第3回田んぼの生きもの調査全国シンポジウム 報告
BIO de BIO 小川くみこ
2008年2月2日『世界湿地の日』に東京で、第3回田んぼの生きもの調査全国シンポジウムが開催されました。
ビオ デ ビオより6名(黒田・山本・小川・黒田・小川・駒田)が参加しました。
以下は、私の主観をまじえた報告です。
400人収容のシンポジウム会場は、ほぼ満席状態の盛況で、ホワイエにも人がいっぱいでした。北海道から九州から、東北から四国から、スーツ姿の人、農家の人らしい一団、活動的な主婦らしき人たち、調査に参加している学生など、全国からさまざまな人たちが集まり、全国各地に注目と関心が拡がっていることが感じられました。
開会挨拶では、田んぼの生きもの調査プロジェクト代表の原耕造氏、パルシステム生活協同組合連合会会長の若森資朗氏、全国農業協同組合連合会代表理事専務加藤一郎氏、それから、農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長西郷正道氏、環境省自然環境局自然環境計画課長渡邉綱男氏からの熱いメッセージが寄せられました。その中でも、『これまでの政策が、生物多様性に対して配慮が足りなかったのではないか』という言葉が、中央官庁の責任ある立場の人の口から聞けたことに、新鮮な驚きを感じました。
記念講演は、農民作家の山下惣一氏でした。軽い雑談口調で話し出された氏は、生きもの調査は、手段であって、目的ではないと強調されました。同感です。そして、農に携わるものとして、作物の生産以外の仕事(畦草刈や、水路の手入れ等のお金にならない仕事の事を佐賀では、『よか仕事』というそうです。いい言葉ですね)を行う事にプライドを持つこと、そして農に携わらない人たちにも、そのような仕事の重要さを認識して欲しいと語られたのが、印象的でした。
活動報告は、1部・2部に分けて行われました。
第1部では、今回始めて発表された、田んぼの「生きもの指標」についての説明と、田んぼの生きものの今と題された発表と、実際に調査活動している現地農村からの報告がありました。
たんぼの生きもの指標は、生きもの調査を行う上での指標として今までの調査資料を総括して作られたものです。これが完成型だとして発表されたわけではなく、これから各地で『田んぼ毎』あるいは、『集落毎』の指標を作成するためのたたき台として提案されました。
田んぼの生きもの指標は、大きく2つのカテゴリーに分けられています。表1では、田んぼに生息する生物に着目した指標で、産卵場所、育成場所などと、文化や農法との関係にも触れています。表2では、仕事・技術・立地に着目した指標となっています。つまり、表1を反対側から見た、また農業の技術的側面から考えた指標となっています。わたしたちビオ デ ビオもゆくゆくは、これらの指標を元にビオ デ ビオらしい指標を作り出せればと思います。
活動現場からの報告は、福島、新潟、高知よりありました。
JA福島県青年部からは、「食育活動の一環としての田んぼの生きもの調査」」でした。以前から「田んぼで遊ぼう」というイベントをやっていたのだそうですが、その経験を生かして実施された「田んぼの生きもの調査」について、反省や今後の課題が報告されました。インストラクター不足や長時間子供たちの興味をつなぐことの難しさなど、私たちも同じ問題にぶつかるであろうことを教えられました。
佐渡トキの田んぼを守る会では、トキの野生復帰を目指して、環境保全型農業(減農薬・減化学肥料農業です)への転換の一助として生きもの調査に取り組んでいました。
やよいフィールドスタッフ(新潟県)では、冬季湛水・不耕起の圃場を調査して営農に生かす取り組みを行っていました。イトミミズ・ユスリカ等が増えると抑草作用が働くということを自分たちの目で確かめることができたのは、素晴らしいことだと思います。
四国ブロックプロジェクト(高知)では、市民連帯活動として生きもの調査を行っていました。鶴の飛来地としての環境つくりに力をいれていて、インストラクターやメッセンジャーの育成を行いたいとの報告がありました。
活動報告の2部では、稲葉光圀氏より営農のための生きもの調査の報告がありました。有機稲作を行う上で雑草(絶滅危惧種に指定されていることも多いとのことです)と呼ばれる生きものと稲とのかかわりを考える生きもの調査のお話でした。農法によって調査項目は変わるべきだということで、秋代冬水田んぼ(秋に代かきを行い冬に水を張る)での調査を中心に生物多様性を利用した防除についての報告と提案がありました。もっと詳しく、具体的に聞きたいと思う内容でした。
生きもの調査と市民連帯の報告では、市民と連帯することの意味を問い直す報告でした。生きもの調査は、市民(消費者)と田んぼ(生産者)の距離を近づけ、環境の保全・向上を、すべての人で考えていくために役立たせたいという報告でした。
私たちBIO de BIOは、市民を消費者としてだけ位置づけるのではなく、生産の一翼を担う存在として、市民の生産への参画と連携を考えていますが、まだまだ一般的には、生産者と消費者という二元論が大勢だと知りました。
最後に生物多様性農業を支援する環境直接支払い運動に参加しませんか。という提案がなされました。これまでは、商品代金に何らかの環境保全加算金が上乗せされ、その金額を消費者が支払うというのが環境税や環境支払いの考え方でしたが、今回の提案は、環境支払金は商品代金とは別に、自立した市民の自主的な判断で支払い、直接生産者に支払う方法です。その商品の産地の環境保全活動を評価しない場合は、環境支払いをしないという選択の余地が残されています。この直接支払いという方法により、一層生きもの調査等の環境を良くする活動が活発になればいいと思います。
以上がシンポジウムのあらましです。時間がなくなって田んぼの生きもの調査プロジェクト幹事の宇根豊氏のお話が詳しく聞けなかったことが残念でしたが、生きもの調査を初級編と上級編に分けたいというお話があり、上級編は今までの調査方法、初級編は数を数えるのではなく いるかいないかを調べることを行うということでこれなら小さな子供たちにもできるのではないかと思います。まず、田んぼに親しんでみる、遊んでみるというところから開始するのが長く続けていけることになるのではないかと思いました。
BIO de BIO 小川くみこ
2008年2月2日『世界湿地の日』に東京で、第3回田んぼの生きもの調査全国シンポジウムが開催されました。
ビオ デ ビオより6名(黒田・山本・小川・黒田・小川・駒田)が参加しました。
以下は、私の主観をまじえた報告です。
400人収容のシンポジウム会場は、ほぼ満席状態の盛況で、ホワイエにも人がいっぱいでした。北海道から九州から、東北から四国から、スーツ姿の人、農家の人らしい一団、活動的な主婦らしき人たち、調査に参加している学生など、全国からさまざまな人たちが集まり、全国各地に注目と関心が拡がっていることが感じられました。
開会挨拶では、田んぼの生きもの調査プロジェクト代表の原耕造氏、パルシステム生活協同組合連合会会長の若森資朗氏、全国農業協同組合連合会代表理事専務加藤一郎氏、それから、農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長西郷正道氏、環境省自然環境局自然環境計画課長渡邉綱男氏からの熱いメッセージが寄せられました。その中でも、『これまでの政策が、生物多様性に対して配慮が足りなかったのではないか』という言葉が、中央官庁の責任ある立場の人の口から聞けたことに、新鮮な驚きを感じました。
記念講演は、農民作家の山下惣一氏でした。軽い雑談口調で話し出された氏は、生きもの調査は、手段であって、目的ではないと強調されました。同感です。そして、農に携わるものとして、作物の生産以外の仕事(畦草刈や、水路の手入れ等のお金にならない仕事の事を佐賀では、『よか仕事』というそうです。いい言葉ですね)を行う事にプライドを持つこと、そして農に携わらない人たちにも、そのような仕事の重要さを認識して欲しいと語られたのが、印象的でした。
活動報告は、1部・2部に分けて行われました。
第1部では、今回始めて発表された、田んぼの「生きもの指標」についての説明と、田んぼの生きものの今と題された発表と、実際に調査活動している現地農村からの報告がありました。
たんぼの生きもの指標は、生きもの調査を行う上での指標として今までの調査資料を総括して作られたものです。これが完成型だとして発表されたわけではなく、これから各地で『田んぼ毎』あるいは、『集落毎』の指標を作成するためのたたき台として提案されました。
田んぼの生きもの指標は、大きく2つのカテゴリーに分けられています。表1では、田んぼに生息する生物に着目した指標で、産卵場所、育成場所などと、文化や農法との関係にも触れています。表2では、仕事・技術・立地に着目した指標となっています。つまり、表1を反対側から見た、また農業の技術的側面から考えた指標となっています。わたしたちビオ デ ビオもゆくゆくは、これらの指標を元にビオ デ ビオらしい指標を作り出せればと思います。
活動現場からの報告は、福島、新潟、高知よりありました。
JA福島県青年部からは、「食育活動の一環としての田んぼの生きもの調査」」でした。以前から「田んぼで遊ぼう」というイベントをやっていたのだそうですが、その経験を生かして実施された「田んぼの生きもの調査」について、反省や今後の課題が報告されました。インストラクター不足や長時間子供たちの興味をつなぐことの難しさなど、私たちも同じ問題にぶつかるであろうことを教えられました。
佐渡トキの田んぼを守る会では、トキの野生復帰を目指して、環境保全型農業(減農薬・減化学肥料農業です)への転換の一助として生きもの調査に取り組んでいました。
やよいフィールドスタッフ(新潟県)では、冬季湛水・不耕起の圃場を調査して営農に生かす取り組みを行っていました。イトミミズ・ユスリカ等が増えると抑草作用が働くということを自分たちの目で確かめることができたのは、素晴らしいことだと思います。
四国ブロックプロジェクト(高知)では、市民連帯活動として生きもの調査を行っていました。鶴の飛来地としての環境つくりに力をいれていて、インストラクターやメッセンジャーの育成を行いたいとの報告がありました。
活動報告の2部では、稲葉光圀氏より営農のための生きもの調査の報告がありました。有機稲作を行う上で雑草(絶滅危惧種に指定されていることも多いとのことです)と呼ばれる生きものと稲とのかかわりを考える生きもの調査のお話でした。農法によって調査項目は変わるべきだということで、秋代冬水田んぼ(秋に代かきを行い冬に水を張る)での調査を中心に生物多様性を利用した防除についての報告と提案がありました。もっと詳しく、具体的に聞きたいと思う内容でした。
生きもの調査と市民連帯の報告では、市民と連帯することの意味を問い直す報告でした。生きもの調査は、市民(消費者)と田んぼ(生産者)の距離を近づけ、環境の保全・向上を、すべての人で考えていくために役立たせたいという報告でした。
私たちBIO de BIOは、市民を消費者としてだけ位置づけるのではなく、生産の一翼を担う存在として、市民の生産への参画と連携を考えていますが、まだまだ一般的には、生産者と消費者という二元論が大勢だと知りました。
最後に生物多様性農業を支援する環境直接支払い運動に参加しませんか。という提案がなされました。これまでは、商品代金に何らかの環境保全加算金が上乗せされ、その金額を消費者が支払うというのが環境税や環境支払いの考え方でしたが、今回の提案は、環境支払金は商品代金とは別に、自立した市民の自主的な判断で支払い、直接生産者に支払う方法です。その商品の産地の環境保全活動を評価しない場合は、環境支払いをしないという選択の余地が残されています。この直接支払いという方法により、一層生きもの調査等の環境を良くする活動が活発になればいいと思います。
以上がシンポジウムのあらましです。時間がなくなって田んぼの生きもの調査プロジェクト幹事の宇根豊氏のお話が詳しく聞けなかったことが残念でしたが、生きもの調査を初級編と上級編に分けたいというお話があり、上級編は今までの調査方法、初級編は数を数えるのではなく いるかいないかを調べることを行うということでこれなら小さな子供たちにもできるのではないかと思います。まず、田んぼに親しんでみる、遊んでみるというところから開始するのが長く続けていけることになるのではないかと思いました。