ブラジルの新大統領、ジャイール・ボルソナーロは同国にアメリカ軍の基地を建設する意向を示している。
この人物はチリの独裁者だったオーグスト・ピノチェトを信奉、つまり表面的な手法はともかく、巨大資本に奉仕するという政治経済的な立場はドナルド・トランプよりヒラリー・クリントンに近い。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領とは正反対の立場だ。軍事政権時代に拷問を行ったことで悪名高いカルロス・アルベルト・ブリリャンテ・ウストラも彼は褒め称えている。軍事政権時代に政治犯だったルセフも拷問されているが、その責任者でもあった。
ピノチェトは1973年9月11日、軍事クーデターで民主的に選ばれたサルバドール・アジェンデ政権を倒した。アメリカの巨大資本がクーデターの資金を提供していたが、政権転覆に命令は大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー。その命令でCIAの秘密工作(テロ)部門が動いたのである。
アジェンデは国民の大多数である庶民の立場から政策を推進しようとしたが、これはラテン・アメリカに利権を持つアメリカの巨大資本やその代理人である現地の支配層にとって許しがたいことだった。
選挙期間中、CIAは新聞、ラジオ、映画、パンフレット、リーフレット、ポスター、郵便物、壁へのペインティングなどを総動員してプロパガンダを展開したが、アジェンデが勝利する。
それに対してチリの支配層は生産活動を妨害、アメリカの巨大金融機関はチリへの融資をストップ、世界銀行も同国への新たな融資を止め、1972年になるとトラックの運転手がストライキを実施、商店主、工場経営者、銀行なども同調して全国的なロックアウトに発展した。
こうした揺さぶりはNSC(国家安全保障会議)の「オペレーション40」が指揮していたが、キッシンジャーは軍事クーデターを計画する。CIA長官だったリチャード・ヘルムズの下、秘密工作(テロ)部門が動いた。
この計画はCIAの内部でも秘密にされていたが、それでも計画の一端は外部に漏れてしまう。例えば、ワシントン・ポスト紙のコラムニストだったジャック・アンダーソンが1972年3月にコラムで多国籍企業のITTがチリで秘密工作を実行していると暴露したのである。フランク・チャーチ上院議員を委員長とする「多国籍企業小委員会」はこの件に関する聴聞会を実施した。
それでも工作は続き、キッシンジャーたちはチリ軍を支配するために護憲派だった陸軍総司令官を暗殺、その後任も憲法を遵守する立場だったために排除した。
アジェンデは1973年8月にオーグスト・ピノチェトを陸軍総司令官に任命する。ピノチェトも護憲派だと判断したのだが、これが致命傷になった。
クーデター後、ピノチェトはシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授の政策、つまり新自由主義を世界に先駆けて導入する。その政策を実際に実行したのがフリードマン教授やアーノルド・ハーバーガー教授の弟子たち、いわゆるシカゴ・ボーイズだ。(つづく)
アメリカとイスラエルをつなぐネットワークは強力で、両国の情報機関も深く結びついている。アメリカ大統領は政策を決定する際、アメリカの情報機関からアドバイスを受けるのだが、シリアからの地上部隊撤退ではそうしたアドバイスを聞かなかったという。
ドナルド・トランプ大統領は2016年の大統領選挙でシェルドン・アデルソンが最大のスポンサーだった。この人物はカジノ経営者でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフと親しい。つまり、トランプの後ろ盾はシオニスト(イスラエル至上主義者)。トランプ大統領は2017年12月にエルサレムをイスラエルの首都だと認めると宣言しているが、これはスポンサーの意向に沿うものだった。
もっとも、選挙戦のライバルだったヒラリー・クリントンも後ろ盾はシオニスト。彼女は投機家のジョージ・ソロスから政策面で支持を受けていたが、ソロスはロスチャイルドと結びついている。
トランプとクリントンは対立関係にあるが、その後ろ盾はいずれもシオニスト。エルサレムをイスラエルの首都だと認めるべきだとする考えは共通のものだ。
本ブログでもすでに書いたことだが、アメリカには「1995年エルサレム大使館法」という法律があり、エルサレムがイスラエルの首都だと認めた上で、1999年5月31日までにそこへ大使館を建設するべきだとしていた。
その法律は歴代大統領の判断もあって現実にならなかった。そこで2017年6月にアメリカ上院はその法律を再確認する決議を賛成90、反対0、棄権10で採択している。
トランプもこうした世界で生きてきたのだが、ここにきてイスラエル離れを起こしているように見える。アメリカではイスラエルに対するBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動を封印しようとする動きがあるが、これはBDSの影響力が強まっていることを示している。そうした反イスラエルの動きがトランプに影響しているのかもしれない。