財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第12章−7 逆襲、アストロラーベ!(再編集版)

2021-06-01 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

「ダメージを与えたつもりか?」アストロラーベにこたえた様子はない。「私もサラマンダーの血を継ぐもの。冥界の業火は、逆に力を与えてくれるわ」
「お兄様、お分かりになりませぬか?」リギスが、マクミラの声で言う。「それは本当の狙いではありません。お手元をご覧くださいませ」
 言われたアストロラーベが半透明の槍を見た。中身がゴボゴボと音を立てて沸騰していた。
「これでどこに消えても現れた瞬間、音でわかりますわ。お兄様」
「さすがだな。マクミラの姿を取る以上、それくらいはしてもらわないと。今、お前が沸騰させたのはアケロンの水だ。まだ、他の3つの川の水が残っている。水を取り替えてしまえば、もう沸騰音など役には立たないぞ」
 フン。アストロラーベが力を込めると業火が体内に引っ込んだ。同時に、槍の内部がすんだ半透明に戻った。「今度の槍の内部は火の川ピュリプレゲドンから取ってきた水。地獄の業火程度では、沸騰させることはできぬぞ」
「ククク、お兄様、楽しませてくれるわ」
 マクミラの姿のリギスが、再び高々と両腕を高く上げた。
 ファントム・パラダイス! 
 リギスの全身が再び光につつまれた次の瞬間、そこにいたのは数千の鏡に写ったスカルラーベだった。

「やれやれ、今度は将軍殿か。楽しませてくれるとは、こちらのセリフよ」
「軍師殿と闘うのは夢でござった」スカルラーベの声で、リギスがうそぶく。「いざ勝負とまいろう」
 言うが早いか、巨大な鎌が一閃された。だが、アストロラーベは造作なく半透明の槍で受け止める。
 激しいつばぜり合いが続いた。優男風のアストロラーベだが、スカルラーベに力でもひけを取らない。
 スカルラーベを思いっきり、はじき飛ばして距離を取る。アストロラーベの漆黒のマントがビリビリと裂けて、青い羽が左右にゆっくり広がった。半透明の剣が宙を切り裂いて、青い炎が次々と生み出される。生命を持ったかのように炎は、獲物を求める3つ首ドラゴンになった。
 はじき飛ばされたスカルラーベも白いマントをビリビリと切り裂いて、真っ黒な羽をゆっくり広げた。大鎌を振り回して、白炎を次々と生み出す。
 鎌を一閃する度に炎の数がふえて、やがてひとつの兄弟な炎になり、すべてを焼き尽くそうとする3つ首白色ドラゴンになった。サラマンダーの血の薄いマクミラの場合、出せる炎は摂氏三千度の熱。それに対して、サラマンダーの血が濃いアストロラーベの炎が六千度、性格が母親そっくりなスカルラーベの炎は九千度から時に一万度さえ超える。
 白色ドラゴンが、アストロラーベに襲いかかった。
 アストロラーベの青い3つ首ドラゴンが、白い3つ首ドラゴンによって燃え尽きたように見えた。だが、炎が消えた時、そこにあったのは宙に浮かぶアストロラーベの姿だった。

     


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