「スネール様!」翼竜の羽ばたきのたびに小さい竜巻が起こるドルガが、アポロノミカンを差し出す。「こちらをご覧ください」
左の鏡から右の鏡に移ろうとしていたスネールの目が、釘付けになった。
グムオーーン!
「オオ、スネール様が進化される・・・・・・」
悪鬼の形相をした蛇が、巨大化、凶悪化し始めた。次にスネールの口から出た言葉は、ドルガの想定外だった。
「マ、マ、マクミラ・・・・・・」
「マクミラだと!? やはりアポロノミカンをもってしても、ダメか・・・・・・」
「マクミラはどこじゃ? 我は、マクミラを守るために人間界で待っておった。おお、愛しいマクミラよ。そこにおったか」
マクミラが、ハスキーボイスで言い放つ。「魔人ともあろうものが、時と場所をわきまえろ。緊張感のない奴め。せっかく三つの部屋の闘いで場が盛り上がっていたのに、台無しではないか! わたしは誰も愛さず、氷結地獄に送り込んだ悪鬼以外は誰からも愛されぬ運命。いちいちお前たちの求愛を受けていたら、いくつ身体があっても足りない」
「恥を知れ」そこまで聞いていたドルガが、「爆破するもの」の本領を発揮した。死の翼の羽ばたきが強まる度、起きる竜巻も大きくなっていく。両眼が輝いた瞬間、自ら意志を持ったかのように翼から生じた竜巻がスネールを襲った。
バリ、バリ、バリ・・・
ドリルのような音を立てる竜巻が爆発すると、スネールが巻き込まれて異次元空間に飛んでいってしまう。冥界最強技の一つとおそれられた、ファイナル・フロンティアであった。跡形もなく消え失せた魔人がどこにいくかは、ドルガ自身にもわからない。だが、彼がもう二度とこの世界に戻ってくることはない。それもこれまでは・・・・・・であったが。
「魔人よ、待つんだ! このままじゃ、無駄死にじゃないか。ボクと合体だ!」言うが早いか、さかさまジョージが逆立ちのままスネールに向かって飛び出す。
ウウウッ、マクミラ・・・・・・。スネールは、つぶやき続けていた。
さかさまジョージはアポロノミカンをドルガの腕に残したまま、スネールと共に合わせ鏡の中に消えていってしまった。
アポロノミカンをマクミラへ放り投げながら、ドルガが言う。「さあ、最後の部屋へ行こう。これは返しておく。目障りな合わせ鏡など、こうしてくれる」ひときわ強い羽ばたきを見せると、ファイナル・フロンティアが発生して二枚の巨大な鏡は異次元空間へと吸い込まれていった。
ランキングに参加中です。クリックして応援よろしくお願いします!
にほんブログ村