最近読んだ本第二弾
山靴の音(昭和49年3月15日4版)新編山靴の音(昭和58年4月の三版)と新・山靴の音(平成4年4月発行)の限定200部の第118番の三冊でいずれも著者:芳野満彦です。いずれも複数回読破していました。
二番目の新編山靴の空白ページに「芳野満彦、彼とはヒマラヤトレッキングの帰りにカトマンズ~東京までの機中で彼と語る幸せを持つことが出来た。特に印象深くあったのは【白いノート】をバンコクの空港で見せてくれたことであった。彼の山への思慕があふれるこのノート、以降私も白いノートにつたない絵と文を少なからずも書き続けている」と記されていました。1984.6.8記
1974年カラパタールトテッキングに参加、その時のツアーリーダーが芳野満彦氏でアルパインツアーツの会社がヒマラヤトッレキングを始めたのは1971年で3年後、ツアーそのものも未熟だし人材もいなく、会社創立者の一人である彼がツアーリーダーとはびっくりした次第です。
カトマンズ空港に着くと三浦雄一郎氏が出迎えてくれていて、芳野さんは雄ちゃんと気安く呼んでいて、一緒に写真を撮りました。三浦氏がエベレスト大滑降をしたのは1970年5月6日で、カトマンズの街を歩いていると「日本人か、三浦は素晴らしい」とよく話しかけられ鼻高々でした。
ツアー出発の朝、「山田さん、俺久し振りに雄ちゃんと会ったからカトマンズで麻雀などして過ごすから5人で行って」と今だったら考えられないことだが、自分も気安く「ハイ!良いですよ」と応えた。
ピラタスポーターという5人乗り位の軽飛行機で、シャンボチェという飛行場と言うより牧場の斜面に着陸。エベレストビューホテルはまだ建設中で、その前の空き地にテント泊まりです。ツアーは個別参加の村上、中村、保久、笹島、山田の5名と現地のサーダーとシエルパ・コック・ポーターが数人で行動です、行動中にはいろいろハプニングもあったが楽しかった。
シャンボチェシからカトマンズに戻る飛行機は天候やお祭り(パイロットが二日酔い)とかで三日遅れてカトマンズに。これが帰路のトラブルの基になります。
バンコクのホテルを出ようとするとスタッフがスーツケースを掴んで離さない。予定が遅れたので現地のエージェントからの連絡が不徹底で支払いがされてない。この時、芳野さん「山田さん、金持ってない。俺、財布をカトマンズに忘れてきたようだ」とのことで立て替えてその場をしのんだ。もちろん帰国後会社から払い込みがあった。
復路のメンバーは芳野さんと山田と笹島の二人で、残りの3名は金が残っているからカトマンズで一ケ月位遊んで、インド経由で帰るからとのことだった。
次は空港で帰路の便が予約されてなく、芳野さんが日本語と英語で猛抗議していて時間がかかりそう。この時、芳野さんが「この本でも読んでいて」と渡されたのが【白いノート】だった。結局、最終便の出入り口のスッチャーが座る折りたたみ椅子に収まって帰れることになった。
羽田に着いたが笹島と山田は自宅に帰る足が無く、芳野さんが俺の家に泊まろうとタクシーで鶯谷の実家に。「おふくろ帰ってきたよ、友達二人連れてきたから」と言って、久しぶりの日本だから新橋まで行ってくるからと待たせてあったタクシーに乗っていったきりだった。おふくろさんは満彦はいつもこんな調子だからと、白飯に味噌汁を作ってくれて久しぶりの日本食は美味しくありがたかった。
その後、キリマンジャロの誘いの連絡がきたが公私共に落ち込んでいた時期でそんな心の余裕はなかった。麻布十番街の東京映像ギャラリーで個展をするとの案内が来て3回は顔を出した。彼が在住の時に一枚の年賀状を出して語ってくれたのは、カトマンズ近郊のナガルコットの丘で超美人のシエルパニと出会った、その超美人が八千草薫だったとのことでその後友達になったと嬉々として話してくれた。
小生もとあるツアーの帰路、ナガルコットに寄ったが二匹目の泥鰌はいなかった。
水戸での個展の案内が来て出かけたときに見せてくれたのは、白ではなく【黒いノート】で内容も岩に登れなくなっている彼の心境を現したのか寂しく感じた。
2021年2月80歳でこの世を去った。この時、1974年のカラパタールトレッキングで一緒だった兵庫の保久君から電話があって「山田さん、水戸は近いから芳野さんの葬儀に代表して参列してください」と、彼も芳野さんの印象が強かったのでしょう。
中学の時、冬の八ヶ岳で遭難、友は無くなったが彼は凍傷で両足先を切断、<5文半の男>になったが山への情熱は衰えることなく、一流のクラーマーとして日本山岳会に名をとどろかせた。本の内容であるが、1冊目は処女出版で20代前半までの彼の青春を賭けた山々の記録。2冊目は青春の日の記録、徳澤の生活が主体で3冊目はその後に岳人に掲載された、まさに白い日記帳から抜粋された内容のようで一気に読むことが出来ました。
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