ベリーダンサーASYA ☆ オフィシャルブログ

レバノンを拠点に、アラブ諸国を股にかけた過去を持つベリーダンサーASYA(アシア)の今と昔の奮闘日記

ある夏の夜

2012-08-02 01:25:01 | レバノン

それは2007年。

レバノンでのある夏の夜のこと。

 

2007年夏のレバノンは、国内あちらこちらでテロが起きていて、言ってみればドンパチやっている真っ最中。(犠牲になられた方もたくさんいらっしゃいます)

どっちかと言うと、ある特定の時間帯(夕方)に、ショッピングモールなどの人が集まる場所で爆破事件が起きるという状況。

そして当時 踊っていたFaraya(ファラーヤ)という避暑地(もともとスキーリゾート)のインターコンチネンタルホテルから、週に1度のオフの日には、エージェントのオフィスがある街中に戻るという生活をしていた私。

 

オフのその日。

エージェントのオフィスと同じビルにある宿泊部屋に一人戻っていた私は、たまたまオンラインだった日本の友人と久しぶりにチャットを始める。

その友人、なかなかユーモアもあって頭もキレるヤツだからか、私の近況、レバノンの状況、今後の話などで話は弾み、時はそろそろ夕暮れ時。

 

そしてそのチャットの真っ最中、なんだか近くでドンパチドンパチ音がする。

まさか、と思い耳を澄ませる私は、やっぱり近くで音がすることをその友人に伝えてみる。

すると友人、「とにかく壁際から離れた方が良いのでは?」

なるほど、さすが頭のキレるヤツ。

思わず納得、パソコンを持って言われるがままに今いるビル9階の壁際から遠ざかる。

そしてチャットはまだ続く。

 

街中だし、レバノンでの現状を考えたら、この辺りで爆破テロが起きてもおかしくない。

そんなことが頭をよぎった私は、チャットをしつつも耳をそばだてる。

・・・

するとなんだか様子が違うよう。

 

しばらく聞くことに集中してみると、そのドンパチ音、何度も何度も続いてる。

それでも悲鳴やサイレン、救急車の音は一向に聞こえずに、さらに続くドンパチ音。

 

やっぱり気になった私は、「気を付けて」という友人の言葉を背中に、様子を伺うため9階窓からおそるおそる下を見る。

目を凝らしてあちらこちらに視線を動かすが、それでも特に変わったことは、何もない。 

それでも聞こえるドンパチ音。 

 

ハッと気付き、私は視線を9階に戻す。

見晴らしの良いエージェントのビルは、そのエリアでは高いビルで、周りには少し距離を置いて同じ高さのビルが2、3あるだけ。

( ↑ エージェントのビルから見える景色。この写真からは見えないが左側にビルが2、3点在。)

 

目線を移動したその瞬間、ある光が私の目を奪う。

何とそれはちょっと離れた隣のビルの上層階から空に放たれる花火?!

 

ってオイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

しかも空にじゃなくて横に放ってんじゃんねぇか!!

 

危ないじゃあないか!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

なんなんだここの国民は!!

ということで私、また新たなレバノン洗礼を受けたある夏の夜。

これだからレバノンはやめられない!笑

 

 

下の写真は、ワケあって今短期間住んでるところから見えた今年の隅田川の花火&スカイツリ―。

秩序の国、ニッポンの花火。

絶景です!

 

 

 

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MUST TO

2012-07-04 01:51:32 | レバノン

Habibi, you must to come with me to za(the) night club.

Habibi, you must to prepare yourself to go to Oman.

Habibi, you must to watch this video.

Habibi, you must to...

 

レバノンでは(そしてその他近隣諸国でも)、フツーにこういう表現での英語会話がされている。

 

でもここまで読んでみて、気付く人は気付いたはず。

・・・must to... って。。。???

 

ここで英語の文法を説明するつもりはあんまりないのだけど、短く説明すると、must の後は、述語(動詞の原型)か、疑問文になった場合には主語とか、とにかく must と to がくっつくこと自体が実は間違い。

 

じゃあなんでこんなことに? 

となると、考えられるのが、こっちの案。

「must」 と 「have to」 は、どちらも「~しなければならない」という意味。

ということは、「must」=「have to」

だから文章の中で「must」を「have to」と置き換えることが出来るんです。

 

でもなぜだかその辺が勘違いによって「must」 と 「have to」 を置き換えるって言うより、must と have を置き換えてしまっている皆!!

だから Habibi, you must to come with me! ってなってしまう訳よ。

 

はじめは話した人数人に見られるちょっとした文法間違いかしら、って思ったのだけど、実は国中で must to 文章を使い、今では文化となっている。(←大袈裟。笑 *) 実は英語教育のが長かった私は、ずっと「それおかしいよ!!」って思っていたの。。。(←お前の日本語もおかしいよ!!ってこともありますがその辺は今は棚に上げときます)

 

それでも私、熱くなって彼らに話しかける(ってか訴えかける)時にはいつしか

Habibi, you must to listen to me!! (ハビービ、私の言っていることをちゃんと聞いてよ!!)

 

そう、これこそ巷で言う「郷に入っては郷に従え」ってやつなのです。

 

誤解のないよう言っときますが、決して批判しているわけではありません。実は私、そういうアラブの英語が大好きなのです ♥

もしかしたらフランス語を英語に直訳しちゃうとそうなっちゃうのかもしれないね。フランス語→英語でのあれ?ってのは他にも面白いのあるのでまた次回。

 

 

脚注)* もちろん皆ではありません。あくまで私が接してきた大多数の人たちの話ですが。

 

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バールベック(Baalbek)

2011-02-16 20:30:42 | レバノン

それは2009年の夏にさかのぼる。

まだその年のラマダン前、レバノンに滞在しているときに、知人を介して知り合った日本語をしゃべるレバノン人が、親切にもこう言ってくれた。

もしどこか行きたい所があれば、自分は車を持っているから、連れて行ってあげるよ、と。

なんと!それはありがたい。

長くレバノンに滞在していても、半ば住み込む、という環境の中、一度住んでしまうと中々観光地に行ったりはしなくなってしまうものなのよね。億劫になっちゃって。

てな訳で、そのアントアン(日本語をしゃべるレバノン人)にお願いして、バールベックというローマ遺跡の観光地に行ってきた。

バールベックは、ヒズボラの本拠地?を通って行く先にあるのだが。

「おー、こえー、おー、こえー」、と内心ビビりながらも行きたいから行ってしまう私。

そんな私も一人で連れて行ってもらうのは何だか申し訳ないと思い、前日、同じエージェントのアルゼンチン人ダンサー友達に一緒に行かないか聞いてみた。「もう一人の友達も誘って是非行きたい!」、と言った彼女だったのだけれど、結局当日、どうしても動かせない別の用事が入ってしまい、私はアントアンと二人でバールべックにいくことになる。

湿気も多く真夏のレバノンは、30度を超える暑さになることも普通のこと。ベイルートからおよそ80キロ北東、ベカー高原の中央に位置するバールべックは、ユネスコの世界遺産でもあり、世界でも有数のローマ神殿跡。お日様がカンカンと照る中、その日は朝から出かけてバールべックの遺跡観光を堪能した。

レバノンにはいくつか世界遺産があるのだが、平日の昼間のせいか、その日のバールべックは人もまばら。バールべック遺跡の象徴ともなっていて有名な6本の巨大な円柱は、今は大部分が損壊しているジュピター神殿を支えていた一部なのだが、目の当たりにしたそれはなんとも圧巻だった。写真でもその大きさが分かると思うのだけれど、その遺跡をバックに毎年夏には音楽や演劇などのフェスティバルが開催されるらしく、その日はちょうどその準備をしているところも見学できた。フェスティバル夜のバールべックは照明でおめかしをし、さぞ綺麗なのだろうな、と自然とため息が洩れる。そしてあちこち歩き回っては写真を撮ったり日陰で休んだり、とにもかくにも堪能という言葉が一番しっくりくる一日をバールべックで過ごした。

※中央にちょこんと立っているの、私です。ほとんど見えないでしょう。

※フェスティバルのステージ

※バールべックの一部

※フェスティバル様にステージの用意をしている様子。右上に見えるのは遺跡の一部

 

午後、観光を終えてエージェントのオフィスに戻ってきた私を見かけたスタッフが一言。

「バールべックどうだった?」

「う、うん。とっても良かったよ。」と、私。

特にオフィスの人には何も言わずに出かけたのだけど、まあダンサー友達から聞いたのだろうな、と察しがつく。

次の日、また別のスタッフが私に聞く。

「マリコ、バールべック行ったんだって~?」

「う、うん。そうだよね、知ってるよね。バールべック良いねぇ。」

もちろん私はバールべックに行ったことを隠しているわけではないんだけどさ・・・。

と思っていると次の日にはまた別の人から感想を聞かれた。

そして1週間ほど経ったある日、先週バールべックに行ったことを忘れ気味だった私に、ちょうどエレベーター乗り場ですれ違った衣装屋のおばちゃんが一言。

「ハビビー、バールべックどうだった~?」

オフィス内の人たちが私の情報を共有しているのは良いさ。いいさ、それは。そんなもんさ。

でももしかして全然関係ない近所の人たちも私の一日の行動を知ってるんかい!と疑ってしまい・・・

・・・ハッ・・・

もしかして私の一日の行動はニュースにでも載っているのか?!

そう思ってやまない日々。。。

ってかレバノン人、人の噂話ばっかりしとらんで仕事をしろ!仕事を!!!(笑)

でも憎めないのよね、大好きなのよね、私、レバノン人。

 

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ワールドカップ in レバノン

2010-10-19 22:42:21 | レバノン
何ヵ月も沈黙を保っていましたが、無事です。

アシア、生きてます。

なぜ沈黙を保っていたのか・・・という自問をしてみたりしたのだけど、りあえずなんの説明も、言い訳もしないことにしました。
ただ単に長くなるからなのですが(笑)。

ということで前置きはこのぐらいに、タイトルにも書いてる本題のお話を一丁。

記憶に新しい2010年今年のワールドカップ、遠い南アフリカの地で(日本からだと確かに遠い)日本勢は大いに活躍してくれ、私たちにもたくさんの感動を与えてくれましたよね。と、そこで今回はワールドカップをレバノンで観戦していたよ、というお話。・・・ではなく、話を4年前にさかのぼらせることになるのです。

それは4年前のワールドカップ時。
当時ちょうどレバノンで行われていたアマーニ(世界的に有名なレバノン人ベリーダンサー)主催のオリエンタルフェスティバルに参加していた私。
時はワールドカップ真っ只中。
レバノン自体は現在FIFAランキングで151位とあまり強くないので、過去にワールドカップでクオリファイされたことがないのだけれど、サッカーは世界的スポーツってわけでワールドカップともなると、レバノンも国をあげて試合を放映しているのである。

実はその年、参加したフェスティバル直後(私自身出国した数週間後)、レバノンはイスラエルからの爆撃を受ける戦争に巻き込まれるのだけど、その戦争をきっかけにレバノン・ベイルートのダウンタウンは廃墟と化してしまったのです。何年も経った今でこそ人が、そしてお店が、少しずつ戻りつつはあるけれども、以前のようにベイルートが元のにぎやかさを取り戻すには、この先どれぐらいの時間を要するのか分からない。

さて、そんな中私の体験記はちょうど日本がブラジル戦を行っていたその日のこと。

レバノン人、実はたくさんの人がブラジルに移民しているという事実もあり、約400万人いるレバノン全土の人口をはるかに超える600万~700万人という人口がレバノン系ブラジル人なのだ。となると、レバノン人は必然的にブラジルびいきとなる。

ダウンタウンベイルートを友達とぶらついていたその昼下がり、日本戦のことをすっかり忘れていた私(っておい)。
あちらこちらのオープンカフェから大画面でワールドカップの日本×ブラジル戦を観戦している人々の声援が聞こえてきて初めてジャパニーズイレブンが戦っていることに気が付く。

そしてやっぱり声援はブラジルチームに対するものが圧倒的に熱狂的なのだ。
内心熱く日本を応援しつつも少々肩身狭く振舞っていた私は、ブラジルチームがゴールに迫るたびに盛り上がるカフェを横目に、ダウンタウンを散策し続ける。

そんな中、一瞬ものすごい声援を耳にした途端、ある考えが私の脳裏をよぎる。

やっぱり格下の日本チーム、ブラジルには勝てないだろうな。。。ブラジルに点を入れられたのかな、と。
そして次の瞬間、ふと見ると向こうの方から小さな女の子が私の方へ走ってやってきた。
そして私にこう聞きよる。

「あなた、日本の人?」

「そうだけど、なんで?」
そう答える私にその女の子、思ってもみない一言を発したのである。

「たった今、日本チームが1点入れたのよ!!!」

「ええ!!!!!」

ダウンタウンベイルートでサッカー観戦をしている、ほぼ100%の人たちが明らかにブラジル応援団である環境の中、私は密かにあらゆるところに存在しているサッカー中継中のテレビ画面から顔をそむけていた。あっけにとられている私にそう発した女の子は、

「じゃあね!」

と言って走り去っていったのだ。

その後その1点で火がついたのか、ブラジルチームは合計4点を入れ日本はブラジルに4-1で逆転負けしたのだが、私はその時の女の子が忘れられない。
4年経った今日も。

ああ、なんて微笑ましい話。。。

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レバノン バス事情 2

2010-06-16 22:37:08 | レバノン

レバノンバス事情は簡単には終わりません。

ある日ベイルート中心地のハムラというエリアに行く用事があったので、またバスを使っていくことにする。

そして今回はちょっと高度な?裏事情を仕入れたので早速試してみる。

バスターミナルから乗る・・・。

結局このターミナルから乗ると、私の目的地に1本で行ける、ということが分かったため試してみることにしたのだが、これが高度かどうかはまた別の話とする。

とにかくそこに待機していたバスの運転手に聞いてみることにした。

私「このバス、ハムラまで行くよね?ハムラに行きたいんだけど。」

運転手「ダメだ。」

私「どういうこと?」

運転手「だからダメなんだって。」

私「でもこのバス、ハムラ行きだよね?」

運転手「どこの国から来たんだ?」

私「日本だけど。だからハムラに行ってよ。」

運転手「結婚してるのか?」

私「なんであんたに既婚か未婚か答えなきゃなんないのさ。ハムラに行ってもらわないと困るんだけど。」

運転手「何歳だ?」

私「だからこのバスはハムラ行きなんでしょう?番号だってハムラ行きの番号になってんじゃん。」

運転手「結婚してるのか?」

私「なんでハムラ行かないのさ?」

運転手「今は乗る人が少ないからね。」

私「!!!!!!!」

・・・ありそうな話だ。

客の需要に答えることを知らないここの国民。。。臨機応変っちゃあそうかも知れないけどあんまりだぁ。

歩き去る私に運転手まだ言ってる。

「結婚してるのか?」

私「ハラス(=enough)。」

話にならん。

その辺のタクシーをつかまえて行きましたよ、ハムラに。

 

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レバノン バス事情

2010-06-14 00:26:23 | レバノン

前回のアブダビタクシー事情の流れで、今度はレバノンのバス事情をちょいと。

日本でバス、と言うと、大型のバスで座席がきちんと配列されていて、立っている人用にはつり革がぶら下がってて、降りるときは「降りる」ボタンを押して、pasmoやスイカ(関東ではイコカで、九州でも違うのよね)などの電子マネーをかざす機械があって・・・とテクノロジーの賜物、とまで言えそうなのだけど、「システム」がないレバノン(とあるレバノン人は、これを認めたのだけど?)のバスは、それとはまるで正反対のもの。バスっていう乗り物自体もハチャメチャながら、運転手さんたちもハチャメチャ。。。

ってな訳でエキサイティングなレバニーズ バス事情のおすそ分け。

レバノンは西側が地中海に面した、細長い地形の土地。海岸側は平地なのだけど、ほんの数キロ東に向かうと、国土全体が徐々に坂になっていて、それを上がっていってシリアとの国境になる山脈につながっている地形でもある。そのレバノン、1国の幹線道路として海側を南北に突っ切る高速道路があるのだけれど、エージェントのオフィスはその幹線道路から歩いて5秒ぐらいのところに位置するため、ビルの9階にあるオフィスから国の交通状況が一目瞭然なのである。そしてその交通の中にマイクロバスらしきものが行ったり来たりしている。

道路脇に行ってみると、それらのバスには、大きなフロントガラスのどこかしらにダンボールで作ったような番号札が貼ってある。まあこの番号でどのバスがどこ行きかを判断するのだろう。

レバノンでの移動は、通常タクシーやセルビス(相乗りタクシー)を使っていたある日、私は思い立つ。

なるほど・・・バスか。と。

なぜかそれまでそんな考えがよぎりもしなかった私は、何日間もかけて情報収集した後、ある日町までバスで行ってみることにする(情報収集になんでそんなに何日もかかたかって?そりゃみんなが違うこと言うからね。。。オーアラブ)。

そして得た情報は次の通り。

幹線道路を反対側に横切り、8番だか何だかのバスに乗りおおよその行き先を告げる。すると1回1,000LLないしは1,500LL(レバニーズポンド。ちなみに1,500LL=$1。これはドルがいくら安くなっても半永久的にこのままのレートでまあ何とも分かり易い)程で目的地まで行く、という。まあそれぐらいの情報さ。

降りる場所が近づいたら運転手さんに「その辺」で、と告げて降ろしてもらうらしいのだけど、ここのバス、バス停があるわけではないので、乗る時も降りる時も何かしらの合図をするのが普通。

時にはびゅんびゅん飛ばして客なんか関係なしに突っ走る運ちゃんもいるのだが、大体運ちゃんたちは、完全歩合制なのか、バスでもタクシーでも道沿いで人を見つけるとひとまずスピードを落とす。そしてプップとクラクションを鳴らしてみたりする。要するに「君は乗客になりうる人かね?」と聞いているのである。

アラブミュージックをすっごいボリュームで流しながらどんなアクション映画を撮影中なのかな、君?って具合に運転する人もいるからたまらない(色んな意味で)。

実はトルコ人もそうなのだけど、アラブ人通になってくると、彼らのとあるしぐさに気付く。それは、彼ら/彼女らが目を閉じて、口を少しとがらせて「チッ」と音を鳴らしながら顎をちょっと上げる、というもの。それは、「ノー」と言う意味の仕草で、とあるトルコ人の女の子がそれをしたら、彼女はお母さんにみっともない、とたしなめられていたのだけど、私に言わせるとちょっとしびれる?仕草なのだ(だからたまにやってみる)。

さて後者のアクション運ちゃんの場合は別として、前者の完全歩合制運ちゃんたちは、人によっては本当に、本当にあきれるほどバスを止める。そう、それは乗客を増やすためだからなのだけど、歩行者もそれを分かっての上か、やってくるバスを見かけると目を閉じて顎を上げる。そしてそういう歩行者を目撃するたびにしびれてる。。。

それはそうと、これはそんな日常が理解できた上でバスに乗ったある日の私の物語。

道路沿いでバスを止めた私は、すでに何人か乗車しているバスに乗り込む。バスの番号を把握していたので、このバスの最終目的地は、私の目的地の手前、少し大きな乗換ターミナルだということは認識していた。バスの最終目的地が分かっている私は、最後で降りて、そこからバスを乗り換えて街中まで行けばいいやと思っていた。が、なんだかその運ちゃんが私に聞いてくる。

「どこまで行くの?」って聞いているよう。なんだか愛想は良いやつだ。

夏の暑い日のバスは、窓が全開、ドアも全開(って危ないけどあっちでは普通・汗)で運ちゃんの声がなかなか聞こえない。

だから私は席を前の方に移してこう言った。

「これ、ダウラまで行くでしょ?」と。

すると「そうだ」、と運転手。

「私はダウンタウンまで行くの。ダウラで乗り換えるから」、と説明した私に運ちゃんは、ニコニコしながらどこから来たんだ?と質問してくる。

面倒くさいな、と思いつつも無視を決め込むのも気の毒なので一声「ヤバーン(日本)」という私。

すると今度は名前を聞いてくる。何度も何度も聞いてくるのでしょうがないからこう言った。

「メアリー」って。

ヤバーンから来たメアリーなんてないでしょ、なんて思いながら。

すると運ちゃん、他にも乗客はいるのに、私にこう話しかける。1,500LLでダウンタウンまで行ってやる。だからそのまま座っとけって。このバスはダウラで終わりなはずなのに・・・。そしてダウラに着いたところで乗客は皆降りていく。

最初は親切心で言ってるのかしらと思った私もなんだかマズイんじゃ?と、以前レバノンを旅した知り合いの日本人の女性が言っていた話が脳裏をよぎる・・・。

それは彼女が乗った、いわゆる路線バスで、運転手が急にバスを止めたかと思うと、アラビア語で彼女以外は皆バスから降りるように指示した、という話。皆が文句を言いながら降りてるのを見た彼女はその時はまだ何が起きてるのだろう?と不思議に思ってたそうなのだけど、運転手が扉を閉めようとしたその瞬間、彼女は自分の身が危険にさらされるであろうことを悟り、ドアをこじ開けて脱出した、という話。

瞬時にこの話を思い出した私も間一髪、乗客全員が降りる前にお金を投げ渡すようにして我が身をバスから遠ざけた。

すると全員が降りたそのバスを運転しながら運転手、ドアを開けたまま私の歩くスピードに合わせながら「Come back! Come back Mary!」としつこく付きまとう。

降りて良かった。。。ホッと胸をなでおろし、でもいつまでも聞こえる「Come back! Come back Mary! Mary from Japan!!」と言ってる声を聞きながら笑っちゃった。

メアリーフロムジャパーン、って・・・ないよな、と。

なんでこうレバノンってどんな話にも笑いがつきまとうんだか。。。

 

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交換

2009-07-12 01:44:52 | レバノン

(実在する人物だけれど、登場人物の名前は仮名です)

今住んでいるところは、エージェントが管理するアパートで、エージェントのオフィスの真上。スタジオも隣接されているところなので、スタジオを使って練習したい時はもちろん便利だし、エージェントやオフィスの人に話や用事があればすぐにオフィスにも行ける。

前のエントリーでも事情を説明しましたが、マリの契約の件で長いこと返事を待ち続け、その間何度かオフィスにその件の進み具合を聞きに行ったある日の出来事。

いつも通り、閉まっているオフィスの玄関の扉を開けてもらうよう、チャイムを鳴らすと掃除のおばさんメルテがドアを開けてくれる。

キーフィック、インティ(レバニーズアラビア語でHow are you?)。

と、「ドアを開ける」という一仕事をこなしたメルテは、タバコを吸いながらちょっと渋い顔をし、スリッパをパタパタ言わせながらキッチン(給湯室?)に向かう。日本なら、タバコを吸いながら仕事するおばさん?ってな時点でちょっとおかしいよね、多分。

オフィスに入るとすぐ右手前方にはL字型になった背の高いカウンター。その向こうで座っている、見え隠れする頭のてっぺん。

最近ドバイから帰ってきたオフィスのスタッフのロランは、きちんとした部屋が割り当てられないからなのか(確かにオフィスに4つある部屋は全部埋まっているけど)、ここのオフィスに戻ってきてからこの微妙な席に配置されていて、カウンターの向こう側に席を陣取り、見え隠れする頭の持ち主がその彼。

Hi Loran. Kifak? (ロラン、元気?)

と言った声の主を見るために頭を上げたロラン。私を見るなり彼、Shoo Mariko, what is new about your work?(どうしたのマリコ、マリの契約の件どうなったー?)

・・・って

テメエが知ってろ!

私はマリの件が知りたくてここにやって来たのよ。私が聞くべき質問をどうしてあなたが聞いてくれるかな、私に。

私のエージェンシーは、職業柄、普通のオフィスの雰囲気とは多分違うのだろうけど、とってもリラックスした雰囲気。

誰か別の人が知ってるかもしれないと淡い期待を抱きつつ、2人目に会ったスタッフのサラに聞こうとしたその時・・・

マリの件、どうなった?とサラ。

私に聞くなー!!!

別の部屋に行くと、パソコンの画面とにらめっこしているナハラおばちゃんを見かける。おばちゃん、私を見かけるなり手招きしてパソコンの画面を覗かせる。

こういうメールが来てるのよ、ハッラ(Now)、私が印刷してエージェントに見せるわね。といいつつおばちゃん、ちょっと顔こわばってきてない?どうしたの?と尋ねてみるとおばちゃんこう言う。It's not printing habibi(プリントできないのよ、ハビービ)。

プリンターのスイッチをつけたり消したり、おばちゃんそれでもプリントできないみたい。

ハッラ(Now)、私このメールを手書きにしてエージェントに見せるわ。

・・・って、

えぇ!!!手書きにするんかい!!!!!

そう言ってその部屋を去って別の部屋に行ってしまったおばちゃん。

残された私は、プリント出来ないはずがない、と、プリンターとパソコン両方を色々いじってみる。紙の位置をちょっと変えてみたらほら、やっぱりプリントできた。

それをおばちゃんに持って行こうと思ったけれど、おばちゃん外の人の来客中。しばらく待っていると、来客中のおばちゃんの声は騒がしさを増し、太鼓を叩くような音で、マクスームのリズム(エジプシャンリズムを語る上での基礎リズム)が聞こえてくる。何事かと思っていると、おばちゃん、どこから持ってきたのか洗面器を逆さにしてそれを太鼓替わりに叩いては歌い、そして飛び跳ねながら部屋から出てくる。

どうしたの?と訊ねたら、

頼んでいたCDDVD1ヶ月経ってようやく届けられたのよ!

と、かなり興奮気味。

注文したものを持ってきたおじさん(来客)の周りを洗面器タブラ(太鼓)を叩きながら、引き続き飛び跳ね、踊り歌う。

CDDVDをデリバリーするのに1ヶ月掛かるのもどうかと思うけど、おばちゃん・・・

仕事をしろ!仕事を!!

この一連のスタッフの行動に、私、提案してみようと思う。

私がオフィスの面倒を見ているからあなた達、代わりに踊っておいでよ。

と。

 

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マニュアルチック(下)

2009-07-09 07:46:40 | レバノン

今回、プロモのこの撮影に来ていて私の目を引いた人たち、若干一組。

それは、ちょっと年がいったように見える女性歌手と、へジャブ(イスラム教の女性が頭にかぶって髪を隠すスカーフ。アルジェリアではへジャブと呼んでいたけれど、レバノンでは別名だと思う・・・)をかぶったそのお母さん。

色々な宗教や宗派が入り乱れるレバノンには、イスラム教徒とキリスト教徒、今は大体同じぐらいの人口がいる(または、最近は他国に移住してしまうキリスト教徒が多いため、今はイスラム教の人たちの人口のほうが多い)のだけれど、イスラム教徒も、敬虔な人、オープンな人と、様々。それでもへジャブをかぶる人たちは、見かけの上では敬虔な人たちに属するのだろう。

そんなお母さん、娘がステージの上で歌うような仕事に就くことをどう思っているのだろう。

私と目が合うと、ニッコリと笑うお母さん。

女性のダンサーや歌手は批判的な目や、先入観を持った見方をされることが多いレバノンや、アラブ諸国。

娘さん、偉い仕事に就いてしもうたなー。

なんて近所の人に言われているのかしら、と余計なお世話ながらに思ったりして。

ん?私の親も思われてるか?とも思ってみる。(日本は違うでしょうけれど)

とにかくその日、夕方から開始された撮影は、延々と夜まで続き、私達が終わって撮影場所のクラブを出た時には既に11時を回っていた。

よくよく考えてみれば、不思議なことがたくさんあったよな、と思い出す。

カメラマンのおじさんが、頻繁にカメラの画面に自分が吸っているタバコの煙を吹きかけている。なんじゃ?と思ったけれど、実はこれ、スモークエフェクトのつもりらしいこと。

アーティストの撮影が一曲終わり、別の衣装に着替えている間、皆手持ち無沙汰に待っている。その間別の人の撮影すればいいじゃん、なんて思ったけれど、皆ただただ待っている。なんで?と思ったけれど、人に聞かないでも自分で謎解き。

最後にカメラマンのおじさんが手にしていたメモを見てみて気づいたこと。

それは、ビデオ上でのアーティストの撮影の開始時間と終了時間をそれぞれ記しているのを見かけたとき。

続けて同じアーティストを撮影することを優先。

いや、編集とかしようよ。

能率がいいんだか悪いんだか。

この一連のカメラマンのおじさんの仕事を見て、レバノン、マニュアルチックだな、と再実感する。

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カフェカルチャー

2009-07-07 06:51:13 | レバノン

マニュアルチックの続編はちょっとその辺に置いておいて・・・

日本でも、最近水タバコのお店が流行っているようだけれど、水タバコのことを、エジプトなんかではシーシャと呼ぶ。水を通して吸うことで、不純物を取り除き、りんごやミント、イチゴに葡萄やグレープフルーツなんかの果物などの味を楽しむ水タバコ。普段はタバコなんか吸わない私も、これだと結構いける口だったりする。

シーシャでも通じるのだけれど、こちら、レバノンでの水タバコの正式名称は、ナギリ(Nargileh)とか、アルギレ(Argilleh)とかいう。

(正式名称なのに何故XXとか、XXとかって話になるのかとも思いますが)

レバノンでのアラビックカフェは、どこに行っても、男性も女性も、老いも若きも(?)、テーブルに付いては会話もそこそこに、1人に1つずつ、アルギリの長いパイプの先を手に持ち、そのタバコを吹かしながら、それぞれお好みの味のアルギレを楽しんでいる。

アルギレを吸っているお客さんの一連の動きを見ていると、カフェのあちこちで、金属の籠のような入れ物に炭を入れ持ち歩くアルギリスタッフが目を光らせている。彼らは、アルギレの炭を置き換えるという重要なポジションを持ち、お客さんが吸っているアルギレに必要な熱い炭が弱々しくなったら炭を交換する、という役目。

そして最初にアルギレを運んできてサーブする際や、アルギレの新しい炭を置き換える際に、すぐにお客さんのパイプを口にして、空気が通り易くするためか、しばらくボコボコボコボコとアルギレを鳴らす。果たしてこの一連のアクションは、吸っているのか吐いているのか分からないのだけど、私は吸っているのだと思って止まない・・・。

そのアルギリスタッフ、あっちに行ってはボコボコボコボコ。

こっちに行ってはポコポコポコポコ。

私は、アルギレを吸う時には肺まで吸い込まないと水の部分を通らないしで、きちんと音も立てられない。レバノン人がよくやっている、口だけに含んで味を楽しむアルギレの吸い方をマスターできていない私にとって、アルギレをきちんと吸うには、肺まで煙を入れて吸う事になるのだけど、そうするとこのアルギレ、34回吸い込んだだけで頭がフラフラになる。

あんなにポコポコ吸っていて、それも毎日毎晩吸っていて、彼らは、頭がフラフラになっちゃったりしないのかな。

と、いつも思うカフェでの話。

そしてレバノン、どこのカフェに行ってもWifiがあって、ラップトップを持っていけばインターネットが使えるところがほとんど。結構進んでる。

でも、一見進んでるレバノンのカフェインターネット事情、ちょっとした曰くが。

私が今住んでいるエリアの通りには、新しいカフェもいくつか建設中だったりして、レストランあり、カフェありで、隣同士、お向かい同士で4件のカフェが軒を連ねる。

先日、今一緒に住んでいるダンサーの子と、4件あるうちのカフェCにインターネットを利用しに行った時の話。

あれ、今日はネット使えないの?繋がらないよ。

とウエイターに聞いてみる。

おかしいな、そんなはずはない、とウエイター。パスワードも調べてくれるわ、PCをあっちに持っていったりこっちに持っていったり場所を変えてくれたりもする。それでもやっぱり繋がらない。

ええーーー。ネット使いに来たのにー。

と、ちょっとブーブー言ってみる。

するとウエイター、向かいのお店を指差して、じゃあカフェKの接続を使いなよ。パスワードと使い方はね・・・、と説明してくれ、繋がったら良かった良かった、と喜んでいる。

っておい!

自分家のWifiの調子がよくないからって、商売敵の別のカフェの接続を使えって、そんなに率先して言うものですかね。

でもありなんです、この国。

こんなの朝飯前。

私もあやかっているのであまり偉そうには言えませんけれど(笑)。

 

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マニュアルチック(中)

2009-07-06 09:08:33 | レバノン

2年前の撮影時の記憶に浸り・・・

気づけば10日も経ってしまっているではありませんか。

そう、それほど考えることが多かったのです。

エントリーに時間がかかった言い訳はこの辺にして、その時の記憶を遡らせる。

2年前の私はまだ初心だった(?)こともあり、初めての撮影ではドッキドキ。今までのトレーニングの成果も出し切るつもりで、これからこのビデオが私を代表すると思ったらそれはそれは力を入れたもの。

撮影用に用意したダンスは全部で3つ。ベールを使ったエントランスと、アサヤ(スティック)を使ったサイーディ(Saiidi)、そしてドラムソロ。

ベリーダンスの「技」のひとつにターキッシュドロップ(立っている状態から、体を急に仰向けに床に落とす動き。ちなみにターキッシュドロップという名前は、トルコ人のダンサー達がやっているのを見たアメリカ人が作った名称)というものがあるのだけれど、そのビデオの撮影時、私はエントランスの曲の真ん中でドラマチックなターキッシュドロップを入れていた。

ドキドキの撮影も無事終了し、私はDVDの出来上がりを心待ちに楽しみにしていたもの。

そして出来上がったそのDVDを見てあれ?

あれれ?

あれれれれ?

カメラマンのおじさん、踊っている私のクローズアップを撮ったり全体像を撮ったり色々工夫したようだけど、肝心のターキッシュドロップのところで私が急に画面から消えている。要するに私の上半身のクローズアップをしていたところ、私が急に床に落ちたのだろうな、ということが予測される。

その後見られるのは左右に動くカメラの画面、しばらくして床でフロアワーク(床に寝転んで行なわれるダンス部分)をしている私の映像。

・・・っておい!

後で聞いた話によると、おじさんタバコを吸いながらあっち向いたりこっち向いたり、人としゃべりながら撮影しているものだから、一番大事な数十秒、ステージで踊っている私から目を離していたそう。

気づいたら画面から私が消えていたからあわててカメラで私を探したらしい。どこ行った?どこ行った?と。

下だよ下・・・。

結果、何も映っていない画面が左右に動く、そして急に下に落とされるカメラの目線、ってな訳ですわ。全く・・・。

そんなおかしな話が思い出された今回の撮影。

そして話はまだまだ続くのです。

おまけ - 今回の撮影時の写真 ↓

  

~続く~

コメント (2)
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