旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第2話その8 『ダンジョン・アタック前編』 〜《ウォーグ》の洞穴〜

2025-02-07 17:00:00 | 小説

亡き次男捧げる冒険小説です。


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〇八

 馬の件では情けない姿を晒していたが、いうべきことを理路整然と言い切ってくれる、そんなハーラを心強いとナーレは思った。また、三人の気持ちの高ぶりを感じ取り、素直に代弁してくれるテーリの勇気と優しさに感謝もした。案外バランスの取れた義兄弟なんだと、途端に得意げになるナーレ。得心した笑みを浮かべるナーレを見て、ハーラもテーリも嬉しくなった。

 テーブルには既に三人分の朝食とミルクが置かれていた。老夫婦の諍いとヴァッロたちとの会話に注意が向いていたためか、女給仕の想像以上の手際良さに三人は舌を巻いた。

 「やっぱり朝一はこれに限る!」

グビグビとテーリがミルクを飲み干す。



「僕に合わせてミルクにしたんじゃないの?」

ナーレはあまりに豪快な飲みっぷりに驚いて、テーリに尋ねた。

「ん?僕の大好物はミルクだよ。」

ナーレのことなど気にもかけずに、ミルクのおかわりを注文する。

「それは奇遇だ。僕も朝にこれが欠かせない。」

ハーラも続けてミルクのコップを空にする。キンキンに冷やされたミルクのせいで、注がれた銀のコップはたちまちのうちに結露する。水晶の粒がミルクの美味さを引き立てた。義兄弟ともなると好みも似ているのだなぁ、とおかしな共通点を見つけたナーレはまた嬉しくなった。いい兄貴分に出会えてよかった。さっきまでと真逆の評価をしている自分もおかしかった。


【第2話 〇九に続く】

次回更新 令和7年2月9日日曜日


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義兄弟の初ミッションが決まる。

攻略すべきは、そう「あの渓谷」だ!