M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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東芝と僕、そしてイタリア

2017-05-21 | エッセイ


 テレビは基本的には好きではないので、見る番組は絞られてくる。一週間に必ず見るという番組は、すべての局を合わせても5本以下だ。



 <小さな村の物語 タイトル>*

 数少ない見る方の中に、「小さな村の物語 イタリア」がある。もう何年も見続けているBS4の番組で、提供は東芝さんだ。



 <提供 東芝>*

 何故この番組が好きかというと、他の番組にはない丁寧な作りこみが感じられるからだ。すべてのTV番組中でも秀逸だ。

 これは、単なるイタリアの村の紹介ではなく、取り上げる小さな村の中に普通の村人が住んでいて、その家庭の日常にカメラが入り込んでいく。やらせでもなく、外向けでもないリアルな村人の自身の生活や、価値観、日常性の中の自然体の生活が視聴者に届く。



 <小さな村>

 日本では忘れ去られようととしている、小さな村での村人の交流、助け合い、そして、贅沢という価値観を離れて生きるとということへの優しいまなざしと、村人の哲学を感じることが出来る。これはイタリアの持つ、過去100年前までは統一国家はなく、各地が独立して自治国家・地域としてお互いの戦いも含めて、独立独歩で自給自足の生活が普通だったという過去の歴史があるからだろう。



 <牛>

 イタリアでは、初対面の人には、「どこのご出身ですか:di dove sei ?」という言葉が必ずかけられる。日本のような単一民族の農耕民族とは違って、土地、村の独立性と、特異性が彼らの誇りだからでもある。郷土愛は半端じゃない。出稼ぎに都会や外国に出かけても、必ず帰るところは自分の育った小さな村や町なのだ。

 こんな質の高い番組を作るには、質の高いロケーション・ハンティングが欠かせない。単に小さな村を映すだけの通り一遍の番組ではなく、特定の家族の持つ家族の物語にまで入り込んで行くからだ。番組コーディネーターの現地の人との信頼に支えられた番組だと思う。ナレーター、カメラワークも素晴らしくて、村と住民を上手く捉えている。村人も、よく語ってくれる。イタリア人気質もそれを助けているのだろうが、番組を作るチームのメンバーが、こうした小さな村の物語に入れ込んでいるのがよく伝わってくる。イタリアの小さな村を愛しているからだろう。



 <家族>

 話がTV番組にいってしまったが、ここで僕と、東芝とのかかわり合いを書いて置こう。

 25年以上前の話だが、僕が日本IBMの開発製造部門の情報開発・アプリケーション開発部長をやっていたころ、東芝さんの開発製造部門長たちと、親しいつながりが生まれた。

 今でこそ、アプリケーション(アプリ)という言葉が普通に使われるようになったのだが、その頃は「アプリケーション」ということを一般には通じなかった時代だった。その頃、日本IBMの製品開発・製造部門は、大和、藤沢、そして滋賀県の野洲にサイトを持っていた。(IBMのハードからの撤退で、今はもうどこも残っていない)



 <CIM>

 その藤沢で、生産技術のエンジニアと組んで、CIM(Computer Integrated Manufacturing)という、自動化を含めたアプリケーションを開発し、実際に動かしてIBMの製品を作っていた。製造業の世界でCIMという言葉が、先端技術として脚光を浴びていたころだ。藤沢のサイトにも、IBMの営業がお客さんを連れてきていたし、製造技術学会でも取りあげられ、たくさんのビジターが見え、アプリケーション・システムに関しては僕が対応していた。



 <藤沢のCIM>

 その頃、IBMと東芝さんは業務で提携していた。プリンター、そのヘッド開発、液晶パネル製造の合弁会社設立など、身内に近い関係だった。

 ある日、東芝府中工場の工場長、小島勇蔵氏が部下の5名くらいの部長たちを連れて藤沢のCIMを見学にいらした。僕がブリーフィングルームで応対した。この時、小島さんは藤沢のCIMに強い関心を示されて、その後、東芝の部長教育の一環として藤沢詣でが定着した。そして、この交流会は、東芝府中工場からPCの開発を担当していた東芝青梅工場にも伝播し、その頃の青梅工場長、岡田恒明氏とも知己を得た。

 

 <名刺>

 今日の東芝の経営者の稚拙な失敗を、大先輩たちはどう見ていらっしゃるのか知りたいが、今はIBMの開発製造も、東芝の輝くブランド名も崩壊し、連絡はつかない。府中工場の小島さんには、東芝がラグビーのトップリーグで優勝した時、お祝いのメッセージをお送りしたことも思い出す。懐かしさは変わらない。

 日本政府の成長戦略として掲げられた原子力事業の失敗を受け、東芝は、悶え苦しんでいる。今後の東芝は何を中核において存在していくのか、半導体を手放すと分らなくなる。あの栄光ある東芝がこんな体たらくでは、日本の製造業の将来は必ずしも明るくはない。

 よし、東芝が、東証一部上場が困難になっても、つぶれるようなことがあっても、なんとか「小さな村の物語、イタリア」は残してほしいと、僕は心から願っている。



 <マンマの味>

 なぜなら、日本人に欠けてきている、故郷を本当に愛する心、家族を大切にする心、兄弟や親せきが一体となって村の生活を楽しんで守り続ける心を、この番組は素晴らしい実例として日本人に示してくれるからだ。


P.S.
クレジット:テレビ画面*は、BS4 日テレの画面を写真に撮ったものです。


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