに堪えない
 昨日はここまで書いたので 続きを要約記述する

10/18 隣家の墺(オーストリア)国人 ナチスの旗と日の丸とを門に掲げる
 その子供が日本の学童と交り行儀が悪い(この間16行切取 以下欄外補)
 日本人の教育を受ければ 皆野卑粗暴になるのは この例からも明らか
 支那朝鮮に日本人が進出 亜細亜の人々に悪影響を及ぼすことが恐ろしい

10/24 (欄外朱書) 九段の人混みで16歳の女学生 掏摸で捕まる
10/29 (欄外朱書) 希(ギリシャ)が伊(イタリア)と交戦する
10/30 文学会への勧誘多くなる その滑稽拙劣な書面の一例を示す
 "本会は高邁健全な国民文学建設に全力を尽くし 文学の社会的認識を高
 め日本文学会の一元化を図りつつ新文化創造運動の一翼たらん(以下略)"
 荷風嗤ってこう書く~原稿書くことを辞めて 手習いから始めよ~

11/20 西銀座の商店主が語るには 西銀座だけで今年の徴兵170人
 程なく南京辺りへ送られる 壮年者の体力今年は著しく落ちている由
11/25 熱海の旅館では 外国人には外貨獲得のため できるだけ高く売れ
 と内務省から秘密の通達が出ていると聞く
 荷風~八紘一宇などの言葉はどこを押せば出て来る 臍が茶を沸かす話

12/17-20 風邪をひいて発熱 病臥して過ごす
12/20 数日前銀座で聞いた話を思い出して書く
 "東京市長になる者は大抵心よくない政治屋である 大久保留次郎(※1)は
某社が「中央公論社」に損害賠償を求め提訴する話を聞き 仲介料五千円を貰った 
永田秀次郎は ヤクザの親分を篭絡し多年私利を得た
これらのことは政治家にとって日常茶飯事という"
※1 第18代市長(S15~S17) ※2 第8代(T12ー13)第14代(S5ーS8)

・・・文字だけでは気の毒?だから写真も添える・・・


大久保留次郎                永田秀次郎

12/27 浅草オペラ館楽屋 踊子が「すみだ川」のレコードが出たという
 幕間に二人で買いに行く 表面「すみだ川」・裏面「高瀬舟」のレコード
 (高瀬川は荷風が私淑する森鴎外の原作であることから)
 誰がやったことか 驚くべき悪戯と書いている

・・・これも当時の録音で・・・
 「高瀬舟」

  「すみだ川」

12/31 ・・・今年最後の日誌は 締め括りで要約せず原文のままでゆく
 ただし原文は無改行だが ここでは適宜改行している・・・

今年は思がけぬ事ばかり多かりし年なりき。
米屋角屋、菓子など商ふものまた金物木綿などの問屋、
すべて手堅き商人は商売行立ちがたく先祖代々の家倉を売りしものも
尠からざるに、雑誌発行人芝居興行師の如き水商売をなすもの一人として
口腹を肥さざるはなし。
石が浮かんで木の葉の沈むが如し。
世態人情のすさみ行くに従ひ人の心の奥底、別に見届けむともせざるに
おのづから鏡に照らして見るが如き思をなせしこと幾度なるを知らず。
この度の変乱にて戊辰の革命の真相も始めて洞察し得たるが如き心地せり。
これを要するに世の中はつまらなきものなり。
名声富貴は浮雲よりもはかなきものなる事を見にしみじみと思ひ知りたるに過ぎず。
花下一杯の酒に陶然として駄句の一ツも吟ずる余裕あらば
これ人間の世の至楽なるべし。弥次喜多の如く人生の道を行くべし。
宿屋に泊り下女に戯れて恥をかかさるるも何のとがむる所かあらむ。
人間年老れば誰しも品行はよくなるものなり。

さて 来年1941/S16年は 太平洋戦争へ突入する

それでは明日またお会いしましょう。
[Rosey]