亡き次男捧げる冒険小説です。
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〇八
馬の件では情けない姿を晒していたが、いうべきことを理路整然と言い切ってくれる、そんなハーラを心強いとナーレは思った。また、三人の気持ちの高ぶりを感じ取り、素直に代弁してくれるテーリの勇気と優しさに感謝もした。案外バランスの取れた義兄弟なんだと、途端に得意げになるナーレ。得心した笑みを浮かべるナーレを見て、ハーラもテーリも嬉しくなった。
テーブルには既に三人分の朝食とミルクが置かれていた。老夫婦の諍いとヴァッロたちとの会話に注意が向いていたためか、女給仕の想像以上の手際良さに三人は舌を巻いた。
「やっぱり朝一はこれに限る!」
グビグビとテーリがミルクを飲み干す。
「僕に合わせてミルクにしたんじゃないの?」
ナーレはあまりに豪快な飲みっぷりに驚いて、テーリに尋ねた。
「ん?僕の大好物はミルクだよ。」
ナーレのことなど気にもかけずに、ミルクのおかわりを注文する。
「それは奇遇だ。僕も朝にこれが欠かせない。」
ハーラも続けてミルクのコップを空にする。キンキンに冷やされたミルクのせいで、注がれた銀のコップはたちまちのうちに結露する。水晶の粒がミルクの美味さを引き立てた。義兄弟ともなると好みも似ているのだなぁ、とおかしな共通点を見つけたナーレはまた嬉しくなった。いい兄貴分に出会えてよかった。さっきまでと真逆の評価をしている自分もおかしかった。
【第2話 〇九に続く】
次回更新 令和7年2月9日日曜日
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義兄弟の初ミッションが決まる。
攻略すべきは、そう「あの渓谷」だ!