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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第7章−6 輪廻の蛇ウロボロス

2018-10-15 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 アストロラーベが、実は・・・・・・と説明しようとした時だった。
 再び、彼らの目の前で時空間がゆがみ、裂け始めた。
 星空が消え去って、景色が真っ暗になる。ガリガリと切れ味の悪いナイフで無理やりに扉を切り裂く音がして裂け目が渦巻くが、今度、吹き出してきたのは生暖かい風だった。
 その中央では、巨大な二匹の蛇が絡み合いのたうち回っていた。
 一匹は、かつての伝説の魔人スネール。黄色い瞳は見るものを金縛りにし、頭に龍のような鶏冠が2本生えており、アゴの下に前垂れが垂れ下がっていた。獰猛なワニのようなキバがびっしりと生えたアゴは、耳まで裂けている。
 もう一匹の蛇は、真っ青な瞳に、頭に道化師の王冠をかぶり、赤い下をチロチロさせている。これこそ精神世界でスネールと合体した、かつてのさかさまジョージの変化した姿であった。
 マクミラが驚きの声を上げる。「この波動はスネール! いや、さかさまジョージ? 両方が混ざり合ってる。いったいこれは・・・・・・」
 眼前でのたうち回る二匹の蛇のただならぬ雰囲気を感じ、キル、カル、ルルがジュニベロスに変身してうなり声を上げる。
 アストロラーベがスカルラーベに声をかける。「将軍殿、トリックスターだ! マクミラとミスティラを守るのだ」
「軍師殿、了解!」
アストロラーベが両腕を交差させて、気合いをかける。
漆黒のマントがずり落ちて、あざやかな青い羽が左右に広がる。
左右の手に握られた半透明の剣を一閃して宙を切り裂く度に、青い炎が次々と生まれ生命を持ったかのような炎は、獲物を求める3つ首ドラゴンになった。
次にスカルラーベが交差した両腕を、逆に左右に広げる。
白いマントがずり落ちると、真っ黒な羽が広がる。
背負っていた大鎌を振りかざす度に白炎が次々生まれた。
鎌を一閃する度に炎の数がふえて、やがて巨大な炎はすべてを焼き尽くそうとする3つ首白色ドラゴンになった。
サラマンダーの血の薄いマクミラが出せる炎は摂氏三千度の熱と言われる。それに対して、サラマンダーの血が濃いアストロラーベの炎が六千度、性格が母親そっくりなスカルラーベの炎は九千度から時に一万度さえ超える。
右の炎にアストロラーベが立ち上ると、油断なく剣を構える。次に、左の炎に飛び乗ったスカルラーベが鎌を構える。


     


 次の瞬間、魔神スネールとさかさまジョージが絡まった二匹蛇のウロボロスが絡まったまま、ヌーヴェルヴァーグ・タワー最上階に堕ちてきた。
 ドドーン! 
 大砲でも炸裂したような音を立てて、二匹の大蛇が床に堕ちて来る。
 二匹は、主導権を握ろうとお互いを噛み合っている。
 よくみると、二匹の姿は絡み合う前から、まるで戦場帰りの戦士のように傷だらけ、血だらけになっている。その内に黄色い瞳の大蛇が真っ青な瞳の大蛇を組み伏せた。血走った目で黄色い瞳の大蛇が、その場にいた者たちの心に直接、語りかけてきた。
(マクミラよ、久しぶりじゃ。あの闘いから数百年ぶり、精神世界での闘いから十年ぶりか)
「フン、魔神スネールともあろうものが、いろいろな意味で変わり果てたもの。いったい何があったのだ?」


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