マクミラ陣営がアストロラーベの勝利にホッとしていると、声が聞こえた。「冥界の軍師もヤキが回ったか。狙いはお前ではない。回りを見ろ!」
皆が見ると、数千枚の鏡がドロドロに溶けていた。
ケケケッケッケ!
甲高い笑い声の方を見ると、さかさまジョージが飛び出した。「打ち合わせをしたのが自分たちだけと思い込むなんてバカじゃない? マクミラねえちゃんが作らせた4つのテーマパーク最後の建物、アポロノミカンランドでは、魔術の研究もしていたのさ。さあ、ここで巨大合わせ鏡を作らせてもらうよ。アストロラーベ兄ちゃん、一回は見届け人も助っ人に入れる約束だね。今は人間時間で真夜中の12時。合わせ鏡を作れば、魔神スネールを呼び出せるのさ」
「そんな魔術は聞いたことがない」マクミラが異議を唱えた。「本来、無限に広がる虚無空間に映った鏡から鏡を渡る悪魔の尻尾を聖書ではさむと捕まえられるのであろう?」
「ケケケッケッケ、僕がそう決めたの。ここはなんでもアリの精神世界。精神力がすべて。ボクの思いこみの力を見せてやる!」
ジョージが、逆立ちしたまま、なにやら呪文をとなえ始めた。
精神世界の悪魔たちよ
我が呼びかけに答え、導くものを呼び出す手助けをするがよい
さもなくば冥界の業火が、一万年の永きにわたり汝らを苦しめるであろう
火ぶくれはふくれあがり、ヤケドからは苦しみの種が生まれるであろう
魔界の住人たちよ
我が呼びかけに答え、率いるものを呼び出す手助けをするがよい
さもなくば利口ぶった愚者が、世界を支配下に置き有頂天となるであろう
愚者の支配は、耐えがたい飢えと疫病を隅々にまではやらせるであろう
汝たちは知っているはずだ
太古の昔よりの定めによって
今宵、魔神スネールがよみがえりすべてを変える
今こそアポロにミカンの力によって
四人の魔女の元に再臨するがよい
魔神スネーール!
次の瞬間、精神世界そのものが轟音を立てて大きくゆれた。巨大な苦しむ蛇が鏡の中に現れて、のたうち回っていた。合わせ鏡は、いまや魔神を四人の魔女陣営とマクミラ陣営に会わせるための「逢わせ鏡」となっていた。
直接闘ったもの以外は、伝説に聞くだけの魔人スネールがその姿を現した。その黄色い瞳は見るものを金縛りにし、その頭にはまるで龍のような鶏冠が2本生えており、アゴの下には不気味な前垂れが垂れ下がっていた。獰猛なワニのようなキバがびっしりと生えたアゴは、耳まで裂けている。
四人の魔女たちの中で、一人残ったドルガが目を輝かせている。
アッ!
さかさまジョージが声を上げた。ドルガがアポロノミカンを奪い取ったからだった。
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