御爺さんを追いかけて

○○さんが脱走しました。
あってはいけない事ですが、意外によくある話だったりもします。

電話をとったところ、うちに出入りしている訪問リハの先生からでした。
近くの大学病院の方に向かって、○○さんが歩いています、とのこと。

慌ててサンダルのまま外に飛び出し、病院に向かって走りました。
真っ直ぐ行けばわかりやすいかもしれないけど、途中小道もいくつかあります。
どのへんまで歩いてったのかわからないので、
とりあえず行く過程の道もチェックしながら走ります。
病院前の大通り。信号付近にもおらず、病院方向に目を向けると、
人ごみの中、見慣れた後ろ姿を病院前のバス停で見つけました。

青になったので急いで走り、
バスを待つ人の中でオロオロしているところに声をかけました。
すると、「お、君は、この近くの人ですか?」と。

とりあえず、本人のペースに合わせながら一緒に施設までの道を戻りました。
途中、横断歩道で不思議そうに立ち止まったり、
一人で歩いて来ただろうに、車道と歩道の区別がつかなかったり。

歩道に落ちてたうちわを拾い上げ、扇ぎなから歩きました。
施設沿いの道路は、歩道なんてなくて、車が通るたびに立ち止まり、
その時目に止まった花壇の花や街路樹の間から差し込む陽射しを仰いでみたり。

いつも施設の中で、外に出たそうにしている○○さん。
でも、いざ外に出たらどうしたらいいかは、やはりわからない。
当たり前だけど、それが認知症であり、老いであり、
だから私達は、その方の暮らしをサポートする必要があるのです。

でも、そのサポートが、もしかして、その方の自由を縛る拘束だったとしたら?
だから、外に出たかった?

いろんなことを考えながら施設に戻り、カフェでお茶をしました。
○○さんは、何事もなかったようにお茶を飲みながら、
「ここは静かでいいところですね。」
一緒に上階の居室に戻り、他利用者さまやスタッフともとの日常に戻りました。


ここで暮らす毎日って、○○さんにとって、幸せ?不幸せ?と、
改めて考えさせられる出来事でした。
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