1943/S18年 荷風65歳
この年の日誌から 街談録・流言録・冗談剰語と名付けられた部分を紹介する
日付・箇条書き等は順不同 例によって超要約記述する
【冗談剰語より】
◆大東亜(共栄圏)とは何のことか
極東の替言葉である 支那・印度・赤道下の諸島が広いことは知っている
今更なぜ大か
Greatest in the worldなど 大をつけたがる北米人の癖だ
今どき北米人の真似をするとは滑稽笑止の沙汰である
◆東京府をなぜ東京都に変えるのか
何のためか意味不明 京都の東とか西とか言うように聞こえて滑稽
◆日本人が口にする愛国とは何か
田舎者のお国自慢である その短所欠点を口外してはならない
歯の浮くような世辞を言え
腹にもない世辞を言えば 嘘八百とわかっても 軽薄とは言われない
この国に生まれたら 嘘で固めて 決して心情を吐露してはいけない
富士の山は世界に二つとない霊山 二百十日は神風の吹く日
桜の花は散るから奇妙だ 楠と西郷は偉い偉いとさえ言っておけばよい
そう言っておけば押しも押されぬ愛国者である
以上 7月5日日誌より抜き書き
・・・荷風 端的に急所を突く 今時の政治家・役人・メディアら見習え・・・

敵性語抹殺を呼びかける記事~これ日本文化の一側面なり と荷風は書いていないが・・・
【戦争に関連する話題その1】~NHKアーカイブスにリンク~
▷戦費調達のためタバコの価格が値上される 替え歌特集?
▷「桃太郎の海鷲」 日本初のアニメ映画封切
【街談録より】
◇昭和12年~今年迄の日本の戦費を 支那軍戦死者の人数で割ると2千円
この戦争の愚劣さを推察するべし
◇山本(五十六)大将の死 北方での日本軍全滅の報に一部の愛国者が言う
「楠公の遺訓を実践したものだ」と
だが一国の興亡は 一時の勝敗と一将の生死で決まるものではない
自分の名誉と刹那的な感情で 多数の兵卒を犠牲にするのは利己主義だ
◇突然実施の徴用令 犠牲となった人々の悲惨な話は聞くに堪えない
軍需工場の職工などが多く 苦役で病死 負傷して廃人になる者も多い
3か月の訓練中は日給2円 一人前でも120、30円止まりと言う
この戦争は奴隷制度の復活である 軍人のみ大東亜共栄圏の美挙という
【戦争に関連する話題その2】~NHKアーカイブスにリンク~
▷学徒出陣(6分頃から それ以前は米軍撮影の南太平洋海戦のフィルム) ^
【流言録より】
◇或る日 貨物自動車が馬車と衝突 白米2俵が路上に散乱
巡査が見咎め運転手を尋問する 山梨県警察部長の東京転勤の荷物の由
これにより山梨県知事以下の役人らの 国禁の白米を横領した事が露見
関係者は南洋や満州に左遷されたが公罰は無く 秘密裏に葬り去られた
【戦争に関連する話題その3】~NHKアーカイブスにリンク~
今日はここまで 次回は1944(S19)年へ
それでは明日またお会いしましょう
[Rosey]