一の谷の王宮の後ろにそびえたつ高い塔の図書館があります。そこに、政治・経済・文化のすべての書物を繙き、多くの言葉を操り、国のすべてのもとを決めていく「図書館の魔女」と呼ばれる女性がいます。
その魔女マツリカのもとへ、彼女のお世話をするためにキリヒトという少年が送られてくる、という場面から始まります。
魔女マツリカは、言葉をしゃべることができず、音は聞こえるので、相手は言葉を話して、手話でマツリカの言葉を理解するというスタイルで会話します。それでも、多くの事柄を話し聞いて、多くの本を繙いて、国のすべてのもとを決定するマツリカは、素晴らしい能力の魔女として、人々に恐れられています。
周りの人たちは、マツリカを見たこともあまりなく、彼女がまだ少女といえるほど幼いことをあまり知りません。
そんなマツリカのもとへキリヒトがやってきます。最初は、キリヒトは、図書館での仕事をしながら、マツリカの世話をするように思われていたのですが、実は、幼いころから、暗殺者として修行をしてきたのです。そして、本来はマツリカの身の護衛のために送られてきたのでした。
キリヒトは、体を無駄なく使い、マツリカの手話から始まり、指話まで使えるようになり、マツリカにとって大切な相棒になっていきます。
うら若き少年少女の、地下道の探検、市中の発見などを通して、二人はお互いをよく知り、成長していきます。
でも、これは、少年少女の恋のお話ではなく、(それもちょっとはありますが)、一の谷と北の国々の戦争が始まりそうな中、魔女マツリカの戦争をなくして、お互いの国が、どうすれば自分の国を豊かに平和にしていけるかという企みであり、奇策です。
たくさんの魅力あふれる人たちが、自分の力を発揮して、それぞれの国の平和を勝ち取ります。様々な人々の魅力、理性、愛情、知恵、力が発揮されるところは、とても読みごたえがあり、この本が終わるのが寂しいと思われるほどです。
私が一番好きな部分を少し抜き書きします。
私が死んでも、私が滅しても、私の言葉はまだ滅びない。ハルカゼが、あるいはキリンが、あるいはキリヒトが、次に「私の言葉」となり「私」となるだろう。
マツリカの言葉ですが、言葉は文化だと実感する本です。
文庫本4冊の大部ですが、どこを読んでも面白い!! なかなか出会えない素晴らしい本です。作者は、高田大介です。
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