クワババの日記

いろいろな事に興味深々

秋の詩  

2007年09月20日 | Weblog
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一つのメルヘン
       中原 中也

秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるので
ありました

陽といつても、
まるで硅石か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立てても
ゐるのでした。

さて小石の上に、
今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐて
くつきりとした影を落として
ゐるのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、
いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、
水はさらさらと、さらさらと
流れてゐるのでありました……
           
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縦書きソースはSakura先生からお借りしました