結婚してまもなくの秋、初めて手編みのセーターに挑戦するまえに、簡単なベストを編んでみた。
バーゲンで購入したその毛糸を見て、
「そら日ませやな。」
と、京都の伯母が言った。
仕入れてから日にちのたったもの、と言う意味だったのかな。
糸が弱っているって言うことよね。
まあそれでもなんとか編みあげて、着ていた。
それからあっというまに月日が過ぎ、、
着ない季節もあったりしたが、何にでもわりと合ったので、よく着たと思う。
「いい色ね」と言われたこともあり、あらそうなの?と意外だったことも覚えている。
しだいに、着ても暖かくなくなり、それなら春先、初夏でも行けるからとしばしば着用。ぞんざいに着用してきた。
そして今年のある日、ほつれが、ところどころ。1年ほど前に見つけたほつれはうまく繕って、着続けたけれど、こんどばかりは、糸自体が切れ切れになっていて、もはや全体が疲弊状態。
なんで、こんなになるまで着ていたんだろう。
毛糸を買ったときにいた叔母は昨年亡くなった。大正15年生まれだった。本人は「昭和元年生まれやんや。」と言って譲らなかった。
初めて編んだものだから、思い入れが強かったのか、使いやすいからか、よく着た。
この年の暮れに、捨てる事にした。
最初から良い状態の糸ではなかったのに、よく頑張ってくれたものだと思う。
叔母の思い出もこのベストから様々蘇る。
この次編む時のゲージのに参考に残そうかなと一瞬思いもしたが、いや、
この次は、ない。もう編まないだろう。
そういう時間か多分持てない。
さよなら。
っていう事にした。