マルクスとか資本論について学ぼうと書店に出かけ、見つけたのがこれ。作者はご存じ芥川賞作家ですが、そもそも受賞作の「僕って何」が学生運動をテーマにしてたので、元々マルクスを勉強してた人なのですね。
オビの表側は「資本主義の末路か? 大貧民の逆襲!? マルクスの《答え》を学ぶな! その《問い》を見据えよ!」で、裏側は「マルクスの逆襲は現実のものとなりつつある。あと数年もしないうちに、世界中の大部分の労働者が大貧民と化し、大貧民の逆襲が始まることになるかもしれないのだ。」というもの。
実際にこれは凄くいい本です。新書で役に立つ本はないというイメージだったのが、これは内容的に素晴らしいです。マルクス関係は何冊か読もうかと思っていたのが、実際新しい本ではあんまり見つからず、もうこの本だけでいいかなと思うくらい。
マルクスとか資本論を調べようと思ったきっかけは「チェ・ゲバラ伝」。ゲバラがマルクス思想にはまっていて、あの頃のキューバがまさにアメリカの資本家が小作農を搾取していたわけで、今の世界でも貧富の差がこのまま広がっていったら、同じような事態になるのでは?と思った次第。若年者の貧困が拡大するのなら、いっそのこと社会主義の方がいいんじゃないの?とかチラっと思って、ではなぜ社会主義国は次々と崩壊したのかとか知りたかったわけです。そういう点ではこの本はぴったりですね。
この本での主張によると、アダムスミスが言った「神の見えざる手」というのは経営者の良識があってのことであって、今のように無国籍に広がるファンドにはそれがまったくないと。マルクスが言った資本主義の破綻とは、ファンドがいくら儲けてもトリクルダウンは起こらず、際限なく格差が広がる近未来の社会ではないかと。あるいはもうその段階に来てるのかも、と。
この本のいいのは「では、どういう社会がいいのか?」というのが書いてあって、それが実現できるかどうかは別にして、やればできるかもと思うところに夢がありますね。キーポイントは農業ですが、やはり食料は自給率を上げるべきだとか思うわけです。興味のある人はご一読を。今の世の中で是非読むべき本です。