1/13 e.s.t.@オーチャードホール

 
 2005年の来日公演は、私にとって悲しい記憶しか残らないものだったのですが。
 2005/10/18 「mixdownなのかも」 参照

 昨年10月の新作『Tuesday Wonderland』を記念しての今回の来日公演は、半ば自分自身に対するリベンジのようなもの。こんな事でもなければ、何となく敷居の高さを感じるオーチャードホールまでなんて来れないのです。一人では辿り着けませんし。

 会場には須永さんや、ピーター・バラカンさんもいらしたという(踊談)、前回同様明らかに年齢層の高い客層で賑わっていました。まもなく開演という事でそそくさと着席。ブザーとアナウンスが流れ、開演です。

 ステージ左からピアノ、ベース、ドラム。いつも通りの変わらない編成で、新作「Tuesday Wonderland」でステージは幕をあけました。ドラムとベースが小気味よくリズムを刻み、ピアノがe.s.t.お決まりの美しいメロディーを奏でます。フロアははっと息を呑み、大きなステージ上の最小限のトリオの音に引き込まれていきました。その後はインプロ混じりのソロをメインとしたゆったりとした展開で、再びリラックス。最後は再びアグレッシヴな曲で一セット目を終え、休憩を挟み二セット目へ。先ほどとは打って変わり、最初は力強く、そしてドラマティックな展開で聴かせフロアをエキサイトさせ、最後はフェードアウトするかのように、ゆったりとしたナンバーで幕を閉じました。鳴り止まぬ拍手の後、アンコールは「Goldwrap」。軽快なリズムとエレクトロニクスを施しエフェクト処理しているのかどうかさえ正体のつかない音と共に、エスビョルンの抑揚のある美しいピアノが響き渡る。あまりの素晴らしさに、アンコールを終えてトリオが去り、照明がついた後もなお拍手は鳴り止まなかったのです。

 個人的に新作の中で群を抜いて好きな2曲が、オープニングとラストを飾ったという事で、あまりのステージの素晴らしさと相俟ってか、感極まってうっかり涙が出ました。歳をとったのか、ちょっとしたことで涙腺がゆるんでしまいます。

 ・・・というか、前回の来日公演は、個人的理由で最悪の思い出しか残っておらず、だからなおさら今回の公演は、普通に素直に演奏だけを楽しむことができる喜びを痛感できたのだと思うのです。人生の中のほんの一瞬の、いい時も悪い時も傍にあるe.s.t.の音楽。新しいジャンルと交わろうとするワクワクする心で溢れたその音楽は、クラシックでもありロックでもあり、アヴァンギャルドでエレクトリック、そしてメロディアスでムードも十分なジャズなのです。それは、たとえば同郷ヴェーセンの音楽が彼らだとすぐわかるような、e.s.t.、彼らでしか成しえないものなのです。

 とにもかくにも、素敵な音楽とパフォーマンスをどうもありがとう。


Thanks: S.Kikuchi

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