聖ユリアナおとめ殉教者 分娩および伝染病の守護の聖人 記念日 2月16日
ユリアナは、ニコメデニア市の裁判官エウロギオスと婚約していた。しかし、彼女は、彼がキリスト信仰を受け入れなければ結婚しないと、言い張った。そこで彼女の父は、彼女を裸にしてひどく殴らせたあげくに、その裁判官に引き渡した。裁判官は、彼女に言った。「最愛のユリアナよ、なぜあなたは結婚を拒んで、私に恥をかかせたのですか」ユリアナは答えた。「あなたもわたくしの神をあがめてくださいましたら、よろこんで結婚いたしますは。そうでなければ、けっしてわたくしを思いどおりになさることはできないでしょう」彼は言った、「最愛の人よ、そんなことをしたら、わたしは、皇帝に首をはねられてしまいます。」ユリアナは答えた、「あなたがそれほど地上の皇帝にびくびくなさるのであれば、わたくしは、天の皇帝をどんなにか恐れなくてはならないことでしょう。ですから、どんなになさっても、わたくしを籠絡することはできません」そこで裁判官は、彼女を鞭でめった打ちにし、半日のあいだ髪の毛で吊しておき、鉛を溶かして頭からぶっかけるようにと命じた。しかし、これらすべての拷苦も、彼女をすこしも傷つけることができなかった。それで、今度は、鎖で縛られ、牢に投げ込まれた。すると一人の悪魔が、光の天使の姿をして彼女の前に現れて、こう言った。「ユリアナよ、わたしは、あなたを説得して、偽神たちに犠牲をささげさせるためにつかわされた神の御使いです。というのは、これ以上鞭打たれ、悲惨な死をとげるような目にあなたを会わせないためです。」ユリアナは、これを聞くと、泣き、そして祈った。「ああ神様、わたくしを堕落させないでください。だれがわたくしにこのようなことをそそのかしているのか、お教え下さい」天から声があって、こう言った。「その者の首すじをつかまえて、何物であるのか、泥をはかせなさい」そこで、彼女は、悪魔の天使をひっつかまえて、正体をあかすようにせまった。相手は答えた。「わたしは、あなたをたぶらかすために父が寄こした悪魔です。」「あなたの父とはだれのことですか」とユリアナがたずねると、彼はこう答えた。「ベルゼブブです。彼は、ありとあらゆる悪行をさせにわたしたちを寄こすのです。わたしたちがキリスト教徒に負けると、ひどく殴りつけます。やばいことに、わたしは、いまその不運におちいってしまいました。あなたに勝てなかったためです」彼は、いろんなことを白状したついでに、こんなことも言った。悪霊たちは、ミサにあずかっている人々や、祈祷や説教の行われている場所からはできるだけ遠いところへ逃げなくてはならないのだ、と。そのあと、ユリアナは、悪魔の両手をうしろ手にしばり、地面に投げ倒して、彼女自身をしばっている鎖できびしく打ちすえた。悪魔は、「おお、ユリアナさま、女主人さま、わたしを憐れんで下さい」と悲鳴をあげた。
さて、エウロギオスは、ユリアナを牢から引きだしてくるように命じた。彼女は、縛り上げた悪魔をうしろに引き連れて牢を出ていった。悪魔は、彼女に哀願して、こう言った。「ユリアナさま、女主人さま、わたしをこんなに世間の嘲笑の的にしないでください。そうでないと、これからわたしの力はだれにも通じなくなります。キリスト教徒はたいへん慈悲深いと聞いておりますが、あなたには血も涙もないのですか」しかし、彼女は、悪魔をしっかりと引っ張り、市場を端から端までつれて歩き、最後に糞だめの中に投げ込んだ。
さて、彼女は、裁判官のまえに出頭すると、むごくもひとつの車輪にくくりつけられた。骨はくだけ、骨の髄が飛び散った。しかし、一位の天使が現れ、車輪を打ち砕き、たちまち彼女の五体を元通りに回復させた。これを見たすべての人々は、キリスト教を信仰するようになった。しかし裁判官は、その五百人の男達と百三十人の女達の首をはねさせた。そのあと、ユリアナは、鉛がいっぱい煮えたっている大鍋に入れられたが、まるで涼しい水浴びでもしているように鍋の中につかっていた。それを見た裁判官は、彼の神々が彼を助けてもくれなければ、すべての神々にこんな赤恥をかかせている小娘を罰しようともしない、と言って神々を呪った。それから、彼女の首をはねるように命令した。すると、彼女に打ち据えられた悪魔が、少年の姿をして現れて、こう叫んだ。「その娘を容赦してはいけませんよ。彼女は、あなたちの神々を侮辱し、ぼくを昨夜こっぴどく打ちのめしたんです。だから、自業自得のむくいを与えてやるのがいいんです。」ユリアナは、こんなことをほざいているのは誰だろうかと思って、ひょいと顔をあげた。悪魔は、それを見て、とんで逃げだし、こう叫んだ。「ああ、桑原桑原、どこへ逃げればいいんだ。彼女は、またぞろぼくをひっつかまえて、縛り上げようとしているみたいだ」
聖女ユリアナは首をはねられた。裁判官は三十四人の部下達と共に航海に出た。と、大嵐がおそってきて、一人残らず海におぼれた。海は、彼らの溺死体を岸に打ち上げた。すると野獣や猛禽が集まってきて、死肉をきれいに平らげた。
ユリアナは、ニコメデニア市の裁判官エウロギオスと婚約していた。しかし、彼女は、彼がキリスト信仰を受け入れなければ結婚しないと、言い張った。そこで彼女の父は、彼女を裸にしてひどく殴らせたあげくに、その裁判官に引き渡した。裁判官は、彼女に言った。「最愛のユリアナよ、なぜあなたは結婚を拒んで、私に恥をかかせたのですか」ユリアナは答えた。「あなたもわたくしの神をあがめてくださいましたら、よろこんで結婚いたしますは。そうでなければ、けっしてわたくしを思いどおりになさることはできないでしょう」彼は言った、「最愛の人よ、そんなことをしたら、わたしは、皇帝に首をはねられてしまいます。」ユリアナは答えた、「あなたがそれほど地上の皇帝にびくびくなさるのであれば、わたくしは、天の皇帝をどんなにか恐れなくてはならないことでしょう。ですから、どんなになさっても、わたくしを籠絡することはできません」そこで裁判官は、彼女を鞭でめった打ちにし、半日のあいだ髪の毛で吊しておき、鉛を溶かして頭からぶっかけるようにと命じた。しかし、これらすべての拷苦も、彼女をすこしも傷つけることができなかった。それで、今度は、鎖で縛られ、牢に投げ込まれた。すると一人の悪魔が、光の天使の姿をして彼女の前に現れて、こう言った。「ユリアナよ、わたしは、あなたを説得して、偽神たちに犠牲をささげさせるためにつかわされた神の御使いです。というのは、これ以上鞭打たれ、悲惨な死をとげるような目にあなたを会わせないためです。」ユリアナは、これを聞くと、泣き、そして祈った。「ああ神様、わたくしを堕落させないでください。だれがわたくしにこのようなことをそそのかしているのか、お教え下さい」天から声があって、こう言った。「その者の首すじをつかまえて、何物であるのか、泥をはかせなさい」そこで、彼女は、悪魔の天使をひっつかまえて、正体をあかすようにせまった。相手は答えた。「わたしは、あなたをたぶらかすために父が寄こした悪魔です。」「あなたの父とはだれのことですか」とユリアナがたずねると、彼はこう答えた。「ベルゼブブです。彼は、ありとあらゆる悪行をさせにわたしたちを寄こすのです。わたしたちがキリスト教徒に負けると、ひどく殴りつけます。やばいことに、わたしは、いまその不運におちいってしまいました。あなたに勝てなかったためです」彼は、いろんなことを白状したついでに、こんなことも言った。悪霊たちは、ミサにあずかっている人々や、祈祷や説教の行われている場所からはできるだけ遠いところへ逃げなくてはならないのだ、と。そのあと、ユリアナは、悪魔の両手をうしろ手にしばり、地面に投げ倒して、彼女自身をしばっている鎖できびしく打ちすえた。悪魔は、「おお、ユリアナさま、女主人さま、わたしを憐れんで下さい」と悲鳴をあげた。
さて、エウロギオスは、ユリアナを牢から引きだしてくるように命じた。彼女は、縛り上げた悪魔をうしろに引き連れて牢を出ていった。悪魔は、彼女に哀願して、こう言った。「ユリアナさま、女主人さま、わたしをこんなに世間の嘲笑の的にしないでください。そうでないと、これからわたしの力はだれにも通じなくなります。キリスト教徒はたいへん慈悲深いと聞いておりますが、あなたには血も涙もないのですか」しかし、彼女は、悪魔をしっかりと引っ張り、市場を端から端までつれて歩き、最後に糞だめの中に投げ込んだ。
さて、彼女は、裁判官のまえに出頭すると、むごくもひとつの車輪にくくりつけられた。骨はくだけ、骨の髄が飛び散った。しかし、一位の天使が現れ、車輪を打ち砕き、たちまち彼女の五体を元通りに回復させた。これを見たすべての人々は、キリスト教を信仰するようになった。しかし裁判官は、その五百人の男達と百三十人の女達の首をはねさせた。そのあと、ユリアナは、鉛がいっぱい煮えたっている大鍋に入れられたが、まるで涼しい水浴びでもしているように鍋の中につかっていた。それを見た裁判官は、彼の神々が彼を助けてもくれなければ、すべての神々にこんな赤恥をかかせている小娘を罰しようともしない、と言って神々を呪った。それから、彼女の首をはねるように命令した。すると、彼女に打ち据えられた悪魔が、少年の姿をして現れて、こう叫んだ。「その娘を容赦してはいけませんよ。彼女は、あなたちの神々を侮辱し、ぼくを昨夜こっぴどく打ちのめしたんです。だから、自業自得のむくいを与えてやるのがいいんです。」ユリアナは、こんなことをほざいているのは誰だろうかと思って、ひょいと顔をあげた。悪魔は、それを見て、とんで逃げだし、こう叫んだ。「ああ、桑原桑原、どこへ逃げればいいんだ。彼女は、またぞろぼくをひっつかまえて、縛り上げようとしているみたいだ」
聖女ユリアナは首をはねられた。裁判官は三十四人の部下達と共に航海に出た。と、大嵐がおそってきて、一人残らず海におぼれた。海は、彼らの溺死体を岸に打ち上げた。すると野獣や猛禽が集まってきて、死肉をきれいに平らげた。